【817号】ゼネラル・ミルズの「エインシャント・グレインズ・チェリオス」から考えた食品の販売戦略

Mike Mozart

◎本日のニュース

1)見出し
Feeling Its Oats, Cheerios to Add ‘Ancient Grains’

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2)要約

米食品メーカーのゼネラル・ミルズ社は、来年1月にシリアルのチェリオスブランドのヘルシー版「エインシャント・グレインズ・チェリオス」を発売する。ただし、ヘルシー版と言いながら、通常版のチェリオスよりも栄養価が高いわけではない。

ゼネラル・ミルズがエインシャント・グレインズという名前の新製品を発売するのは、スーパーの買物客が、「エインシャント・グレインズ」という単語に「ヘルシー・シンプルで栄養価の高い」というイメージを持つからである。実際、この売上効果を求めて、「エインシャント・グレインズ」という名前の加工食品は、昨年比5割増となっている。

この新製品によって、下落傾向のシリアル売上のテコ入れを目指す。そのため、万人受けするように味は少し甘めにし、パッケージには含まれる穀物の詳しい説明を大きく掲載している。

◎キーセンンスとその翻訳

3）キーとなる英文

It doesn’t matter that many shoppers don’t know exactly what an ancient grain is. And it doesn’t matter that the new Cheerios aren’t more nutritious than regular Cheerios, say executives at Cheerios’ maker General Mills.

4）キーとなる英文の和訳

チェリオスの製造者であるゼネラル・ミルズの幹部は次のように述べている。

多くの買物客がエインシャント・グレインを正確にどんなものか知らないことは、重要ではない。

また、新製品のチェリオスが通常版チェリオスよりも栄養価が高くないことも、重要ではない。

5）気になる単語・表現

matter	自動詞	重要である
exactly	副詞	正確に、ちょうど、まさしく
nutritious	形容詞	栄養のある

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

シリアルと言えば、アメリカで売上低迷に悩む食品の代表でしょうか。以前にも取り上げました。

【780号】シリアル＝朝食はもう古い！米シリアルメーカーの挑戦とは？【789号】アメリカの朝食戦争最新事情

ゼネラル・ミルズ社がヘルシー版チェリオスを発売したのも、低迷するシリアル売上をテコ入れするため。シリアル売上が低迷している要因を簡単に言えば、

消費者の時短ニーズが高まっているから

となるでしょうか。外出先や車の中で食べられないシリアルは、椅子に座って食べるもの。忙しい朝には、シリアルを食べる時間は長すぎると感じられるのです。そのため、短時間でタンパク質を多く取れる高タンパクの食べ物にシフトしています。例えば、ギリシャ風ヨーグルトやファストフードのたまごサンドやプロテインバーなど。この生活習慣の変化こそが、シリアル売上低迷の犯人なのです。

そこで開発されたのが、ヘルシー版チェリオスのエインシャント・グレインズ・チェリオス。しかし、ヘルシー版と言いながら、通常版よりも栄養価が高いわけではありません。通常版の食物繊維が3グラム・糖質1グラムに対し、ヘルシー版は2グラム・5グラム。（28グラムあたり）これが売上のネックになるかと思いきや、ゼネラル・ミルズ側は全くそう考えていないようです。さらに、「エインシャント・グレインズ」の意味はわかりにくそうですが、それも重要視していません。ゼネラル・ミルズが重視しているのは、「エインシャント・グレインズ」というフレーズなのです。

というのも、「エインシャント・グレインズ」というフレーズは、「ヘルシー」「シンプル」「栄養価が高い」というイメージがあり、買物客にとってより魅力的に映るからです。実際、この好イメージを目的に「エインシャント・グレインズ」というフレーズがパッケージに掲載された加工食品は、昨年比で5割増。実際に売上増の効果があるからこそ、おおくの新製品で採用されたのでしょう。

ゼネラル・ミルズも、特定の1種類の穀物を強調するよりも、「エインシャント・グレインズ」という単語の方が、消費者への訴求力が高いと考え、「エインシャント・グレインズ・チェリオス」というネーミングを採用しました。さらに、エインシャント・グレインズとして含まれる穀物の詳しい解説を、イラスト付きで大きくパッケージに掲載しています。ネーミングと「わかりやすさ」で、ヘルシーさのイメージを高めているのです。

ただし、ヘルシーさだけで低迷する売上をテコ入れできるわけではありません。というのも、多くの消費者には、食材としてのエインシャント・グレインズに対し、健康的だが美味しくないかもしれないという不安があるからです。そこで、健康志向の消費者の反発を受けない程度に、味を甘めに調整しています。また、穀物のカムートとスペルトコムギを入れることで、軽い繊維質の食感にし、穀物っぽい味覚を下げています。これも、味の調整です。ちなみに、キノアを入れたのは、ターゲットとする消費者の知名度が高く、好きな人が多いからです。

ゼネラル・ミルズが新製品「エインシャント・グレインズ・チェリオス」に込めた工夫をまとめると、次のようになります。

【売上テコ入れのためにエインシャント・グレインズ・チェリオスに込めた工夫】

［ネーミング］ヘルシーなイメージの強い「エインシャント・グレインズ」を採用

［パッケージ］含まれるヘルシーな原材料をよりわかりやすく表現

［品質］少し甘めにして、ヘルシーさと美味しさの両方を訴求

この工夫からわかるのは、ただ「美味しい」「便利」など高品質だけでは、売れないということ。買う前の段階では、いかに高品質というイメージを高めるかが重要なのです。だからこそ、ゼネラル・ミルズは、「エインシャント・グレインズ」というヘルシーイメージの強いフレーズを採用したのです。さらに、パッケージにもわかりやすい解説を掲載することにより、そのイメージ強化に努めています。

通常セルフ販売される加工商品の場合、消費者が購入したくなるイメージを高める努力は必須かもしれません。

Cheerios

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《今回のヒントのまとめ》

ゼネラル・ミルズがヘルシー版チェリオスを発売するのは、低迷するシリアル売上をテコ入れするためである。低迷の要因は、時短ニーズの高まりで、シリアルから他の高タンパクメニューに朝食がシフトしているという生活習慣の変化である。
通常版のチェリオスよりも栄養価が高くなく、ネーミングの意味がわかりづらいにも関わらず、ヘルシー版として「エインシャント・グレインズ」というフレーズを採用したのは、ヘルシーイメージが消費者の間で高いからである。
また、エインシャント・グレインズに含まれる各穀物をパッケージで大きくわかりやすく解説することにより、ヘルシーイメージをさらに高めている。
ただし、ヘルシーさゆえに味への不安が高いため、味は甘めの設定。より万人受けする味に調整している。
購入前は実際の味がわからないため、ニーズに合うイメージを高めることは重要である。特に、セルフ販売がメインの加工食品の場合は、このイメージが売上を大きく左右することになる。

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