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【883号】ユニリーバの中国売上が激減した理由

unilever

 

 

◎本日のニュース

1)見出し
Western Firms Caught Off Guard as Chinese Shoppers Flock to Web

 

 

 

 

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2)要約

ユニリーバは、過去30年着実に成長してきた中国市場での売上を激減させた。しかし、これはユニリーバに限ったことではなく、中国に進出した欧米の消費財メーカーに共通したことである。

 

その要因は、中国経済の低成長と消費の縮小、そして消費のネット通販へのシフトである。スマホの普及により、ネット通販の利用は中国全体で急速に広まっている。その結果、これまで欧米消費財ブランドが棚を支配してきた量販店の客数が激減。特に、中国を含めた新興国に売上の半数以上を依存するユニリーバは、この影響を大きく受けた。

 

これに対しユニリーバは、利益率を確保するために、販促・流通在庫の削減に動いた。この結果、売上激減となった。また、アリババのネットモールに公式通販サイトを開設することで、ようやくネット販売に力を注ぐようになった。

 

3)キーとなる英文

The shrinking role of large traditional retailers hurts the big consumer-products companies, who had dominated their store shelves.

 

4)キーとなる英文の和訳

従来型の大規模小売店の役割が小さくなることにより、大手消費財企業は痛手を負っている。

というのは、店舗の棚を独占してきたからだ。

 

5)気になる単語・表現

catch A off gurad 他動詞句 ~の油断しているところを襲う
cliff 名詞 絶壁
pullback 名詞 縮小;(軍の)撤退
exodus 名詞 出て行くこと、大移動;(多数の人がいっせいに)手を引くこと
reverberate 自動詞 広まる
hawker 名詞 行商人
casualty 名詞 死傷者;大事故;損害を受けた物
shrug A off 他動詞句 ~を(取るに足らぬとして)忘れ去る
unload 他動詞 (株・商品など)を(時に不法に)処分する;~を降ろす

 

(今回ピックアップ英単語)

【shrug】

「(肩)をすくめる(両肩をあげ、手の平を上に向けて両手を広げ、不快・疑い・絶望・無関心・当惑・不賛成などを示す)」

「肩をすくめること;シュラッグ(肩と腕だけを覆う女性用の短いカーディガン・上着)」

(英英)

(no passive) to raise your shoulders and then drop them to show that you do not know or care about something

EX)Sam shrugged and said nothing

(shrug off類語)

「受け流す」parry, ward, fend

「払いのける」brush, sweep, wave aside

「振り切る」shake off

「無視する」ignore, disregard, neglect, forget, brush off, put aside

(その他)

記事では、「ユニリーバ幹部が中国の需要減退を取るに足らぬとして無視した」という文章でshrug off を使用。

 

6)ビジネスのヒント

株価がバブルのように高騰している中国ですが、経済は渋いようです。その影響を受けているのが、欧米の消費財メーカー。

【中国市場で売上低迷に直面した欧米消費財メーカー】

[ユニリーバ社]2014年度第三四半期の売上を20%減に下方修正、翌第4四半期もさらに20%減に下方修正

[ネスレ社]店舗でのインスタントコーヒー売上が激減

[コルゲート・パルモリブ社]在庫過多

[ベイヤーズドルフ社(ニベアスキンクリームを製造)]在庫過多

 

ただし、これら売上低迷の要因は、景気減速だけではないようです。

 

【ユニリーバなど欧米消費財メーカーの売上低迷要因】

  1. 中国経済の減速
  2. 倹約令による消費の縮小
  3. 実店舗からネット通販への急速なシフト

 

2について、政府による倹約令は、消費への大きな逆風となっています。倹約令とは、役人や国営企業従業員への贈答を禁止するということ。役人の贈答に多かった商品券は、実店舗の小売店で使われることが多かったため、倹約令は商品券の利用減・実店舗の売上減という形で表れます。国営企業の従業員への贈答で多かったのは、シャンプーや石鹸・洗剤などを詰めたカゴ。これらの需要が減ることで、シャンプーや石鹸など非食品の日常品の売上が、昨年13%も減少しました。シャンプーのラックスやダブの液体石鹸を持つユニリーバは、大きな打撃を受けるわけです。

 

3について、これは構造的な問題。スマホの急速な普及により、中国ではネット通販の利用が急拡大。次のような数字を見ると、中国のネッツ通販市場の急成長ぶりが理解できます。

 

【急成長する中国ネット通販市場】

  1. 4億6100万人が利用(2014年)←2007年は4600万人
  2. 市場規模は4530億ドルで、全小売の11%、成長率は49%(2014年)←59%(2013年)、51%(2012年)、70%(2011年)
  3. 2013年にはアメリカを抜いて世界最大の市場に
  4. 消費者の約半数が食料品もネットで購入(世界では約1/4)

 

シャオミなどコスパの高いスマホの登場により、中国でスマホが急速に普及し、それが、ネット通販ユーザーの拡大につながっているようです。4のように、食料品をネットで買ったことのある人が約半数もいるなど、その普及ぶりは驚くほどです。

 

では、なぜネット通販の普及が、欧米消費財メーカーにとって売上減につながるのか?実店舗の売上がネットにシフトするだけならば、メーカーは何も痛手がありません。しかし、欧米消費財メーカーは、大規模量販店の販売棚をほぼ独占しているので、このルートの売上が減少することは、大きな痛手なのです。一方、ネット通販では、価格が容易に比較できるため、割高な欧米ブランドには不利になります。

 

ネット通販の急激な普及により、実店舗小売は売上を大きく落としており、これが実店舗小売を金城湯地としてきた欧米消費財メーカーに、大きく影響を及ぼしているのです。

 

【存在感が薄くなった実店舗小売】

小売チェーン上位100企業における消費財売上は、全体の8%(2014年)←2009年は11.2%

 

消費のネットシフトは、小売チェーンにも戦略変更を余儀なくさせました。

 

【消費のネットシフトにより戦略を変更した欧米小売チェーン】

  1. ベストバイ社→2014年に中国の店舗をすべて売却
  2. メトロ社→家電量販店事業から2013年撤退
  3. ウォルマートストアーズ社→実店舗での拡大路線は継続。ただし、オムニチャネルによりネット販売も深耕。

ただでさえ売上が減少している上、流通在庫が把握しにくかったため、さらに事態は悪化。つまり、実店舗型小売チェーンは、売れ残った在庫を卸に処分売り。その卸は、通販サイトや自営業者に値引き販売したため、メーカーは、流通在庫を確認し、需要を見定めるのが極めて難しくなりました。ユニリーバは、流通の現場で何が起こっているのかわからなかっため、急遽下方修正を発表したのです。

 

これに対し、ユニリーバは次のような対策を打ちました。

 

【実店舗での売上激減に対するユニリーバの対策】

  1. 値崩れ抑制・利益率確保→販促の削減、流通在庫の削減
  2. 公式ネットショップの開設→アリババのネットモールでようやく開始

 

1は、止血に当たります。膨らんだ流通在庫が、ネット通販や非正規の自営業者に流れ込むことで値崩れを起こすのを抑制することで、利益率の確保に動きました。具体的には、特売などの販促を止めて、出荷数量を減らすということです。

 

2は、攻めの対策。アリババのTモールに、公式通販サイトを開設しました。ただし、他のグローバル企業に比べて開設が遅れたので、その売上への寄与はさほど大きくないとの読みもあります。

 

他の欧米消費財メーカーに比べて、ユニリーバの売上減少が大きかったのは、全売上に占める新興国の割合が大きいから。約60%を新興国で稼いでいます。中国市場の売上激減により、全売上は2,7%も減少しました。(2014年)

 

経済成長の速度のそのフェーズも、中国と日本は全く異なるので、中国のような劇的なネットシフトは日本では起こらないでしょう。しかし、日本での、買い物のネットシフトがじわじわ起きているのは事実。GMSの不振も、もしかしたらネット通販に顧客を奪われていることも影響しているかもしれません。利用頻度の高いものは、近くのコンビニか小型スーパーで、そう高くないものはネットで、という時代が日本でも来るかもしれません。配送(運賃)さえクリアできれば、義務で行う買い物は、すべてネットに切り替わっておかしくありません。

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ユニリーバなど欧米消費財メーカーが中国での売上を減少させた要因は、景気減速、倹約令による消費の減少、消費のネットシフトである。
  2. 消費のネットシフトは、実店舗の棚をほぼ独占してきた欧米消費財メーカーにとって大きな痛手である。実店舗小売チェーンの影響力は下がっている。
  3. さらに、流通在庫の把握が難しかったことも、需要予測を狂わす要因となった。実店舗の売れ残りが、ネット通販や自営業者に処分販売され、値崩れしたためである。
  4. これに対しユニリーバは、利益率確保のために、販促の削減・流通在庫の削減を行った。また、タオバオのTモールに公式通販サイトをようやく開設した。
  5. 買い物のネットシフトは、購入頻度の低いものから、日本でもさらに進む可能性は高いだろう。

 

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

マクドナルドのベジタブルチキンバーガーを食べました。

マーケティングブログで詳しく述べていますが、正直いいとは言えないですね。

あっさりしているので、ヘルシー志向の相当高い人にはいいものの、ビッグマックなどがっつりいきたい人には不向きです。

個人的には、今メガマックが無性に食べたいですね。

販売店は限られているようですが、最近西宮で見つけました。

次の楽しみに置いておきます。

マクドナルド・ベジタブルチキンバーガー

 

楽天で売っている「ベジタブル」「バーガー」

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

風邪こじらせました。

喉の痛みがひどく、満足に喋れません。

まるで森進一さんのようで、こんな自分が嫌になります。

原因はだいたいわかっています。

クーラーですね。

今年の夏は、厚くても長袖・ジャケットで行こうと今のところ考えています。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

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