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【820号】米小売シアーズが虎の子の店舗売却に踏み切った理由とは?

sears

 

◎本日のニュース

1)見出し
Sears Looks to Real Estate to Boost Cash

 

 

 

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2)要約

経営再建中のシアーズ社は、712の自社所有店舗のうち200~300店舗を新設するREITに分離する案の検討に入った、と発表した。これにより、年末商戦に向けて懸念されていた資金調達が可能となるという。

 

これまでも、ランズエンドなどの事業やシアーズカナダ部門などの不動産の売却により、資金調達を行ってきた。しかし、依然キャッシュ・フローのマイナスは続いており、その手当のために今年の調達資金は22億ドルにも及ぶ。

 

これまでの資金調達の担保とされてきたのが、自社所有店舗。虎の子とも言えるその資産売却に踏み切ったのは、一年で最大の稼ぎ時である年末商戦で大勝負を掛けるためである。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

Sears Holdings Corp. on Friday said it was weighing whether to spin off up to 300 of its 712 company-owned stores into a separate entity in which Sears shareholders would be entitled to buy stakes.

 

4)キーとなる英文の和訳

シアーズ・ホールディングス社は、金曜日、自社所有店舗712店のうち最大300店舗を別法人に分離するかどうかを検討していると発表した。

この法人株式の購入権は、シアーズの現株主に付与される。

 

5)気になる単語・表現

weigh 他動詞 ~をよく考える
spin off 自動詞句 (会社)を分離新設する;~を副産物として生み出す
entity 名詞 独立したもの;実在するもの
entitle A to V 他動詞句 Aに~する資格を与える

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

シアーズ・ホールディングス社が、自社所有店舗の売却に踏み切ったのは、資金調達のためです。問題は、これまでの資金調達の担保となっていた虎の子の自社所有店舗を、なぜ売却するかということです。それは、赤字の垂れ流しが止まる気配がなく、資金不足に陥っているからに他なりません。次の数字を見れば、窮地に陥ったシアーズの実情がわかります。

 

【シアーズの業績・キャッシュ・フロー】

  • 直近四半期のEBITDA(金利・税金・償却前利益)≒フリーキャッシュフローが、2億7500万ドルのマイナス(予定)
  • 直近四半期直後の利益剰余金がマイナス64億ドル(予定)
  • 直近四半期直後の現金・借入余地合計は5億400万ドル
  • 直近四半期で6億5800万ドル、今年全体で22億ドルの資金調達

 

1からわかるのは、依然赤字の垂れ流しが続いているということ。その結果、2・3からわかるように、直近四半期で調達した資金はすでに減少しています。調達した資金が利益を産むどころか目減りしているのが、現状なのです。さらに、これまでの利益の積立である利益剰余金がマイナスということは、創業からトータルで見て赤字ということ。これでは、ビジネスというよりもチャリティーのようです。

 

利益剰余金がマイナスのなったのは、2011年から。2011年から赤字が続いているということになります。今まで事業を続けられてきたのは、優良資産の売却や借入により資金調達を行ってきたからに他なりません。借入の担保となっていたのが、自社所有物件。この売却に動くということは、虎の子に手を付けるということであり、シアーズの再建が最終段階に入ったことを示します。

 

では、今なぜその虎の子売却に踏み切ったのか。それは、一年で最大の稼ぎ時である年末商戦で仕入れを行うためです。そう、シアーズは、仕入れが順調にできないほどのキャッシュ不足に陥っているのです。赤字の続くシアーズに対し、売掛金の保険会社は、シアーズを保険対象から除外。つまり、シアーズへの売掛金が回収不能になった場合、保険で賄ってもらえなくなったのです。そこで、仕入れ業者は、シアーズの支払サイトを縮小。シアーズは十分な仕入れをできない状況であり、これを解消するために、虎の子の資産を売却すると決断したのです。現金を潤沢にすることにより、十分な仕入れを行い、今年の年末商戦で収益改善を狙っているのです。

 

赤字の垂れ流しが続くシアーズが年末商戦に大勝負を仕掛けるのは、業績に一部改善の兆しが見えるからです。既存店売上のマイナスが、小幅に縮小しています。ただし、改善が見えるのはこれだけ。シアーズの経営再建案をみると、収益改善よりも株主価値の向上に重点が置かれていることがわかります。

 

【シアーズの経営再建策】

  • ショップ・ユア・ウェイという会員制度を開始
  • ネットで注文しドライブスルーで受け取れる実験を実施
  • 選択と集中のため非主流事業の売却

 

1は顧客囲い込みのための会員制度であり、2はネット通販対策のオムニチャネル戦略。いずれも、ウォルマートなど大手小売チェーンが行っていることであり、シアーズの業績改善につながるほどの目新しい施策ではありません。そして、実際に進んでいるのが3の事業売却や不動産売却による資金調達なのです。資金調達により事業延命を図っているものの、肝心の小売業に目新しい改善策が無いというのが、シアーズの実態なのです。

 

経営再建よりも延命が優先されるのは、小売のプロではなく金融のプロがCEOだからかもしれません。現CEOのランパート氏は、元ヘッジファンド幹部。ランパート氏が経営を担ってから注目されるのは、小売ではなく不動産など資産の活用策でした。例えば、9年前のシアーズとKマートの合併も、小売での相乗効果ではなく、不動産の活用に主眼を置いたM&Aとされています。(そのため、合併により業績向上にはつながらず)

 

シアーズの大株主がランパートCEO自信やそのヘッジファンドであることを考えると、自社所有物件の売却先のREITの大株主も、ランパートCEOとそのヘッジファンドになります。しかも、これまでの資産売却の際も、売却先とされたのが、ランパートCEOとそのヘッジファンド。ランパートCEOは、シアーズの優良資産だけが欲しくて、シアーズの経営を担っているのかもしれません。

 

もし自社所有物件の売却が実行に移されれば、シアーズの担保力は大きく減退し、収益力の低い小売事業会社へと衰退するかもしれません。そして、今後資金調達が困難になれば、破産に向かうことでしょう。もし、シアーズCEOが元小売経営者ならば、資金調達で時間を稼ぎながらも、業績改善が進んでいたかもしれません。

 

Sears Still Isn’t a Store of Value

 

[シアーズホールディング] サプライヤーが出荷をストップか

 

 

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《今回のヒントのまとめ》

  • シアーズが、自社所有店舗の売却検討に入ったのは、資金調達により年末商戦で大勝負を掛けるためである。
  • この背景には、赤字の垂れ流しが続くシアーズは、売掛金保険の対象から除外され、仕入れ業者が出荷を渋っていることがある。
  • また、既存店売上のマイナス幅が小さくなり、業績が改善に向かっていることも、年末商戦に賭ける理由である。
  • ただし、依然キャッシュ・フローのマイナスは続き、資金調達をしなければ事業を続けられないのが実情である。
  • 一番の問題は、業績改善よりも資金調達による延命に、経営の力点が置かれていることではないか。小売のプロではなく金融のプロがCEOであることが、根本の問題とも言える。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

先日、友人に連れて行ったもらった御影のコーヒー専門店。

世界でここでしか飲めないのが、バターブレンドコーヒー。

コーヒーの嫌な苦味や酸味がない一方で、コクが味わえる、とても美味しいコーヒーでした。

普段ミルク無しではコーヒーを飲まない私も、ブラックでおかわりしたくなったほど。

オーナー兼マスターの開発話も、とても興味深かったです。

是非とも外国人観光客に飲んでもらいたいですね。

御影ダンケ

 

 

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この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

今回の記事は、起業と全く問題ないとも言えますが、事業再建のヒントが隠されています。

つまり、資産売却により延命しながらも、主眼は業績改善に置く必要があるのです。

シアーズは、ヘッジファンドに乗っ取られたことが、業績悪化よりも大きな不運なのかもしれません。

シアーズのように小売ブランドとしての価値が低下すると、業績改善がすこぶる難しくなるということもわかります。

日本で言えば、マクドナルド・ワタミが、ブランド価値の低下した企業でしょうか。

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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