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【912号】ITベンチャーが中小企業向け融資ビジネスに着目する理由とは?

Exchange Money Conversion to Foreign Currency

 

◎本日のニュース

Tech Firms Venture Into New Territory: Lending

 

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2)要約

決済や会計関連のIT企業が、中小企業向け融資ビジネスを拡大させている。日々の売上や財務内容などのデータを活用することによって、貸し倒れリスクを低減させることができる。

 

銀行による大企業向け融資は大きく増加しているのに対し、中小企業向けは、景気回復前の水準には依然達していない。ITベンチャーはこのギャップに着目した。

 

ただし、中小企業向け融資は貸し倒れリスクが高い。さらに、ITベンチャーによる融資の利息はかなり高いため、需要が思ったほど伸びていない。

 

 

 

3)キーとなる英文

Now these tech firms are stepping up efforts to mine that data to get into the lending business.

 

4)キーとなる英文の和訳

今ではこれらのIT企業が、自社で蓄積されたデータを活用して融資ビジネスに食い込もうと経営資源を投入している。

 

5)気になる単語・表現

step up 他動詞句 ~を高める、~を加速させる
proxy 名詞 代理
captive 形容詞 捕虜になった;閉じ込められた;とりこになった、魅了された;捕虜、人質;とりこ
captive finance company 名詞 金融子会社
delinquency 名詞 不履行
referral 名詞 委託
origination 名詞 発信
treasure trove 名詞 (知識などの)宝庫

 

(今回ピックアップ英単語)

【delinquency】

今回の記事では、delinquency rate「債務不履行率、デフォルト率」で登場。

  1. (職務などの)怠慢、不履行
  2. 犯罪、非行、過失
  3. 少年非行(juvenile deliquency)

(英英)

bad or criminal behavior, usually of young people

「若者」を対象とすることが多いようです。今回この単語が選ばれたのも、中小企業=若い会社というニュアンスが強いからでしょうか。

(類語)

「犯罪」

crime, offense, felony, guilt

「非行」

misdemeanor, misconduct

 

6)ビジネスのヒント

記事で取り上げられた、融資ビジネスを拡大するITベンチャーは、インテュイット・ペイパル・スクエアの三社。また、ITベンチャーではないものの、運送業大手のUPSもビジネスローンを提供するベンチャー企業と提携して、中小企業向け融資ビジネスに参入するようです。

 

【記事で取り上げられた融資ビジネスを拡大・開始する企業】

  1. インテュイット→会計ソフトの提供
  2. ペイパルスクエア→決済代行
  3. UPS→運送業

 

これらの企業が中小企業向け融資に活用するのが、顧客とそのデータ。例えば、インテュイットは、会計ソフトを通じて得た顧客の財務データから、割り出すようです。各社利用するデータをまとめると、次のようになります。

 

【中小企業向け融資に活用する顧客データ】

  1. インテュイット→会計ソフトを通じて得た顧客の財務データ(平均現金残高・売掛金など)
  2. ペイパル・スクエア→決済サービスを通じて得た顧客の売上入金データ
  3. UPS→運送サービスを通じて得た顧客の運送数量・返品数量などの営業データ

 

これらのデータを使えば、顧客の資金需要だけではなく安全性まで把握することができるのです。顧客のリアルな営業動向がわかるという点で、銀行よりも優っていると言えるかもしれません。

 

外部環境のギャップも、ITベンチャーには有利に働きます。

 

【中小企業向け融資に関する外部環境のギャップ】

景気回復により資金需要が拡大⇔銀行による中小企業向け融資は景気回復前の水準に達せず

 

つまり、資金需要が高まっているにも関わらず、銀行による中小企業向け融資は金融危機前の水準に達していないのです。ちなみに、大企業向け融資は大きく伸びています。

 

【景気後退前後の融資比較】

  1. 中小企業向け→7110億ドルが5990億ドルに約16%減少
  2. 大企業向け→35%増加

※2015年第二四半期と2008年のピーク時の比較

 

銀行が中小企業向け融資に及び腰なのかはわかりませんが、景気回復による資金需要の高まりに対し、銀行は十分応えられないのです。ITベンチャーは、このギャップに着目したのです。

 

UPSを含めたITベンチャーの融資ビジネスをまとめると、次のようになります。

 

【ITベンチャーによる中小企業向け融資ビジネスまとめ】

  1. インテュイット→2013年から融資ビジネスを開始。会計ソフトのクイック・ブックのユーザーが対象。これまで5000案件、総額2億ドルを融資。利息の他に、紹介手数料と発行手数料を徴収する。ネットローン提供企業のオンデック・キャピタル社と提携し、1億ドルのファンドを開設し、融資ビジネスを拡大予定。
  2. ペイパル→アメリカの中小企業に対する一日の平均融資額を100万ドルから200万ドルに拡大。融資上限を、6500ドルまたはペイパルとの平均取引額の8%から、8500ドルまたは15%までに拡大予定。
  3. スクエア→2014年5月から開始。これまで2億2500万ドル以上を融資。一日あたり100万ドル以上に増加。2015年5月には、融資向け資金調達に成功。
  4. UPS→中小企業向けビジネスローンのキャベッジに、資金を必要とする中小企業の顧客を紹介。配送数量・返品数量・営業年数などの顧客データから、融資の可否を判断今後、顧客の許可を得て、提供データを拡大。

 

ペイパルとスクエアは、融資の返済を取引額の一部から控除する方式を取っています。だから、売上の増減により返済を調整できる点が、融資を受ける中小企業にとっての利点です。

 

中小企業向け融資ビジネスは、利息や手数料収入が見込めるだけではなく、顧客の囲い込みという効果も期待できます。

 

ただし、融資ビジネスだけに、デフォルトなどの課題は避けられません。

 

【新興の中小企業向け融資ビジネスの課題】

  1. 中小企業向け融資は貸し倒れリスクが高い
  2. 銀行よりも利息が高いために、需要の高まりが鈍い

1について、銀行などではない金融子会社によるデフォルト率は、2009年第4四半期に7.65%まで拡大したようです。景気動向に変化が起これば、それだけ貸し倒れリスクが高まるのです。ちなみに、銀行による中書企業向け融資のデフォルト率は、4.5%のようです。厳格な融資先調査の結果でしょうか。

 

2について、銀行の優良中小企業向けの利息は5~6%であるのに対し、インテュイットの年間利息は約30%とかなり割高。これだけ高いと、そう簡単に融資を受けるわけにはいきません。逆に、これだけ高くても融資を受ける企業というのは、他のビジネスローンを受けられない危険企業の可能性が高いと言えるでしょう。

 

これらの課題に対し、次のような対策を打っています。

 

【中小企業向け融資の課題への対策】

  1. 貸し倒れリスク→顧客に関するデータを分析することで、優良貸出先を割り出す。融資の返済額を代行した決済分から控除することで、返済の遅延を回避。(決済代行企業の場合)
  2. 利息の高さ→インテュイットは、平均現金残高・売掛金などのデータを活用する新プログラムで、最優良顧客向けの最低利息を8~9%に設定。(融資期間は1年、習慣ベースの返済)

 

要は、顧客の詳しいデータを駆使することで、デフォルト率を下げ、利息を引き下げているのです。

 

会計ソフトや決済代行サービス・運送業は、インフラみたいなサービスであり、プラットフォームと呼べるもの。今回取り上げた事例からわかるのは、企業向けのプラットフォームならば、融資ビジネスへの参入が可能であるということ。これが個人向けプラットフォームならば、リスクの高い個人向けローンも可能になるかもしれません。フェイスブックが、金融事業に進出することも十分あり得るのです。

 

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ITベンチャーが中小企業向け融資ビジネスに着目するのは、外部環境にギャップが存在するからである。景気回復にも関わらず、銀行による中小企業向け融資は金融危機前の水準には依然達していない。大企業向けは大きく増加している。
  2. さらに、自社の持つ顧客の営業データを活用することで、デフォルト率が比較的高い中小企業向け融資の貸し倒れリスクを低減できる。
  3. 融資サービスを提供することで、利息・手数料収入を得られるだけではなく、顧客の囲い込みも可能となる。これも、融資ビジネス参入の狙い。
  4. 課題は、中小企業向け融資の貸し倒れリスクの高さと、銀行よりもかなり高い利息。利息がかなり高いゆえに、需要の伸びの鈍い。
  5. これらの課題に対し、顧客である中小企業の営業データを収集・分析することで、リスクと利息の低減に努める。

 

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

記事で取り上げた三品さんとは、神戸大学経営学部の教授。

面識はないですが、最近三品さんが書かれた書籍を読みました。

利益率向上の伴う成長戦略には、成熟した立地から飛び地に移る必要があるというのが、その持論。

新しい立地は、既存事業の周辺である必要はなく、儲かるかどうかがその選択基準であり、だからこそ飛び地の方がいいようです。

携帯電話の門外漢のアップルがiPhoneを開発したように。

起業・新規事業を考えている人には、とても役立つと思います。

再度読みたいと思った書籍です。

「どうする日本企業」

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

阪神タイガースの9月失速病、今年も発症しました。

この要因はいろいろありますが、一番のベテランへの依存度の高さと若手の低スキルにあるのではないでしょうか。

9月になれば、ベテランも疲れがどっと出てきます。こういう時に、代わりの若手がいればいいのですが、阪神にはいません。

一方の巨人は、不振とはいえ4番を打ったことのある村田を2軍に降ろし、ドラフト1位の高卒ルーキーをスタメンで使うのですから。

一方の阪神は、不振とは言え代わりがいないのでマートンをそのままスタメンで起用。

もうこの差ですよ。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

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