【772号】アメリカ人の郊外回帰を素直に喜べない理由とは?
Photo:Chicago suburbs from the air By Scorpions and Centaurs
◎本日のニュース
1)見出し
Signs of a Suburban Comeback
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2)要約
リーマン・ショック後都市部の成長が続いていたアメリカで、郊外の人口増が鮮明になっている。人口の郊外から都市部へのシフトは、景気後退とその後の景気低迷時に起こった。人口の郊外回帰は、アメリカ景気が明らかに上向きになったことの証とも言える。
ただし、全体的には、都市部の成長率は、郊外よりも高い。それは、都会に憧れる若者と小型住居を好む年金生活者が、都市部に流入しているからである。さらに、負債を背負う若者にとっては、住宅購入は経済的には難しく、若者の郊外への転出は期待できない。よって、戦後に起こった郊外移住のトレンドに戻ったとは言えない。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
After two years of solid urban growth, more Americans are moving again to suburbs and beyond.
4)キーとなる英文の和訳
2年間都市部の成長が続いた後、郊外やそれよりも遠くに移住するアメリカ人がまた増加している。
5)気になる単語・表現
solid | 形容詞 | 連続した、切れ目の無い;頑丈な;個体の |
urban | 形容詞 | 年の |
suburbs | 名詞 | 郊外 |
beyond | 副詞 | より先に |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
今回は、アメリカの人口動態のお話。人口動態は、景気動向に影響を受けるものであり、アメリカで起こっている都市部から郊外へのシフトも、景気回復が要因です。その仕組みは、以下の通り。
【景気回復と人口の郊外シフトの関係】
[1] 景気回復→消費者の購買力向上→より広い住居を求め郊外に移住
[2] 景気回復→住宅価格の上昇→都市部の住宅を高値で売却・郊外へ移住
2のパターンとして、記事では、シカゴにマンションを所有する若い夫婦の事例が紹介されていました。出産を機により広い住居を求めて郊外への引っ越しを希望しましたが、マンション価格が想定よりも低かったのでしょう。マンション価格が上昇するまで、売却を延期。マンションを賃貸に出して、シカゴ郊外のディアフィールドに引っ越しました。結局、延期した甲斐があって、マンションは14000ドル以上で売却することに成功。住宅価格の上昇により、同様の事例は多いことと思われます。
このように、景気回復が確かなものになったために、人口が再度郊外にシフトしたわけですが、第二次大戦後のような従来型の郊外移住に戻ったわけではありません。全体としては、都市部の成長率(=人口増加率)は郊外よりも依然高いからです。
この要因は、要約にも書いた通り、若者とシニア層が都市部での生活を好んでいるからです。さらに、従来では経済成長により所得増加という恩恵を受け、郊外へ移住していた若者が、学生ローンなどの負債を抱えているために、郊外への移住どころではありません。若者の経済的困窮は、従来の経済成長型郊外シフトを妨害しています。
実際、記事に示されていたグラフを見ると、都市中心部の人口増加率は2006年から一貫して上昇しています。その真逆なのが、郊外と準郊外(大都市内の郊外)。リーマン・ショックの引き金となった住宅価格の下落とともに、人口増加率は一貫して鈍化しています。それが、2011年に底打ちし、12年・13年と増加率は上昇に転じました。
ここでアメリカ統計局によるデータを紹介しておきます。
【データが示す都市部から郊外への人口シフト(12年と13年の比較)】
◯20大都市部の人口増加率:17都市で上昇→14都市で鈍化・人口減少
◯100万人以上の大都市圏51:25の地区で郊外よりも増加率が高い→18の地区だけ
◯100万人以上の大都市圏の人口増加率:1.13%→1.02%
◯郊外の人口増加率:0.95%→0.96%
◯準郊外と郊外の人口増加率:0.99%→1.04%
◯大都市中心部の人口増加率:0.91%→0.81%
数字を見てわかるのは、都市中心部と郊外・準郊外の人口増加率の差が狭まっているということ。景気後退までは、郊外・準郊外の増加率の方が大きく、一時的には都市中心部の人口は減少したほどです。その都市中心部の人口が、景気後退後に増加に転じ、今では郊外・準郊外の増加率とほぼ同じになったということは、注目に値します。だからこそ、郊外型モールが衰退し、都市型スーパーが増加しているのです。
今後、都市中心部と郊外・準郊外の人口増加率が再度乖離するかは不明ですが、経済的に苦しい若者が増加していることは、郊外・準郊外の人口増加にとってマイナスのは事実。経済成長によりより広い郊外の住宅を購入するというアメリカの黄金パターンは、消えつつあるように思えます。
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《今回のヒントのまとめ》
(1)アメリカの郊外人口増加率が上昇に転じている。この要因は、景気回復により、購買力が増加するとともに、住宅価格の上昇により、都市部の住宅を売却しやすくなったからである。
(2)ただ、全体では都市中心部の人口増加率は上昇傾向にある。この背景には、若者と年金生活者の都会志向があるが、負債により郊外の住宅を購入できない若者の増加も無視できないだろう。
(3)都市中心部と郊外・準郊外の人口増加率を比較すれば、その数字が近づいていることがわかる。郊外型モールが廃れ、都市スーパーが増えている要因と言える。
(4)若者の経済的困窮を考慮すれば、経済成長により広い郊外の住宅を購入するというアメリカ経済の黄金パターンが今後成り立ちにくくなるのではないか。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
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それだけ景況感が良好という証拠でしょうか。
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ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
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作っています。
編集後記
バブルでも起きない限り、アメリカ経済がリーマン・ショック前のような高い成長率を記録することは難しいでしょう。
逆に言えば、経済成長を高めるにはバブルしかないわけで、そのための金融緩和とも深読みすることができますね。
さぁ、テーパリング(緩和縮小)・金利上昇後は、どうなるんでしょうね?
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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