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【830号】美術館のビッグデータ活用、その目的と課題とは?

guggenheim museum

 

 

◎本日のニュース

1)見出し
When the Art Is Watching You

 

 

 

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2)要約

顧客の消費行動を追跡することで売上を伸ばしてきた小売企業を真似て、ビッグデータを活用する美術館が増えている。収集したデータを元に、展示デザインからスポンサー獲得・ギフトショップのマーケティングまであらゆる決定を行う。

 

美術館が重視するのは、来場者の館内行動。どの作品をじっくり見て、逆にどの作品を素通りしたかを把握することで、展示作品の人気度がわかる。さらに、ロイヤルティプログラムや、wifiなど無料サービスの提供を通じて、来場者の属性やメールアドレスを把握することで、属性に応じた個別の情報提供や宣伝が可能となる。

 

美術館のビッグデータ活用に対しては、課題もある。営利企業のやり方を非営利の芸術の世界に持ち込むことの批判や、個人情報を収集される来館者の反発への懸念などである。また、新規性や芸術的重要性よりも人気を優先することを批判する声もある。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

Across the country, museums are mining increasingly detailed layers of information about their guests, employing some of the same strategies that companies like Macy’s, Netflix and Wal-Mart have used in recent years to boost sales by tracking customer behavior.

 

4)キーとなる英文の和訳

全国的に、来館者の詳細な情報を解析する美術館が増えている。

その際活用するのが、メイシーズやネットフリックス・ウォルマートなどの企業が使ったものと同じ戦略の一部である。

この戦略を採用したこれらの企業は、近年、顧客行動を追跡することで売上を伸ばしてきた。

 

5)気になる単語・表現

mine 他動詞 ~を掘る;(鉱石・石炭)を採掘する
layer 名詞 層;レベル
strategy 名詞 方略;計画、方針;戦術、戦略
boost 他動詞 ~を高める;(景気など)を回復する;(生産など)を増加する
track 他動詞 ~の跡を追う;~を探知する;~を追跡する

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

今回取り上げるのは、美術館のビッグデータ活用。小売業で売上増に寄与したビッグデータを活用する美術館が、アメリカ全土で増えているようです。

 

美術館がビッグデータを活用する目的は、次の3つ。

 

【美術館のビッグデータ活用の目的】

  • リピート利用の促進→入場料収入の増加
  • ギフトショップの売上増→売上増
  • スポンサー獲得→スポンサー収入の増加

 

一言で言えば、収入増がその目的です。その方法をまとめると、次のようになります。

 

【ビッグデータ活用の方法まとめ】

  • 電子ビーコンなどを利用して、来館者の館内行動を把握→人気度を展示内容に反映、来館者への個別の情報発信が可能に
  • ロイヤルティプログラムなどでポイント付与→入会時に属性・メールアドレスなどを把握
  • 無料wifiサービスや電子機器レンタルサービス→メールアドレス収集・作品などの情報提供
  • ギフトショップのロイヤルティプログラム→購入履歴・購入パターンを把握

 

1について、電子ビーコンとは、決められた場所で電子信号を送信し、スマホなどがチェックイン(登録)できる機器のこと。ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館では、来夏までに小さな電子送信機(電子ビーコン)を設置し、アプリをダウンロードしたスマホやレンタルしたアイポッドタッチに作品情報や広告などを送信する予定です。メトロポリタン美術館では、電子ビーコンの実験を行い、来館者の案内や情報提供に活用しています。

 

小売店で言う、来店チェックインのようなサービスであり、電子ビーコンの発する信号をスマホが察知し、チェックインすれば、その場所にある作品の情報がスマホに送信される仕組みです。これにより、これまで把握できなかった館内行動がわかり、ピンポイントでの情報発信が可能となり、来館者の満足度アップ・リピート来館につながります。

 

2について、ロイヤルティプログラムを用意することで、入会者の属性・メールアドレスがわかります。これにより、来館者の性別や職業・住まいなどを把握することができます。この情報は、スポンサー獲得に役立ちます。この取組に力を入れているのが、芸術界のビッグデータ活用で最先端を行くダラス美術館。マイレージプログラムに似た会員制度であり、リピーター育成にも寄与しています。

 

3について、無料wifiサービスを提供するのは、メトロポリタン美術館。来館者の利用時に、メールアドレスを登録してもらい、作品情報の提供などに活用しています。グッゲンハイム美術館は、アイポッドタッチのレンタルを行い、導入する電子ビーコンに活用する計画です。無料の通信サービス・機器レンタルサービスを提供することで、館内行動を把握すること可能となります。

 

4について、ギフトショップでの活用は、小売チェーンとほぼ同じです。マサチューセッツ州のノーマンロックウェル美術館では、顧客の購入履歴や買い物パターンに応じて、送信するメール内容を変えています。その結果、今年のブラックフライデーとサイバーマンデーの売上が、昨年同期比で16~20%増加。来年からは、年齢などの属性や鑑賞した作品・参加したセミナーなどの館内行動と、購入履歴を統合するとのことです。

 

これらのビッグデータ活用は、来館者の個人情報や行動を収集することが前提であるゆえ、課題を抱えています。

 

【美術館のビッグデータ活用の課題】

  • 小売業などの営利企業のやり方を非営利の芸術分野に持ち込むことへの批判
  • 個人情報の収集に対する来館者の反発の懸念
  • 情報漏洩リスク
  • 人気を優先するあまり新規性や芸術的重要性が損なわれる懸念

 

美術館ならではの問題は、1と4。利益追求よりも啓蒙を重視する組織ゆえに、営利企業のやり方の導入には批判があります。作品情報のみならず、ギフトショップやレストランの宣伝が増えることで、売り込み臭が強まり、客数が逆に減る恐れもあります。

 

4について、来館者のニーズに合致しようと、来館者が注意深く鑑賞した作品ばかり重視すれば、人気は高まる一方で美術館の新規性や芸術的重要性が損なわれる恐れがあります。芸術の啓蒙もその目的ゆえに、人気ばかり追いかけるわけには行かないのです。

 

これら課題はあるにせよ、これまで把握できなかった来館者の館内行動を収集できることは、大きな強みです。これにより、来館者の興味関心を把握でき、個別の情報提供により来館者の芸術への関心を高めることができます。学術的で近づきにくかった美術館が、ビッグデータ活用により身近な存在になるかもしれません。

 

Solomon R. Guggenheim Museum

 

The Dallas Museum of Art 

 

The Minneapolis Institute of Arts

 

Metropolitan Museum of Art 

 

The Los Angeles County Museum of Art

 

The Norman Rockwell Museum 

 

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《今回のヒントのまとめ》

  • 美術館がビッグデータを活用する目的は、リピート利用の促進とギフトショップの売上増、スポンサー獲得であり、収入の増加を目指している。
  • その方法として、電子ビーコンなどの活用による来館者の館内行動の把握と、ロイヤルティプログラムによる属性・メールアドレスなどの獲得、無料wifiサービスや機器レンタルによるメールアドレス獲得と情報提供、ギフトショップのロイヤルティプログラムを上げることができる。
  • しかし、個人情報の収集を前提とするので、課題もある。特に、営利企業のやり方を非営利の芸術の世界に持ち込みことへの反発や、新規性や芸術的重要性よりも人気を優先しすぎる懸念は、美術館特有の課題である。
  • ビッグデータ活用によって、これまで把握できなかった来館者の館内行動を把握できたことは革命的とも言えるだろう。その結果、来館者の芸術的関心を高めることができれば、美術館をより身近な存在に進化させることできる。

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7)おすすめ商品・サービス

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WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

最近、ミスタイプが目立ち、メルマガ作成に時間が掛かりすぎています。

指先が弱ったのでしょうか。

苛立ちが募ることも頻繁。

めげずに頑張ろう。

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

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