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【917号】ABインベブがSABミラーと合併したいのは、バドライトが売れないから?

Bud Light Beer Tap

 

◎本日のニュース

1)見出し

Light Beer Gets in Touch With Serious Side

 

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2)要約

アメリカでライトビールの売上が冴えず、2007年以降売上減少が続いている。今夏は、ガソリン安の恩恵で、嗜好品の売上増が期待されたが、それでも、大手ビールメーカーのライトビールの多くは売上を落とす結果になった。

 

ライトビールが売れなくなったのは、子供っぽい広告のために、品質が評価されなくなったからである。また、平日から週末に飲用機会が減ったことも影響している。

 

これに対し、大手メーカーは、広告代理店の変更・パッケージの変更・ターゲットの変更により、ライトビールの売上回復を目指している。

 

3)キーとなる英文

But light-beer sales have fallen off a cliff since 2007 and become such a problem that the decline is a significant factor driving a merger boom in the beer industry, including the prospect of a deal between the world’s two biggest brewers: Anheuser-Busch InBev NV and SABMiller PLC.

 

4)キーとなる英文の和訳

しかし、ライトビールの売上は、2007年以降崖から落ちたように減少している。

その衰退が、ビール業界でM&Aブームを引き起こす重要な要因となっている。

その一つとして、世界の二大ビールメーカーであるアンハイザー・ブッシュ・インベブ社とSABミラー社との合併可能性がある。

 

5)気になる単語・表現

get in touch with 自動詞句 ~の実情に通じている、~を理解している
prospect 名詞 見込み、可能性
deal 名詞 取引、契約
offset 他動詞 ~を相殺する;~を埋め合わせる
malaise 名詞 不安感;沈滞;不快感
dismal 形容詞 陰気な;(景気などが)物悲しい;荒涼たる
boon 名詞 恩恵、利益
eventually 副詞 結局は、ついに
give way to 自動詞句 ~に譲歩する;~に身を委ねる
sophomoric 形容詞 (自惚れているが)未熟な、生意気な;(大学・高校の)2年生
punch line 名詞 (冗談などの)急所となる文句、オチ
stoke 他動詞 (火)を起こす;(興奮など)を掻き立てる
disproportionate 形容詞 不釣り合いな;不均衡の
clever 形容詞 巧妙な;うまい

 

(今回ピックアップ英単語)

【prospect】

(英英)

  1. The possibility that something will happen
  2. An idea of what might or will happen in the future
  3. The chances of being successful
  4. A person who is likely to be successful in a competition
  5. A wide view of an area of land

(解説)

英英辞典の意味を見てもわかりますが、概していい意味です。「可能性、見込み」「成功の可能性」で覚えておけばいいでしょう。

最後の「眺め」は「可能性」の実際版とでも言えましょうか。

ちなみに、自動詞・他動詞もあり、「(金・人材などを)探し求める」「~を捜す」という意味。

 

6)ビジネスのヒント

アメリカビール業界では、M&Aがブームのように頻繁に起こっているようです。記事で紹介さえているのは、

 

  1. ハイネケン社→クラフトビールメーカーのラグニタス・ブルーイング社の株式50%を取得
  2. ABインベブ社→世界第二位のSABミラー社に合併提案

 

という2つの事例。前者は、成長市場であるクラフトビール市場への大手ビールメーカーの参入であり、後者は、大手ビールメーカー同士の合併による競争回避・効率化と言えるでしょう。これらのM&Aに、全米でのライトビールの売上が関係しているようです。

 

まず、全米のライトビールのデータについてまとめると、次のようになります。

 

【全米ライトビールのデータ】

  1. ライトビールのシェア:5%(2007年)から31.8%(2014年)に縮小
  2. 全米ライトビールのシェアトップのバドライト:6四半期連続で売上減少
  3. 今年9月5日までの3ヶ月間のトップブランド売上:バドライト3%減、クアーズライト0.7%減、ミラーライト1.8%増
  4. 2007年比のトップブランド出荷量:バドライト13%減、クアーズライト4%増、ミラーライト27%減(ビール全体2%減)

 

要は、ライトビールの売れ行きは悪くなっているのです。3で、直近四半期でミラーライトが売上を伸ばしたのは一時的なもので、2007年からは一直線に売上を減らしています。4に関して、クアーズライトは2007年比で売上を伸ばしているものの、2012年から減少に転じています。トップブランドは総じて売れていないのです。

 

では、なぜアメリカでライトビールが売れなくなったのか?その要因は、主に2つあります。

 

【アメリカでライトビールが売れなくなった要因】

  1. クラフトビールに押されて、消費機会が減ったから
  2. ライトビールの地位が低下したから

 

1について、WSJの記事には象徴的なシーンが紹介されています。それは、24歳の職業セラピストと同い年の金融アドバイザーが、アトランタのパブでビールを飲む場面です。彼らが頼んだのは、ギリシャのハイ5IPAというクラフトビール。ライトビールではないのです。何杯かクラフトビールを飲んでから、バドライトを注文したのです。その金融アドバイザーによると、平日の夜は、味が濃厚でアルコール度数が比較的高いクラフトビールを1・2杯飲むのに対し、週末やスポーツ観戦時には量を飲めるライトビールを飲むようです。

 

つまり、平日の消費はクラフトビールに奪われ、ライトビールは週末の限られた機会に追いやられたのです。これでは、売上数量・金額が減っても不思議ではありません。もちろん、若者のビール離れにより、ビール全体の売上数量減の影響も受けています。

 

2について、ライトビールが登場した当初、ユーモアある広告で「カロリーオフのビールでも楽しい」というイメージを植え付けることにより、ライトビールの需要喚起に成功しました。しかし、そのユーモアが行き過ぎ子供っぽくなると、逆に「ライトビールは大したことがない」「単なるライトビール」という認識に変わり、売れない要因に切り替わりました。ここにクラフトビールが登場し、ライトビールからクラフトビールへのシフトが起きているのでしょう。

 

大手ビールメーカーがライトビールの売上回復を狙って行っている施策をまとめると、次のようになります。

 

【ライトビール復活を狙う各社の対策】

  1. 広告の変更:子供っぽいユーモラスな広告から品質訴求・ソーシャルの広告へ(バドライト)
  2. パッケージ変更:よりシンプル・スポーツイメージのあるパッケージへ(ミラーライト、バドライト)
  3. ターゲットの変更:女性を焦点(ミラークアーズ社)

 

1について、まず、広告担当幹部・広告代理店の変更を、各社行っています。バドライトは、他のビールよりも2倍長く醸造している点をアピールしています。品質訴求することにより、コモディティ化を回避することができます。また、20代の若者が友人とティスティンググラスでバドライトを試飲する広告を流し、バドライトでソーシャルな楽しさを味わえる点を訴えています。これは、ブランドイメージの向上を狙ったもの。

 

2について、ミラーライトは、昔の白地に青いロゴに変更することで、直近四半期の売上数量を増加に転じることに成功しました。バドライトは、NFLのチームロゴを印字することで、NFLファンへ購入を促しています。子供っぽいイメージからの脱却を狙っていると言えるでしょう。

 

3について、これはミラークアーズ社が行っていることで、女性へのマーケティングを強化しています。というのも、女性はライトビール消費の25%しか占めないにも関わらず、ライトビールの売上減少ではそれ以上を占めており、女性のライトビール消費量が大きく減っているからです。女性のライトビール離れの要因は、りんご酒やワイン・リキュールにシフトしたから。もともと飲んでいたのだから、新規顧客を獲得するよりは簡単なはず。ミラークアーズ社はそう考えて、ライトビールから離れた女性にターゲットを絞り込みました。

 

では、ライトビールの衰退とABインベブ・SABミラーの合併問題はどのように関係あるのでしょうか。そのヒントは、全米ビール市場の利益率にあります。全米ビール市場は、世界で最も利益率の高い市場とされています。その市場で売上シェアの大きいのが、売上減少が続くライトビールなのです。しかも、バドライト・ミラーズライトなど各社のライトビールは、全米ビール市場の中でトップブランドなので、売れない中での競争は消耗戦になりかねません。そうなれば、アメリカ市場の誇る利益率が低下する恐れが生じます。ABインベブはアメリカ市場の利益率の低下を何としてでも避けたいために、第二位のライトビールブランドを持つSABミラーに合併を提案し、寡占状態をより強めることで、全米ライトビール市場での競争緩和を目指しているのでしょう。

 

ちなみに、ライトビールが2007年から大きくシェアを落とす一方で、クラフトビールは9%に倍増、輸入ビールは14.1%に微増しています。この背景には、もちろん平日からクラフトビールが飲まれるようになったということがあるのは、間違いありません。

 

それにしても、クラフトビールが平日から飲まれるようになったことには、驚きです。価格が高いだけに、本当のビールだけが好んで飲むものと思っていました。ビール離れした若者が、平日に味わい深いクラフトビールを少量飲むようになったことは、大きな変化です。週末にライトビールなど従来のビールを飲んでくれても、平日が減る分を補えるほどではありません。(だからライトビールは長年売上が減少)日本でも、今後若者がクラフトビールを平日に飲むようになれば、ビール業界の光景も大きく変わることでしょう。

 

Bud Light

Coors Light

Millers Lite

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. アメリカでライトビールの売上減少が止まらないのは、クラフトビールに押されて消費機会が減少したからである。また、子供っぽい広告のために、ライトビールの地位が低下したことも、大きく影響している。
  2. そのため、各社は広告の変更・パッケージの変更・ターゲットの変更など、ライトビールの売上回復を狙った施策を実施している。
  3. その中で、世界ビール1位のABインベブ社が同2位のSABミラー社に合併提案したのは、世界で最も利益率の高いアメリカ市場が儲からなくなる恐れを回避するためである。
  4. ライトビールのシェアは依然大きく、各社トップブランドを持つので、アメリカのライトビール競争は今後激化し、利益率が低下する恐れがある。
  5. トップと2位が合併することにより、競争が緩和されることにより、利益率の低下を回避できる。
  6. 特筆すべきは、ビール離れの若者が、平日にクラフトビールを飲むようになったことである。

 

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

ここ何年かノートは無印の100円ノートを使っていたのですが、120円に値上げされたので、違うノートを探すことにしました。

すると、100均でもなかなか書きやすいノートがあることを発見。

キャンドゥ系の100均ストアで販売されているリングノートです。

紙質は、コクヨのキャンパスノートに近いのではないでしょうか。

しかも、行間がA罫で書きやすく、目盛が付いているので線も引きやすい。

当分、このノートを使いたいと思います。

ただ、円安傾向は収まりそうにないので、このノートもいずれ薄くなるんでしょうね。

文運堂 Flower Hill

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

今年の阪神タイガースは全日程が終了しました。

何とか4位転落は免れたものの、結局4番・5番が打てずに終わったというのが今年の総括でしょうか。

マートン選手は退団が濃厚のようですが、他に補強しないと戦力ダウンは免れませんね。

さぁ、監督は誰になるのでしょうか。

 

高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

 

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