【864号】シャオミがスマホのネット販売でギネス記録を更新した理由

Jon Russell

◎本日のニュース

1)見出し
Xiaomi: The Secret to the World’s Most Valuable Startup

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2)要約

創業5年目のシャオミが世界第五位のスマホメーカーに成長した原動力は、中国の多数の若者である。SNSやイベントを通じて彼らにファンになってもらい、その貢献に応じてVIP扱いし、その信仰心をさらに高めている。

このやり方を中国以外の新興国市場にも適応し、さらなるシェア拡大を狙っている。しかし、ブランド認知度の低さや供給量の小ささにより、上手く行っているとは言いがたい。また、中国で生まれたグローバルブランド第一号として中国人の愛国心に訴えかけている点も、海外では効果を期待できない。

シャオミ飛躍の秘密は、その安さにもある。アップルやサムスン製品と同品質にも関わらず、半値以下で販売している。低価格でも採算が合うのは、ファンによる口コミやネット販売により販売コストが低いからである。

◎キーセンンスとその翻訳

3）キーとなる英文

The party, for about 300 fans, was an example of why Xiaomi has risen so quickly to the top of China’s smartphone market.

4）キーとなる英文の和訳

そのパーティーは、約300人のために開催され、シャオミが中国スマホ市場のトップ企業にまで急速に成長した理由の一例だった。

5）気になる単語・表現

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

シャオミと言えば、中国のドメスティックスマホメーカーという認識でしたが、今では世界シェア5位のグローバル企業。日経新聞でも取り上げられることが多くなりました。世界5位の企業ながら、創業してまだ5年。急過ぎる成長を後押ししたのは、価格戦略とマーケティング戦略です。

シャオミの価格戦略を一言で言えば、低価格戦略。つまり、アップルやサムスンなどの高機能スマホと同じスペックながら、半額以下で販売します。この低価格戦略が、iPhoneやギャラクシーを欲しいが買えない中国の若者の興味を惹きました。

高機能スマホを他社の半値以下で売ることは、そう簡単なことではありません。中国では低価格スマホはあふれていても、品質はiPhoneやギャラクシーよりも劣るものばかり。悪質な模造品も氾濫しているほどです。では、なぜシャオミは高機能スマホを他社の半値以下で販売できるのか。その秘密は、特殊なマーケティング戦略にあるのです。

【シャオミのマーケティング戦略】

ユーザーとのコミュニティを作り、密度の高いコミュニケーションを通じて、そのロイヤルティを高める
コミュニティ内での貢献の度合いにより、ユーザーを特別扱い
中国初のかっこいいグローバルブランドとして愛国心に訴えかける
販売はネット通販による直販

→広告宣伝費・販売費を抑え、低価格を実現

一言で言えば、コストの掛かるマスコミュニケーションではなく、ユーザーとの直接コミュニケーションに取り込むことで、コスト削減とロイヤルティの向上を目指し、削減した販売コストを原資に価格を下げているのです。

1について、ユーザーとの関係を深めるために、SNSだけではなく、中国全土で数週間に一度パーティーを実施。シャオミ幹部が、直接ユーザーとアイ、ネットで質問に対し回答するほどです。ユーザーとの関係は、企業対個人というよりも、個人対個人に近いものがあります。ユーザーにとって、シャオミは顔の見えるブランド。だから、熱烈なファンは、シャオミ創業者のレイ・ジュンCEOに、手作りギフトを贈るのです。そして、そのギフトを貰ったジュンCEOは、北京の本社に展示するという粋な計らいを行い、ファン心理に応えています。

2について、シャオミユーザーは、コミュニティ内の貢献に応じて、シャオミからプレゼント受け取れます。例えば、杭州市の工場で働く若い中国人ユーザーは、毎夕2～3時間、ネット上のシャオミフォーラムで他ユーザーの質問に答えています。この貢献がシャオミに認められて、フォーラムではVIP待遇を受け、行ったことのないようなナイトクラブで行われるシャオミ主催パーティーに参加しました。またシャオミは、貢献への感謝として彼にデジタル機器を贈っています。このような特別扱いを受ければ、シャオミをさらに好きになるはず。そして、彼のような熱烈なファンが口コミで宣伝してくれることで、シャオミは広告宣伝費を削減できるのです。貢献に応じて扱いに差を付けることで、さらなる貢献を促すのです。

3について、単にシャオミがコスパの高いメーカーだけなら、ここまで急成長を遂げなかったかもしれません。シャオミは、中国人、特に中国の若者にとって、中国初のクールなグローバルブランドなのです。愛国心の強い若者にとって、シャオミは誇りそのものかもしれません。だからこそ、シャオミコミュニティ内で貢献しようという気になるのです。中国の若者に広がるナショナリズムが、シャオミの飛躍を後押ししたと言えるでしょう。

4について、販売はネットでの直販に限ることで、販売コストを削減。また、販路と供給量に制限を設けることで、ユーザーに枯渇感を与え、ブランドの希少性を向上させることに成功しています。

世界5位までに成長したシャオミは、同じ手法を使って、中国以外の新興国に進出しようとしています。ただし、実際上手く行っているとは言えません。その理由をまとめると、次のようになります。

【シャオミが新興国市場で苦戦する理由】

ブランド認知度が低いから
供給量が少なすぎるから
異国ブランドになるから

1・2について、世界5位のシェアと言っても、まだ中国市場で販売しているだけで、中国以外で知る人はほとんどいません。この知名度の低さにより、供給量を絞ることによる枯渇感の創出に失敗しています。それどころか、在庫がないから、欲しいけど他ブランドを買うという事態に陥っているとも言えるでしょう。

3について、中国で発揮した愛国心が、海外では全く期待できません。それどころか、「中国メーカー＝粗悪品」という概念が、シャオミの販売を阻害しているとも考えられます。

シャオミ飛躍の一番の要因は、アップル・サムスンのスマホと同等の機能を持ちながら、半値以下で販売しているからに他なりません。ただ、ユーザーとの直接コミュニケーションを通じて、ブランドロイヤルティを引き上げ、熱烈なファンにまで成長させている点も、大きく寄与しています。その熱烈なファン育成のために用いたのが、貢献度による特別扱い。この特別扱いこそ、ブランドロイヤルティの向上・ファン育成の秘訣と言えるでしょう。

Xiaomi（グローバルページ）

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《今回のヒントのまとめ》

操業5年目のシャオミが世界5位にまで飛躍したのは、ユーザーとの直接コミュニケーションとネットでの直販を通じて、販売コストを削減することにより、高機能スマホを他メーカーの半値以下で販売したからである。
ユーザーとの直接コミュニケーションは、単にSNSやイベントでの接触機会を増やすだけではなく、コミュニティ内での貢献度により扱いに差を付けることで、熱烈なファン育成に成功した。
さらに、中国初のかっこいいグローバルブランドとして認識してもらうことで、愛国心の強い中国人の若者の心を捉えたことも、急成長に寄与した。
異国ブランドとして認識される新興国市場では、ブランド認知度の低さにより、中国で成功した戦略がうまく行っていない。

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