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【762号】ネット通販企業が紙媒体のカタログDMに力を入れる理由とは?

Photo:1966 Spiegel catalog girl's fashion-shorts, pants, dress By:genibee
Photo:1966 Spiegel catalog girl’s fashion-shorts, pants, dress By genibee

 

 

◎本日のニュース

1)見出し
Why Online Retailers Like Bonobos, Boden, Athleta Mail So Many Catalogs

 

 

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

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2)要約

スマホで何でも買えるこのご時世にも関わらず、ネット通販企業は紙媒体のカタログDMに力を入れている。その目的は、カタログで気に入った商品を見つけてもらい、サイトや実店舗に来てもらうことである。

 

カタログにも変化が起きている。ページ数や説明文が少なくなる一方で、大型化した画像を増やしている。これにより、広告というよりもファッション誌要素を高め、読まれずに捨てられる確率を低下させるとともに、ブランドストーリー全体を伝えようとしている。

 

ただし、デメリットもある。冊数・画像数増加によるコスト上昇や、事前に作成することによるトレンド固定化のリスクがある。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

Today, the catalog is bait for customers, like a store window display, and a source of inspiration, the way roaming through store aisles can be.

 

4)キーとなる英文の和訳

現在カタログは、顧客に対して実店舗のウィンドウディスプレイのような餌の役割を果たしている。

また、店舗内を歩きまわるようなインスピレーションの元にもなる。

 

5)気になる単語・表現

bait 名詞
roam 自動詞 歩きまわる

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

スマホを通じて常時情報提供ができるのに、ネット通販企業はカタログDMに力を入れているなんて、不思議以外の何ものでもありません。カタログDMとは、郵送で送られる紙のカタログ。少なくとも、紙を郵送する分だけ、サイト上で情報提供するよりも、コストは掛かるもの。それでもこのコストの高い販促方法を採用するのは、より高い収益が見込めるからに他なりません。そのカラクリをまとめると、次のようになります。

 

【紙媒体のカタログDMの収益性が高いカラクリ】

[客数]カタログDMからサイトを初めて訪問した人の注文率は高い

[客単価]カタログ掲載のモデル着用品をまとめて購入する確率が高い

[利益]制作・配送コストよりも売上の方がずっと高い

 

売上を客数と客単価に因数分解して考えます。まずは、客数について。男性用アパレルブランドのボノボ(Bonobos)では、通販サイトに初めて訪れた人の約20%が、カタログDMを読んだ後に、注文をしているようです。カタログDMには、注文を後押しする力があることがわかります。

 

客単価について、カタログDMには、そのブランド商品で全身を包んだモデルが掲載されています。そのモデル画像を見て、このスタイル全体を気に入れば、モデル着用品をまとめて注文する人が多いようです。その結果、カタログを見てサイトを訪れる人の客単価は、カタログを見ない人の約1.5倍。カタログには、購入点数を増やす効果があることがわかります。

 

ここまでは売上の話。売上を伸ばしても、それ以上にコストが掛かっては意味がありません。しかし、実際には、コスト以上の売上が見込める模様。だから、カタログDMに力を入れるネット通販企業が増えているのです。

 

【カタログDMの費用対効果】

[コスト]1冊に付き平均1ドル未満

[効果]約4ドルの売上効果

※コストには、制作費・配送費・外注費などもろもろのコストが含まれる

 

少し信じられない数字ですが、小売マーケティング企業によるもの。ただ、カタログDMには、次のような仕掛け・効果があることを考えれば、コストの4倍以上の売上を生み出すことも十分ありえます。

 

【費用対効果を高めるカタログDMの仕掛けと効果】

[仕掛け]ページ数・文章を少なくする一方で、画像を増加・大型化することで、ブランドストーリーを詳細・簡潔に伝える→注意を惹きやすく、見る時間が比較的長い

[仕掛け]顧客属性に合わせてカスタマイズ→収益性を最大化

[仕掛け]広告よりもファッション誌としても要素が強い→捨てられにくいだけでなく、回し読みも

 

まずは、現在のカタログDMの特徴について。数多くの商品を細かく掲載するのではなく、掲載商品を厳選し、着用したモデルの画像を大きく掲載。見た目は、商品カタログではなく、ファッション誌に近いものがあります。商品を売り込むというよりも、ブランドイメージを植え付けることに力を入れています。よって、1つの画像や文章しかないディスプレー広告やメール広告では伝えきれないブランド価値を、伝えることができます。また、読むというよりも見る要素が強いために、メールが8秒、アプリが5分の利用しか見込めないのに対し、カタログDMは15~20分見てもらえることに成功。ブランドとの接触時間が長引くことで、ブランドへの愛着が強まる効果が期待できます。

 

【カタログDM・メール・アプリの接触時間比較】

[カタログDM]15~20分

[メール]8秒

[アプリ]5分

※英アパレル小売・ボーデン(Boden)調べ

 

さらに、顧客属性に応じて、テーマ内容・カタログの大きさ・割引をカスタマイズ。同じ住所に宛てたカタログDMでも受け手によって内容を違えることで、カタログを見る確率・見てサイトや実店舗を訪れる確率・購入確率をより高めようとしています。

 

画像が多くなると、広告というよりもファッション誌に近くなります。その結果、読まれずに捨てられる確率が低下するだけでなく、顧客以外にも読まれる確率が高まります。記事では、ルームメートと共同する消費者がカタログDMをリビングに置くことにより、ルームメートも読むという事例が紹介されています。この結果、客数増につながります。

 

カタログDMに力を入れれば、制作費・配送費というコスト負担増というデメリットがあります。しかも、今のカタログDMは画像が多いので、制作費はさらに高くなります。さらに、事前に作成するので商品・トレンドの固定化というデメリットも生じます。売れ行きが芳しくない場合、デジタルコンテンツなら即変更できるのに対し、紙媒体のカタログDMはそのまま売れない商品を掲載しなければならない制約があります。

 

これらデメリットがあるが高い収益性が期待できるカタログDMは、「ストーリーとしての競争戦略」で言う「キラーパス」そのもの。一見マイナスに見えるからこそ、その優位性はより高くなるのです。日本でもカタログDMの利点に着目されれば、ネット通販企業による活用が始まるかもしれません。

 

Bonobos

Boden

ストーリーとしての競争戦略

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《今回のヒントのまとめ》

(1)カタログDMに力を入れるネット通販企業が増えているのは、高い収益に寄与する確率が高いからに他ならない。

(2)カタログDMを見た人の購入確率の高さは客数増に、カタログのモデル着用品をまとめて注文する人が多いことは客単価増に、コスト以上の売上が期待できることは収益性の拡大に寄与する。

(3)さらに、ページ数・文章を減らす一方で画像を増やし大型化することで、ブランドとの接触時間が長くなり、ブランドロイヤリティを高めやすくなる。

(4)また、顧客に応じたカスタマイズにより収益性が高くなり、ファッション誌としての要素が強くなることで、顧客以外も読む確率が高まり、客数増につながる。

(5)紙媒体だけにコストが掛かり、トレンド固定化のリスクが負うが、このデメリットがあるからこそ、「キラーバス」の役割を担い、競争優位性がより高まる効果が期待できる。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

三ノ宮でランチを食べる機会が多いのですが、ふと入った洋食屋さんがこちら。

ハンバーグがとてもジューシーで、つなぎを使っていないかのような美味しさでした。

チキン南蛮も、手作り(?)タルタルソースで絶品。

値段も手頃なので、また利用したいです。

キッチン餐

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

カタログDMは、日本でも増えたように感じます。

ただし、ネット通販ではなく実店舗小売、特にショッピングモールや百貨店。

それだけ効果が高いからでしょうか。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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