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【794号】米小売業の出店ペースが遅い理由

ウォルグリーン

 

◎本日のニュース

1)見出し
Shoppers Are Fleeing Physical Stores

 

 

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2)要約

アメリカ小売業の出店ペースが落ちている。その背景には、止まらない客数の減少がある。4月だけ前年比プラスになった以外は、2年連続毎月5%以上減少している。客数減少の要因は、消費者のネット通販利用の拡大である。

 

客数回復のために、値下げに動く企業があるが、うまく行っていない。というのも、衝動買いが減少し、スマホを使って価格を比較して、必要なものしか買わないからである。

 

出店ペースが遅くなる要因には、リース期限も関係している。2018年に期限を迎える実店舗のリース物件が大量にあるからである。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

U.S. retailers are facing a steep and persistent drop in store traffic, which is weighing on sales and prompting chains to slow store openings as shoppers make more of their purchases online.

 

4)キーとなる英文の和訳

アメリカ小売業が直面するのは、客数の急激で止まらない減少である。

その結果、売上が圧迫され、小売チェーンは出店ペースを遅くすることを余儀なくされている。

その要因として、買い物客のネット通販利用が増えていることもある。

 

5)気になる単語・表現

steep 形容詞 急な;険しい;不当に高い
persistent 形容詞 持続する;しつこい、粘り強い
traffic 名詞 往来、交通量
weigh on 自動詞句 ~を圧迫する
prompt O to V 他動詞句 ~に~するように促す

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

アメリカ小売業の出店ペースが落ちています。出店ペースが落ちていると同時に、店舗閉鎖を積極的に進める企業も増えています。小売企業が出店を抑えて閉鎖を進める要因をまとめると、次のようになります。

 

【米小売企業が出店を抑え店舗閉鎖を進める要因】

[1]   客数減少が止まらないから

[2]   買い物客が衝動買いをやめて、必要なものしか買わなくなったから

[3]   2018年期限のリース物件が多いから

 

1について、客数減少の背景には、ネット通販の拡大があります。ネット通販は、アメリカ小売業全体の6%以上を占めていますが、その成長率は過去2年間で毎四半期15%以上を記録しています。これだけネット通販市場が拡大しているということは、消費者が買い物を実店舗からネット通販に切り替えていることということです。これが、客数減少の一番の原因です。

 

2について、買物行動の変化も、実店舗出店に積極的になれない要因です。従来は、店舗内を歩きまわり、衝動買いをしていましたが、これがスマートなショッピングスタイルに変更しつつあります。スマートなショッピングスタイルとは、スマホとパソコンを使って、事前に価格を調べ、特価品だけ買うというスタイルです。この買い物方法が広げることで、集客を狙った特売が機能しなくなりました。客数が回復せず、たとえ集客に成功しても、特価品だけ買うので、収益は悪化します。ならば、儲かる店舗だけ残して、赤字店舗・収益性の低い店舗は閉鎖しようというわけです。

 

3について、これはテクニカルな要因ですが、2018年で期限が来るリース物件が700億ドル以上あるようです。これにより、今後店舗閉鎖が増えると予想されています。

 

上記要因について、企業の実態をまとめると、次のようになります。

 

【アメリカ小売企業の実態・方針】

[客数減1]ウォルグリーン社(ドラッグストア)→非薬局部門の客数は7月2.6%減少

[客数減2]CVSケアマーク社(ドラッグストア)→客数減により既存店売上高が0.4%減少(直近四半期)

[客数減3]ファミリーダラーストアーズ社(1ドルショップ)→客数減により既存店売上高が1.8%減少(直近四半期)

[買い物行動の変化2]ターゲット社(ディスカウンター)→値下げで客数回復目指すも失敗。その結果、第二四半期の収益を下方修正。ネットで注文し実店舗で受け取る時に使える、40ドルに付き10ドル値引きするクーポンを発行するが、家庭内在庫用の需要しか喚起できず、収益悪化。

[店舗閉鎖1]ステイプルズ(オフィス用品量販店)→低収益の店舗閉鎖を今後2年間で100店舗以上実施予定

[実店舗閉鎖2]シアーズ・ホールディングス社(GMS)→過去三年間で全店舗の12%を閉鎖。今年はさらに80店舗を閉鎖予定。

[実店舗閉鎖3]ラジオシャック社(家電量販店)→今年200店舗閉鎖予定

[店舗閉鎖4]大手100小売企業の店舗増加率は3%未満にまで低下。3年前は12%以上。

 

客数は減少しているものの、1月以降の全米小売売上高は、毎月前年比プラスで推移しています。この背景には、雇用環境の改善と消費者心理の向上がありますが、買い物行動の変化も見逃せません。変化後の買物行動とは、

 

一度に買いだめし、来店回数を減らす

 

というもの。実際、コストコのような倉庫型会員制小売店やTJマックスのようなアウトレット店は、店舗数はそう増やさない方針でも売上を伸ばしています。この効率的に売上を稼ぐ方法に沿う形で、低収益店舗の閉鎖に動く企業が増えてきているとも考えられます。

 

このように、ネット通販の拡大・消費者行動の変化・リース物件のテクニカル要因により、アメリカ小売企業の出店ペースが落ちているのですが、同じことは日本でも起きるのでしょうか。

 

【出店ペースの鈍化は日本でも起こるのか?】

[客数減]起こりうる←ネット通販の利用拡大、人口減少

[買物行動の変化]起こらないかも知れない←百貨店など接客型小売業の復活

[テクニカル要因]起こらない

[日本独自の要因]人手不足による出店ペースの鈍化

 

客数減については、ネット通販の利用はアメリカ同様今後も拡大すると思われます。さらに、日本独自の要因として人口減少があるので、これも客数減少の大きな要因となりえます。

 

買物行動の変化については、日本では逆のことが起こっているとも考えられます。日本では、主に時間・お金が豊富なシニア層が百貨店などの接客型小売店舗を支持しています。昨年からの百貨店売上の増加は、このためでしょう。(アベノミクス効果もありますが)アメリカとは逆に、時間を掛けてじっくり買い物するシニア層は今後増える傾向にあります。そのため、衝動買いも見込める実店舗は有望とも言えます。

 

テクニカル要因はアメリカ独自の要因なので、日本ではないと思われます。逆に、好立地の争奪戦が増える可能性の方が高いでしょうか。

 

その他日本独自の要因として、人手不足が挙げられます。人手が足りなければ、実店舗で満足なオペレーションができないため、出店の大きなハードルになります。実際、ワタミなど飲食店では人手不足を理由にした店舗閉鎖が起こっています。今後、人手不足が深刻化すると、出店ペースが落ちるかもしれません。

 

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《今回のヒントのまとめ》

(1)アメリカ小売業で出店ペースが落ちているのは、止まらない客数の減少、買物行動の変化、リース物件の大量召喚がその要因である。

(2)客数減をもたらすのは、ネット通販の拡大。これにより、実店舗の利用が減少している。

(3)買物行動の変化とは、店舗内を歩きまわって衝動買いをする行動から、事前にスマホで価格を調べ、特価品の必要なものしか買わないという行動への変化である。また、一度での買い物点数を増やし、来店頻度を減らす傾向も強まっている。

(4)小売業のリース物件のうち、2018年に期限を迎えるものが、700億ドル以上にも上る。これを機会に店舗を閉める企業が増えている。

(5)客数減は日本でも起こりうるが、百貨店などの接客重視型小売の人気を考えると、実店舗は増えるかもしれない。しかし、人手不足は出店ペース鈍化の要因となる。

 

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編集後記

日本で起こることは、小売店の都心シフトでしょうか。

人が集まりやすい地域への出店が増える一方で、郊外型店舗は減ると予想しています。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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