【740号】高級ブランドコングロマリット・LVMHがメンズブランドに投資する理由とは?
by courtesy of Achim Hepp
◎本日のニュース
1)見出し
LVMH Using Berluti Brand as a Steppingstone in Menswear
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2)要約
ルイヴィトンなど高級ブランドを参加に持つLVMHは、高級紳士靴メーカーのベルルーティを、メンズアパレル・アクセサリーブランドに進化させようとしている。それは、成長率の高いメンズこそ、成長鈍化から脱出するチャンスと考えているからである。
メンズブランドの成長率がレディースブランドよりも高いのは、買い物特徴の違いによる。経済危機後、男女とも支出を抑制したが、景気回復後、男性は高級ブランドに回帰。しかも、より高級な商品を好む傾向があり、高いものほど売れている。一方の女性は、低価格ブランドへのシフト後、高級ブランドと低価格ブランドをミックスして使用する傾向がある。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Now his son Antoine is targeting an underserved clientele: men, whose spending is increasing faster than that of women.
4)キーとなる英文の和訳
現在、息子のアントワンは、十分な品揃えがなかった顧客をターゲットにしている。
それは男性で、女性よりも支出を増やすスピードは速い。
5)気になる単語・表現
underserved |
形容詞 |
行政サービスが十分でない |
clientele |
名詞 |
(劇場・商店・バーなどの)顧客、常連 |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
LVMHのメンズブランドへの投資をまとめると、次のようになります。
【LVMHのメンズブランドへの投資】
[1] 小規模高級紳士靴メーカーのベルルーティ(Berluti)を、アパレル・アクセサセリーブランドに転換。来週、マディソンアベニューにニューヨーク初出店。
[2] ロロピアーナ(Loro Piana)を買収。男性向けが売上の半数を占める高級カシミアブランド。
LVMHがメンズブランドへの投資を拡大するのは、次のような理由から。
【LVMHがメンズブランドへの投資を拡大させる理由】
[内部環境]成長鈍化から脱出するため
[外部環境]男性の支出増加率が女性よりも高いから
内部環境は、現ビジネスの成長鈍化であり、この苦境から脱出するチャンスとして、メンズに注目しているのです。LVMHの2013年売上増加率予想は4.4%に過ぎず、前年より大きく失速しています。この要因は、巨大ブランドのルイヴィトンに対する消費者の飽きと、中国でのぜいたく抑制策。そこで、成長著しいメンズが注目されたわけです。
外部環境は、メンズブランドの成長を支えたものであり、それは支出旺盛な男性の買い物習性にあります。経済危機後、買物行動における男女間の性差は小さくなったと言われています。要は、女性が節約を強め、男性が支出を拡大したことで、そのギャップが埋まったのです。経済危機後から景気回復にかけての、男女の買物行動の違いをまとめると、次のようになります。
【経済危機~景気回復における男女の買物行動の違い】
[女性]景気回復後も支出を抑制させたまま。高級ブランドと低価格ブランドを合わせてコーディネート。
[男性]経済危機後はスーツの新調を延期させたものの、景気回復後は高級ブランドに回帰。より高級・高額なものを好む傾向がある。
この結果、男性の支出拡大スピードが女性よりも速くなり、LVMHはこの消費行動の違いに着目したのです。
客数・客単価からメンズブランドを考えると、そのビジネスチャンスの大きさをより理解できます。ルイヴィトンへの飽きや低価格ブランドへのシフトなど、LVMHは客数の減少に直面しています。そこでLVMHは、客数を増やそうと、メンズブランドやメンズ品の拡充に力を注ぐことになります。
しかし、メンズブランドへの投資は、客数増だけをもたらすものではありません。より高級なもの・高額なものを好む傾向があるので、客単価の引き上げという効果も期待できるのです。つまり、メンズを充実させることにより、
客数増X客単価増=売上の大幅増
になります。
しかも、男性は、女性とは異なり、目新しさよりも伝統や品質を重視する傾向があるようです。ということは、レディース品ほど新製品を導入する必要がなくなり、売れ残りリスクは大きく低下します。その結果、メンズブランドの収益性は、レディースブランドよりも高まることになります。つまり、メンズは儲かるのです。
このように、メンズブランドは、売上・利益とももたらす領域であり、力を注がないわけにはいきません。実際、LVMHのみならず、グッチを傘下に持つケリング社(Kering SA)や中國の財閥であるフォーサン・インターナショナル社(Fosun International Ltd)は、イタリアのメンズブランドやメンズ品製造企業の買収に動き、メンズブランド強化に動いています。
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《今回のヒントのまとめ》
(1) LVMHがメンズブランドに力を注ぐ理由は、内部環境と外部環境にある。
(2) 内部環境とは、LVMHの成長が鈍化していることである。巨大ブランドのルイヴィトンへの消費者の飽きや、中国のぜいたく抑制策により、売上増加率が鈍化している。そこで、成長鈍化から脱出するために、成長著しいメンズブランドに白羽の矢が立った。
(3) 外部環境とは、男性の支出増加率が女性よりも高いという点である。これをもたらしたのは、経済危機とその後の景気回復であり、節約志向を維持する女性とは違い、男性は高級ブランドに回帰し、さらにより高級なものを選好する傾向があるという。
(4) このように、メンズブランドを拡充すれば、客数のみならず客単価の増加も期待できる。さらに、男性は目新しさや伝統や品質を重んじるので、新製品の売れ残りリスクも小さくなり、収益性も高まる。
(5) メンズブランドへの投資を加速させるのは、その収益性の高さと言えるだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
以前使っていたワインストッパーが壊れたので、新調しました。
まだこの実力を実感しませんが、1週間経過しても、美味しいサンテミリオンを楽しめました。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
メンズで思い出しましたが、JR大阪三越伊勢丹のメンズは残るようですね。
よかった、よかった。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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2014/02/05 | ファッション・アパレル業界 商品戦略, 客単価, 客数
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