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【907号】ウォルマートの”アップスキリング”、その導入理由と最終目標とは?

Wal-Mart

◎本日のニュース

1)見出し
Wal-Mart Tests ‘Upskilling’

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2)要約

ウォルマート・ストアーズ社は、ミズーリ州・ジョプリン市の店舗で、従業員教育の実験を行っている。その実験がうまく行けば、雇用やその流動性に今後大きな影響を及ぼすとされる。

それは、小売・サービス業界で広がる「アップスキリング」と言うもので、エントリーレベルの従業員を公式に教育することである。従来は、新卒の新入社員や管理職を教育することはあっても、エントリーレベルの売場担当者を本部が教育することはなかった。

ウォルマートがアップスキリングの導入に踏み切った理由は、公平性を高めて社会的な評判を高める狙いがあるからであり、また離職率低下によりコストダウンが見込め、さらに売場でのサービスレベル向上につながるからである。

3)キーとなる英文

But there is an experiment under way here—one that has potentially far-reaching implications for employment and upward mobility nationwide as the country settles in to enjoy another Labor Day weekend.

4)キーとなる英文の和訳

しかし、ここでは実験が進行中である

その実験は、雇用に広範囲に影響を及ぼすとともに、全米がもう一つのレイバーデーの週末を落ち着いて楽しむ一方で、全国的な雇用の流動性向上を促す可能性がある。

5)気になる単語・表現

far-reaching 形容詞句 広範囲にわたる
implication 名詞 影響;巻き込むこと;含蓄;ほのめかし
mobility 名詞 (職業などの)流動性
settle in 自動詞句 落ち着く
upward 形容詞 上昇の
supervise 他動詞 ~を監督する
associate 名詞 準会員;仲間
drill 名詞 (厳格な、集団的な)訓練
catchy 形容詞 楽しくて覚えやすい
assessment 名詞 判定、査定
department 名詞 売場
virtually 副詞 実質的には
preocupation 名詞 没頭
accountable 形容詞 責任がある
rung 名詞 (社会・職業上の)地位;(はしごの)格、段
certification 名詞 証明;証明書
credential 名詞 信用;資格;証明書
demonstrate 他動詞 ~を論証する;~の証拠となる

(今回ピックアップ英単語)

おやすみ

6)ビジネスのヒント

今回もLIFE(生活)面のエッセイから。ウォルマート・ストアーズ社が従業員教育の改革を行っているようです。ただし、今のところミズーリ州・ジョプリン市の店舗だけで行い、この実験がうまく機能すれば、来年始めまでに全米の全店舗に導入するようです。

こ の改革、実は小売・サービス業界で広がる「アップスキリング」というもので、エントリーレベルの売場担当者を公式にトレーニング(教育)するというもの。 逆に言うと、これまでは、新卒の入社組や管理職には公式に教育を行っていたものの、エントリーレベルの従業員には、全社的な教育は実施していなかったので す。

では、なぜウォルマート社などの小売・サービス業界の企業がアップスキリングを導入するのか。その理由をまとめると、次のようになります。

【店舗ビジネス企業がアップスキリングを導入する理由】

  1. 公平性を高めることで、社会的な評判を向上させるため
  2. 人材獲得コストの削減・サービス向上により収益拡大に結びつくから
  3. 売場のサービス向上によりネット通販と差別化ができるから

1について、新卒と管理職だけ教育して、パートタイマーの売場担当者の教育をしないというのでは、公平性が保たれず、政治問題化しかねません。そうなれば、社会的な評判がガタ落ちし、収益の圧迫要因になる恐れがあります。

2 について、店舗ビジネスの離職率は高く、例えば小売業の場合、採用後6ヶ月以内で50%の従業員が離職します。そのコストは、売場担当者一人あたり、 5000ドルまたはエントリーレベルの年収の20~30%にも上ります。このコストを削減できれば、収益にプラスに働きます。例えば、ウォルマートの場 合、採用後12~18ヶ月仕事を続けてもらえれば、年間数千万ドルもコストダウンできるようです。これはボトムの利益にそのままプラスになるので、収益拡 大に大きく寄与します。

また、顧客と接触する機会の多い売場担当者を教育すれば、その接客サービスが向上し、売上拡大につながります。

3について、これは私自身が考えたもので、接客サービスは、ネット通販にはない実店舗型ビジネスの強みそのもの。売場担当者を教育することにより、接客サービスが向上すれば、利便性の高いネット通販から顧客を奪還できるのです。もちろん、売上増に寄与します。

ウォルマートのアップスキリングプログラムは、パスウェイズ(Pathways)と呼ばれ、その概要をまとめると、次のようになります。従来の方法と比較すれば、その違いがよく理解できます。

【ウォルマートのパスウェイズ概要と従来の方法】

  1. エントリーレベルの従業員に対し、公式に1ヶ月間のOJTを実施する。

(従来)数日のオリエンテーションでコンプライアンスを学ぶだけ

  1. 事前にマネジメントスキルを学ぶプログラムを完了した売場マネージャーが、公式に監督する

(従来)売場では先輩に業務を教わるだけ。マネージャーは効率化に集中するあまり、トレーニングに割く時間がなく、責任もない。

  1. 小売業界全体の概要・企業内キャリアパスについて学ぶ

(従来)なし

1 について、1ヶ月間のOJTでは、楽しく学べるコンピュータープログラムを使います。それは、有名人やアニメキャラクター・競争原理を活用したゲーム感覚 のアプリで、楽しく仕事内容を学ぶことができます。このOJTは、実務手順も含みます。一方、従来の方法では、数日間のオリエンテーションや安全訓練を通 じて、コンプライアンスを学ぶだけ。その後、自分の持ち場に入ることになります。

2について、売場マネージャーが、 自分の業務として、従業員教育に責任を持ちます。その前提として、マネージャーはマネジメントスキルをプログラムで学ぶようです。マネージャーに教育業務 という重要な任務を課すため、マネージャー数の増員も行います。一方、従来の方法では、マネージャーはあくまで業務の効率化に専念するため、人事業務の統 括外でありました。そのため、従業員教育はマネージャーの正式な仕事ではなく、部下の教育に割く時間が持てなかったようです。

3 について、パスウェイズでは、単に業務を教えるだけではなく、小売業界のビジネスモデルなどその概要も教えます。また、社内でのキャリアパスもチャートで わかりやすく表示することで、どうすれば昇進できるのかを明確にし、モチベーションの向上を狙っています。実際、採用後6ヶ月後のゲートウェイ査定という テストに合格すれば、昇進・昇給できるようです。

ウォルマートがスゴイのは、この先の最終目標を設定していることです。それは、

顧客サービスの資格を作る

と いうことです。この資格は、製造業の技能資格のようなもので、業界内の他の企業でも評価されます。つまり、社外にも通用するスキルまでエントリーレベルの 従業員に身に付けさせようとしているのです。従業員にとっては、転職可能なキャリアアップに他なりません。ウォルマートがこのような資格創設を目指すの は、人生最初の職場が小売業という人が多く、業界共通の資格を創設することによって、小売業で働く価値が高まると考えるからです。この背景には、比較的給 与水準の低い小売業に、人が集まりにくいという人材不足という問題があるのでしょう。

さらに、資格という価値を提供することにより、給与以外の働くモチベーションが生まれます。これにより小売企業は、給与をさほど上げなくても人材を獲得することができ、労務費の削減につながります。

冷静に考えれば、転職可能な資格を付与すれば、人材獲得ばかりか人材流出につながりかねません。しかし、逆に転職可能な道を作ることで、これまで敬遠していた優秀な人材の応募が期待できます。ウォルマートはそこまで考えて、資格創設を目指しているのでしょう。

ちなみに、パスウェイズを全米全店舗に広げるまでに、既存従業員の最低賃金を10ドルまでに引き上げるようです。これは、獲得した人材の引き止め策に他なりません。

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ウォ ルマート社が、エントリーレベルの従業員を公式に教育するというアップスキリングの導入を目指すのは、社会的な評判を高めるためであり、離職率低下による 人材獲得コスト削減・サービス向上により収益を拡大するためであり、さらに、接客サービス向上によりネット通販と差別化するためである。
  2. その内容は、採用後1ヶ月間のコンピューターを使った楽しいOJTと、売場マネージャーが公式に監督するトレーニングである。ちなみに、従来は数日の座学の後は、先輩に業務を教わるぐらいで、マネージャーに従業員教育の業務はなかった。
  3. さらに、小売業界の概要や社内でのキャリアパスを教えることで、昇進を目指すモチベーションを高め、離職率の低下を目指している。
  4. ウォルマート社のアップスキリングの最終目標は、顧客サービスの資格を作ることである。これにより、社外でも通用するスキルを学ぶことでき、小売業で働く動機が強まる効果がある。
  5. 転職を容易にする資格を作れば、人材流出につながる恐れがある。しかし逆に、これまで小売業を敬遠していた人材の応募が期待でき、有能な人材の獲得が容易になる。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

久しぶりに自己啓発本を読みました。

ユダヤ人の99歳実業家が、孫に教えた成功の手引。

これが、意外に学べる点が多かったのです。

この手の自己啓発本は、すでに知っている理論・思想の焼きまわしが多く、大抵目次だけ読んで終わりですが、この本は再度読みたくなったほど。

ちなみに、一番重要と感じたのは、

「今の時代で一番お金が儲かる仕事」と「自分が100%情熱を捧げることのできる仕事」という2つの視点で、世界を観る

という箇所です。

全体に通じて言える点は、本当に元気が出る本ということ。

落ち込んでいる人・時にぴったりでしょう。

「99歳のユダヤのスーパー実業家が孫に伝えた、無一文から大きなお金と成功を手に入れる習慣」

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

編集後記

最近、休肝日が無くなりました。

野球のない月曜を休肝日に設定していたのですが、意志の弱いせいか、ついつい飲んでしまいます。

イケナイ傾向です。

高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

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