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【821号】米ミレニアム世代の貯蓄不足は経済・ビジネスにどのような影響を及ぼすか?

 

◎本日のニュース

1)見出し

Younger Generation Faces a Savings Deficit

 

 

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2)要約

金融危機による景気後退後、35歳未満の所謂ミレニアル世代の貯蓄率がマイナスに転じている。マイナスとは、自己資本よりも負債の方が多いことを示す。

 

これはミレニアル世代の支出が多いことでもあるが、長期的に見ると経済に悪影響を及ぼし兼ねない。将来の消費が弱くなるばかりか、住宅購入やリタイアなどが難しくなるからである。また、将来資産を形成しにくくなり、富の不均衡が定着しかねない。

 

ミレニアル世代の貯蓄率の低下は、弱い雇用環境を反映している。つまり、他の世代よりも失業率が高く、高い給与を得にくくしている。さらに、友人との交際や旅行など現在の楽しみを優先していることにより、貯蓄に回す金額が低下している。また、資産運用の知識の少なさも、貯蓄率低下の要因の一つである。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

After a flirtation with thrift after the recession, young Americans have stopped saving.

 

4)キーとなる英文の和訳

景気後退後一時的に節約を試みたものの、アメリカ人の若者は、また貯蓄しなくなった。

 

5)気になる単語・表現

flirtation 名詞 一時的興味
thrift 名詞 (良い意味で)質素、節約

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

アメリカ人の若者、特に35歳未満のミレニアル世代の貯蓄率が大きく低下しているようです。記事には、景気後退前からのグラフがあり、45~54歳、35~44歳、35歳未満が比較されています。その共通点をまとめると、次のようになります。

 

【各世代の貯蓄率の変動における共通点】

  • 景気後退前はマイナス→ローン依存
  • 景気後退後~2011年はプラス→節約志向が高い

 

景気後退前の不動産バブル時は、ローンに依存する形で消費を拡大していたことがわかります。それが、景気後退により一変。ローン返済とともに、貯蓄を拡大。

 

2012年からミレニアル世代の貯蓄率がマイナスに転じたのですが、それ以前からも貯蓄率が低下していることがわかります。一方の45~54歳・35~44歳の世代は、波はあるものの一定のレンジ内で貯蓄率を維持しています。つまり、ミレニアル世代は、貯蓄を切り崩し、ローンを増やす形で消費を拡大していたのに対し、それ以外の世代は増加した収入で消費を拡大していたのです。改めて2014年の貯蓄率をまとめると、次のようになります。

 

【2014年の各世代の貯蓄率】

[55歳以上]13%

[45~54歳]5.7%

[35~44歳]2.6%

[35歳未満]-1.8%

 

ミレニアル世代の貯蓄率がマイナスに転じた要因は、次の通り。

 

【ミレニアル世代の貯蓄率がマイナスに転じた要因】

  • 雇用環境の改善が比較的緩慢だから
  • 貯蓄・投資など資産運用の方法を知らないから
  • 友人との交際や旅行など将来よりも現在の楽しみを重視しているから→貯蓄よりも消費
  • 教育ローンの負担が重いから

 

貯蓄率がマイナスとは、貯蓄を減らすどころか負債を増やしている状況です。その最大の要因は、1の雇用環境です。全体の失業率が6%未満まで改善したのに対し、25~34歳の失業率は6.2%、20~24歳はなんと10.5%という高いまま。これでは、ミレニアル世代の雇用環境は改善したとは言えません。そのため、収入もさほど伸びないために、貯蓄を減らし、ローンに依存せざるを得ないのです。

 

ローンへの依存を強めた結果、若者世代の金融資産は収入以上に減少。ジェネレーションXの世代の1995年当時の数字と比べると、ミレニアル世代の金融資産がいかに減少したかがよくわかります。

 

【収入・金融資産の比較】

[収入]物価調整後、ジェネレーションXはミレニアル世代よりも9%多かった

[金融資産]ミレニアル世代の中央値(10,400ドル)は、ジェネレーションX(18,200ドル)よりも42%減少

※現在のミレニアル世代と95年当時のジェネレーションXの世代との比較

 

2は知識の問題。一つ上のジェネレーションXの世代が同年代の時と比べて、預金証書や株式・年金口座など金融資産を持っている人は少ないようです。唯一、ジェネレーションXよりも多いのは、決済用口座。これは、支払いのための口座であり、貯蓄よりも消費を重視していることを物語っています。知識不足のために、数多い投資商品を理解できずに、結局使ってしまうようになるのです。

 

3は、ミレニアル世代の嗜好の問題。現在の楽しみを重視するのは、雇用が依然弱く、将来に希望が持てないかもしれません。また、友人との交際が、SNSなど費用の掛かる手段に移行していることも、貯蓄よりも直近の消費を重視する要因でしょう。友人との関係をより重視し、繋がりたい欲求が強いことの表れかもしれません。

 

4は、ミレニアル世代特有の問題であり、これが最大の違いかもしれません。95年のジェネレーションXが6,100ドルだったのに対し、ミレニアル世代は17,200ドルに大きく増加。この巨額のローンの返済のより、貯蓄する余裕がないのが本音かもしれません。さらに、教育ローンのみならず、カードローンや自動車ローンなどその他ローンへの依存も高まっています。

 

ミレニアル世代の貯蓄率のマイナス転換は、将来に大きな悪影響を及ぼしかねません。

 

【ミレニアル世代の貯蓄率が及ぼす長期的な悪影響】

[1]将来の消費にマイナス

[2]リーマン・ショックなどの経済のショックに耐え切れず、景気後退の影響が大きくなる恐れがある

[3]富の不均衡が定着・拡大する恐れがある

 

1について、貯蓄額が少なければ、将来の消費が弱くなりかねません。特に、年金口座での積立が不足すれば、リタイア時期が遅くなり、今のベビーブーマー世代のような旺盛な消費は期待できないことになります。

 

2について、蓄えが少なければ、経済のショックに耐えられません。例えば、リーマン・ショックと同じ規模の景気後退が起こった場合、レイオフの風が吹き荒れ、失業率が跳ね上げる恐れがあります。その際、頼りになるのが貯蓄です。それが少ないということは、失業がイコール破産に結びつきかねません。経済のショックに対する消費の忍耐力が低下するということです。

 

3について、若者の貯蓄率低下は、資産運用が難しくなることにより、将来の富の蓄積を難しくします。一方で、現在の富裕層は、資産運用で資産を増幅するので、富の不均衡がより拡大します。個人消費全体で考えた場合、資産が一極に集中することにより、消費への資産効果は低くなります。(例えば、100万ドルの資産を持つ人は、10万ドルの資産を持つ人の10倍消費するわけではないため。)

 

この将来に対する悪影響は、もちろん企業も受けることになります。それは、若者をターゲットにしている企業が悪影響を受けるに留まりません。今は消費旺盛なベビーブーマー世代をターゲットにしていても、いずれミレニアル世代がそのターゲット層に入ってくることになります。貯蓄の少ないミレニアル世代相手では、ベビーブーマー世代と同じほど売れることは期待しにくくなります。貯蓄が少なく消費金額自体少なくなるので、単価を下げて購入ハードルを引き下げる必要があります。単価を下げれば、客数が増えない限り、売上を伸ばすことはできません。低成長に陥ることが、今から予想できます。

 

ミレニアル世代は今消費してくれるので、貯蓄率の低下は、現在の個人消費への影響が顕在化していません。しかし、このまま貯蓄率がマイナスまたは低いままならば、将来の消費にボディーブローのように効いてくることでしょう。ローレンス・サマーズ氏の言う低金利・低成長とは、ミレニアル世代の貯蓄率が関係しているとも考えられます。

 

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《今回のヒントのまとめ》

  • ミレニアル世代の貯蓄率がマイナスに転じているのは、雇用環境の緩慢な改善、資産運用の知識不足、現在の楽しみ優先、教育ローンの負担増のためである。
  • この結果、将来の個人消費は悪影響を受ける恐れがある。将来の消費がマイナスになるだけではなく、経済のショックへの耐久性の低下、富の不均衡の定着が起こるからである。これは、個人消費にマイナスに働くことになる。
  • ビジネスへの影響も大きいだろう。単に若者ターゲットの事業のみならず、現在ベビーブーマー世代をターゲットにしていても、いずれミレニアル世代がターゲット層に入ってくることになる。そうなれば、単価引き下げを余儀なくされ、売上が伸びにくくなる。

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風味はマイルドなので、芋の香りが強いのを好きな人には、少し物足りないかもしれません。

個人的には、より芋の香りの強いくろが好きですね。

黒伊佐錦

くろ

 

 

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WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

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編集後記

最近、メルマガ作成に少し時間が掛かり過ぎています。

ミスタイプが増えたこともありますが、集中力が低下していることが大きい。

というわけで、今日はここまで。

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

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