【848号】ファミリー層を魅了した、ホンダ・ミニバンのイノベーションとは？

◎本日のニュース

2)要約

自動車メーカーは、ミニバンの快適さを訴えようと、高級な座席シートやカップホルダー、DVDプレーヤーなどを大きく宣伝する。しかし、ターゲットのファミリー層にとっては、それでは不十分。というのも、ミニバンは単に移動手段ではなく、居間としての機能も期待されているからである。

ファミリー層がミニバンに多機能を求めるのは、ファミリー層にとって自動車内で過ごす時間が長いからである。その一方で、ファミリー層が持つ不満が解消されたミニバンがなかなか開発されないため、各自工夫してきた。そしてついに、ホンダやキアから、ファミリー層が待ち望んだ機能を持つミニバンが発売された。

◎キーセンンスとその翻訳

3）キーとなる英文

Car makers tout comforts like plush seats, cupholders and DVD players. But those touches aren’t enough to accommodate the family on-the-go, parents say, leading them tinker with their own solutions.

4）キーとなる英文の和訳

自動車メーカーが積極的に宣伝しているのは、高級シートやカップホルダー・DVDプレーヤーなどの快適さである。

しかし子供を持つ親曰く、これらの特徴は外出中のファミリー層を乗せるには不十分という。

そこで、彼らは独自に工夫を凝らすことになる。

5）気になる単語・表現

tout	他動詞	～をうるさく勧誘する
plush	形容詞	高級な；フラシ天の
touch	名詞	特殊な能力；筆致
accommodate	他動詞	（乗り物などが）～を乗せる；～を収容する
tinker	自動詞	いじくり回す；下手な修理をする

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

記事で紹介されているのは、8歳と12歳の子供を持つ主婦のミニバン。この主婦は、通学・習い事の送り迎えにこのミニバンを使用しています。このミニバンには、中央の保管庫にウェットティッシュ・手専用消毒液・ローション・日焼けローション・虫除けスプレーなどが入っています。まさに、家族用の携帯物置と言っていいかもしれません。小さなゴミ箱は、前の座席の床に、宿題セットは後部座席に設置されています。週末の長い移動用としては、DVDプレーヤーと映画のエンタメボックスを持ち込んでいます。荷台の比較的涼しい場所には食料庫があって、牛乳などの保管に利用されています。ちなみに、牛乳は正午から午後5時までその食料庫に入れられているようです。

この使い方を見ると、ミニバンは、もう移動手段というよりも動く居間としての機能の方が期待されているのではないかと、思うほど。実際、快適さを大きく宣伝する自動車メーカーに対し、ターゲット層のファミリー層は快適さだけでは不十分であり、機能性を求めています。

その機能性のリクエストに答えたのが、2014年型のホンダのミニバン・オデッセイ。小型掃除機を内蔵しました。その理由は、手早く掃除したいというニーズが強いから。その背景には、汚い自動車の持ち主は、ゴミに無頓着で、家事をあまりしないという連想があるそうです。こう思われたくないから、車内をできるだけ清潔に保ちたいものの、隅やドアとの裂け目に入り込んだゴミクズは、なかなか取り除くことはできません。一方で、車内で飲食することも多いので、車内での飲食を禁止する家族もいるほどです。

機能性を高めた他のミニバンの例としては、キアの2015年型セドナバンが紹介されています。小物を保管しやすくするために、座席の後ろにバッグを引っ掛けられるフックを設置。また、大きなサングラスが女性に人気という理由から、サングラスホルダーを大型化しました。さらに、前座席のコンソールのドリンクホルダーを、42オンスのペットボトルが入る大きさにサイズアップ。携帯電話が見えるように置ける小さなトレーを、そのコンソールにつけています。キアは、このコンソールを、リビングのコーヒーテーブルの機能が発揮できるように開発したようです。

では、なぜファミリー層はミニバンに機能性を求めるのか。それは、アメリカ人のファミリー層は、自宅・職場・学校以外の時間のほとんどを自動車内で過ごすから、です。だから、移動手段だけではなく、居間としての機能も欲しいのです。

機能性で頭に浮かぶには、ユニクロ。ユニクロは、ファッション性が重視されたカジュアル衣料に、機能性を付加させることにより、世界的ブランドに進化しました。一方で、高級ブランドなどは、そのブランド・ファッション性をウリにしています。

自動車に目を転じれば、消費者が購入を決めるポイントが、見た目やブランドから、燃費や環境性にシフトしています。今回取り上げたミニバン車内の機能性は、燃費・環境性に続く、自動車に求められる機能性がさらに進化したものと捉えることができないでしょうか。

アパレル品の事例を含め、これを大きな消費者ニーズの流れと考えれば、他の消費財にも機能性が求められているということになります。

HondaVAC from 2014 Odyssey

Kia 2015 Sedona van

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《今回のヒントのまとめ》

自動車メーカーがミニバンの快適さを宣伝する一方で、ターゲットのファミリー層は機能性を重視する。
というのも、自宅・会社・学校以外の時間のほとんどを、自動車内で過ごすからである。
そのニーズに答えたのが、ホンダの2014年版オデッセイ。ゴミに無頓着な人と見られたくないから手早く掃除がしたいニーズがあり、そのニーズに応える形で小型掃除機を内蔵した。
自動車の重視するポイントは、見た目・ブランドから燃費・環境性など機能性にシフトしてきた。ミニバン車内の機能性を求めるニーズは、機能性重視がさらに強くなったということではないか。

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