【891号】オンライン旅行代理店が直面する課題とホテル・トゥナイトが示したその解決策とは？

◎本日のニュース

2)要約

宿泊日当日に最大70％引きでホテルの客室レートを提示するネットサービス、ホテル・トゥナイトが、個人コンシェルジュサービス「エーシーズ」を始める。エーシーズを利用すれば、ユーザーは、訪問予定都市について質問できるほか、ホテルに追加の備品やサービスをアプリ経由で依頼できる。

エーシーズが生まれた背景には、オンライン旅行代理店業界が抱える課題がある。それは、ホテル選択・予約まで手助けするものの、その後は口コミを入力してもらうまで、顧客をホテルにみすみす引き渡してしまうということである。できれば、予約完了後も、サイトを利用してもらい、ブランド・ロイヤルティを高めたいと考えている。

ただし、エーシーズにも課題がある。ユーザーが本当に求める訪問都市の情報を持っていることを、ホテル・トゥナイトは証明しなければならない。また、既存の口コミサイトからユーザーを奪う必要もある。

3）キーとなる英文

A mobile-phone app that offers near-term hotel bookings thinks it has a way to do something that many bigger online travel agents are struggling to do: give hotel guests a reason to keep using their service after booking a room.

4）キーとなる英文の和訳

直近のホテル予約サービスを可能にするスマホアプリ提供企業は、より規模の大きな多くのオンライン旅行代理店が抱える課題の解決策を持つと考える。

それは、ホテル滞在客に予約後もそのアプリを使う動機を提供することである。

5）気になる単語・表現

tip	名詞	助言；内報、秘密情報
wean A off B	他動詞句	A（人など）をB（仲間・習慣など）から引き離す
attraction	名詞	魅力
weigh	他動詞	～をよく考える
near-term	形容詞句	残り時間の短い

（今回ピックアップ英単語）

weigh

（元々の意味）～の重さを量る→～をよく考える、重さが～である(自動詞)→～の重荷となる(on)、～に影響を与える(against, with, on)

（ニュアンス）「～をよく考える」は「選択する前に注意深く考える」というニュアンスを持つ。「影響を与える」は「意見への影響。」

（類義語）

「圧する」oppress, press

「圧迫する」load, bear down on, bear on

「重要である」count, matter, concern, signify

「計る」measure, time, gauge, survey

6)ビジネスのヒント

この記事で紹介されているのは、直前格安ホテル予約サイトのホテル・トゥナイト。サンフランシスコ本社で、2011年に創業したばかりのITベンチャー。このホテル・トゥナイトが、個人コンシェルジュサービス・エーシーズを始めます。その概要は、以下の通り。

【個人コンシェルジュサービス・エーシーズの概要】

ユーザーは訪問予定都市について質問できる
ホテルに追加の備品・サービスをアプリ経由で依頼できる

1は、個人コンシェルジュサービスそのもの。ホテル・トゥナイトを使えば、地元でしか手に入らない情報を訪問前に得ることができます。2は、ホテルのフロントを通じてではなく、訪問前にアプリ経由で追加枕やルームサービスを依頼できます。両者に共通するのは、これまで訪問後でしか実行できなかった情報収集や依頼が、事前にできるということ。時間を節約できることで、限られた旅行時間をより充実して使う事が可能となります。

ホテル・トゥナイトがエーシーズを提供可能なのは、以下の理由によります。

【ホテル・トゥナイトがエーシーズを提供できる理由】

ローカル情報への回答→地元情報に通じた人や、旅行者が本当に知りたい情報を探れる人・人脈を持つから
レストランやスパなど、ホテル内のサービス利用が促進され、売上増加につながるホテルが乗り気だから

2に関しては、反論もあります。それは、従来チェックイン後にサービスを提供していたホテルの仕事を奪うことになり、宿泊客との関係性が薄れることで、ホテルの反発を招くのではないか、というもの。それに対しては、ホテルの宿泊以外のサービス促進につながることで、逆にホテルはウェルカムであると、ホテル・トゥナイトは主張しています。

エーシーズが生まれた背景には、ホテル・トゥナイトも含めたオンライン旅行代理店が直面する課題があります。その課題とは、

予約完了後は、サイトを利用してもらえなくなる

ということです。コストを掛けて集客しても、ホテル選び・予約まで手助けするものの、その後は予約したホテルに引き渡すだけ。後は、口コミやレーティングを入力してもらうまで、顧客との関与は無くなります。これでは、ブランド・ロイヤルティが生まれにくくなり、リピーター獲得につながりません。この課題の解決策の1つして、エーシーズはあるのです。

個人コンシェルジュをネットで提供することは斬新なアイデアですが、もちろん課題もあります。

【エーシーズの課題】

ホテル・トゥナイトが本当にローカル情報に通じていることを証明する必要がある
イェルプなど既存の人気口コミサイトから、ユーザーを奪う必要がある

1について、ローカル情報に通じた人材や人脈があるといっても、実際に欲しい情報が偉える保証はありません。一度利用して欲しい情報が得られなければ、二度と利用してもらえないというリスクがあります。

2について、ローカル情報は口コミサイトで獲得可能です。つまり、個別コンシェルジュサービスは、口コミサイトと競合するのです。その筆頭格は、イェルプ。イェルプが持つ情報以上の濃いローカル情報を提供できなければ、エーシーズではなくイェルプを利用し続けるのは間違いないでしょう。問われるのは、情報の質です。

直前の格安予約サービスで創業したホテル・トゥナイトですが、今では7日前までのホテル予約も可能です。サービス拡大した理由は、より広いニーズに対応することで、顧客層の拡大と顧客の利用機会の増加を促すためでしょう。ただし、逆に他のオンライン旅行代理店と同質化したとも言えます。どの業界でも、同質化すれば価格競争が生まれやすくなるもの。特に、オンライン旅行代理店は、斡旋サービスであるため、提供するホテルや宿泊プランで差別化することはなかなか難しく、さらに、クリック1つで他サイトに移動できるので、価格競争が非常に生じやすい業界と言えます。だからこそ、予約完了後もサイトを利用してもらうことで、ブランド・ロイヤルティを高める必要性を、各社ひしひし感じているのでしょう。それほど、価格競争が激しいのかもしれません。

そういう意味では、エーシーズとは、価格競争回避の目的で、新規サービスの提供により顧客との接触機会を増やし、ブランド・ロイヤルティを高める施策と言えるでしょうか。

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《今回のヒントのまとめ》

ホテル・トゥナイトが、個別コンシェルジュのエーシーズ提供するのは、予約完了後も顧客との接触機会を持つことで、ブランド・ロイヤルティを高めるためだろう。
これは、他のオンライン旅行代理店も抱える問題であり、現状はせっかくコストを掛けて集客しても、予約完了後は顧客をみすみすホテル側に引き渡すことになっている。
エーシーズの特徴は、ユーザーが訪問予定都市の質問をアプリでできることと、アプリ経由でホテルに追加の備品・サービスを依頼できることである。ホテルは顧客との接触機会を失う恐れもがあるが、逆にホテルが提供する宿泊以外のサービス利用を促進させることができる。
エーシーズの課題は、本当にユーザーが知りたいローカル情報があることを証明する必要があるということである。また、イェルプのような人気口コミサービスと競合するので、口コミサイトからユーザーを奪う必要もある。
オンライン旅行代理店がユーザーとの接触機会を増やそうと必至なのは、それだけ価格競争が激しい業界かもしれない。接触機会を増やすことで、ブランド・ロイヤルティを高め、価格競争を回避するというオーソドックスな手法と言えるだろう。

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