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【911号】運送企業・UPSが3Dプリンタービジネスに参入する理由とは?

3D Printer Ultimaker

◎本日のニュース

1)見出し
UPS Tests a 3-D Printing Service

www.wsj.com/articles/ups-tests-a-3-d-printing-service-1442618648

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2)要約

運送企業のユニバーサル・パーセル・サービス社(UPS)は、最近100台の産業用3Dプリンターを導入した。その狙いは、3Dプリンターを中継点で稼働させることで、サプライチェーンを短縮化させることである。そうしないと、3Dプリンタービジネスが、輸送ビジネスに脅威を及ぼしかねないと考える。

同 様のことは、10年以上前にインターネットが普及した時にも起こった。当時は、文書の翌日配送サービスを計画していたが、メールの普及でその計画は頓挫し た。3Dプリンタービジネス参入には、外部環境の変化という脅威を事前に封じ込め、さらにそのビジネスチャンスを獲得する目的がある。

ただし、3Dプリンター業界は、その派手な宣伝の割に大きく成長はしていない。プリントスピードの遅さや規模の小ささ・急速な技術の変化がその要因とされている。

3)キーとなる英文

UPS wants to find out if 3-D printing centers could shorten supply chains and cut into its $58 billion-a-year transportation business—or give it a leg up in a potentially emerging market for local production and delivery.

4)キーとなる英文の和訳

UPSの目的は、3Dプリンターの施設がサプライチェーンを短縮化し、年間580億ドルの輸送ビジネスに割って入ってこないかどうか、もしくは、ローカル製造・輸送という潜在的な新しい市場の誕生によって困難を乗り切れるかどうかを、確かめることである。

5)気になる単語・表現

gizmo 名詞 新案小道具
cut into 他動詞句 ~に割り込む、~に食い込む
give O a leg up 他動詞句 ~を助けて困難を乗り切らせる
existential 形容詞 存在の
rug 名詞 敷物
live up to 自動詞句 (約束・評判など)に恥じない行動をする;(主義など)を実証する
hype 名詞 派手な宣伝
deterrent 形容詞 妨げる、怖気づかせる;戦争抑止の
mounting 形容詞 備え付けの
bracket 名詞 腕木、ブラケット
be slated for 他動詞句 ~に予定されている
prototype 名詞 試作品;原型
vent 他動詞 ~に穴を開ける;~に通気孔を付ける;(蒸気など)を出す
constrain 他動詞 ~を抑える;~を強める

(今回ピックアップ英単語)

【be slate for/to do】

この形で頻出の熟語。次の例文を覚えれば大丈夫。

The meeting slated for January.

「開咬は1月に予定されていた。」

She is slated to arrive at nine.

「彼女は9時に到着することになっている。」

もともと「slate」には、次の意味がある。

(名詞)

  1. スレート、粘板岩
  2. (米)公認候補者名簿
  3. (英)負債記録

(動詞)

  1. (英)~を酷評する、~をこき下ろす
  2. ~を予定する(for)
  3. ~を候補者名簿に載せる、~を~に選ぶ(for)

6)ビジネスのヒント

UPS が3Dプリンタービジネスに参入する理由は、要約で書いたとおり。簡単に言えば、外部環境の変化という脅威を回避するだけではなく、そのビジネスチャンス を獲得するため。この場合の外部環境の変化とは、3Dプリンターの発達・普及。これにより、従来ならば、遠方から運んでいたモノが、配達先の近場で製造す ることが可能になり、配送距離が短縮化されることになる。これは、運送業者にとっては、既存ビジネスの脅威に他なりません。だから、UPSはこの脅威に対 応するため、さらにこの事業機会を活かすために、3Dプリンターを導入したのです。

その理由をまとめると、次のようになります。

【UPSが3D プリンタービジネスに参入する理由】

  1. サプライチェーンの短縮化で付加価値が高まり、差別化につながるから
  2. 自社ビジネスの脅威だから

1について、UPSは自社の中継所に100台の産業用3Dプリンターを導入。これにより、注文を受けた翌日に、3Dプリンターで製造したモノを翌朝に届けることが可能になりました。これは、サプライチェーンの短縮化に他ならず、デリバリーの価値を高めることになります。

運送業は、モノを運ぶだけの単純なビジネスです。だから、新規参入も容易な一方で、価格競争に陥りやすいという欠点があります。UPSは3Dプリンターサービスの導入で急速配送を可能にすることで、差別化できることになります。

2はすでに説明済みです。

実際、家電メーカーのウールワースは、このUPSの3Dプリンターサービスを利用して、冷蔵庫のトレーやドライやーの通気システムの試作品を製造。小規模での部品テストに適しているようです。

ただし、UPSが脅威に感じる3Dプリンターですが、さほど脅威ではないという意見もあります。その課題をまとめると、次のようになります。

【3Dプリンター業界の課題】

  1. 成長スピードが予想よりも低い
  2. 適用範囲が狭い

1 について、派手な宣伝をする割に、成長スピードは遅いようです。売上は過去3年間で平均34%ほど、M&Aは過去5年間で合計4億6800万ドル 以上とのこと。数字だけを見ると、その成長力・市場規模は大きそうですが、成長著しいIT分野の中では小さいということでしょうか。

2 について、1の要因とも言えますが、スペア部品の製造ぐらいにしか使えないというのが現状のようです。それは、プリントスピードの遅さと保証の問題。製造 に時間が掛かり、性能に疑問符が付くようですと、なかなか販売する製品に使うのにためらうもの。だから、試作品止まりなのでしょうか。

こ の3Dプリンターの限界を唱えるのが、ドイツの同業・DHL。アジアから欧州に運ばれるモノのうち,3Dプリンターで製造可能なものは、2~4%にとどま るとのこと。社内調査でも、複製したいモノの10%しか完全な性能を持つモノにプリントできないようです。これでは、市場は広がりません。

日 本でも、3Dプリンターが登場した時のような熱気はどこにならという感じでしょうか。今のところ、個人向けでは自分のフィギュア作りでしか3Dプリンター の利用を耳にしません。産業用での利用はそれ以上に進んでいるかもしれないですが、日経新聞でもさほど取り上げられないということは、大した利用ではない でしょう。IoTに注目が奪われているという印象です。

そういう意味で、UPSが感じる脅威は杞憂に終わりそうです が、運送業と組み合わせたビジネスとして考えると面白い。部品・試作品需要はそれなりに大きいですし、商品開発スピード高まることは企業にとって魅力なは ず。ある程度のシェアを獲得できれば、安定したビジネスに育ちそうな予感がします。

外部環境の変化という脅威をビジネスチャンスに捉えるというのは、面白い発想。これは他のビジネスにも応用可能です。

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《今回のヒントのまとめ》

  1. 運送業のUPSが3Dプリンタービジネスに参入するのは、それが自社のビジネスの脅威になるからである。
  2. さらに、それを活用することで、サプライチェーンの短縮化が可能になり、差別化要素になるからである。
  3. 中継点に3Dプリンターを導入することで、顧客の急速配送ニーズに応える。ローカル製造・配送という新市場の誕生につながる。
  4. ただし、3Dプリンター業界はUPSが脅威と感じるほどに成長していない。それは、プリントスピードの遅さと性能への不安・急速な技術変化による。
  5. 外部環境の脅威をビジネスチャンスに捉えるという発想は、他の業界にも適応可能だろう。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

記事で取り上げた三品さんとは、神戸大学経営学部の教授。

面識はないですが、最近三品さんが書かれた書籍を読みました。

利益率向上の伴う成長戦略には、成熟した立地から飛び地に移る必要があるというのが、その持論。

新しい立地は、既存事業の周辺である必要はなく、儲かるかどうかがその選択基準であり、だからこそ飛び地の方がいいようです。

携帯電話の門外漢のアップルがiPhoneを開発したように。

起業・新規事業を考えている人には、とても役立つと思います。

再度読みたいと思った書籍です。

「どうする日本企業」

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

編集後記

今日は、子守しながらの執筆。

事前に記事を読んで、メモしていたから可能になりました。

ぐずつくので、最終的には抱っこ紐で抱えながらタイプしました。

逆に時間かかりますので、今後は要注意。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

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