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【918号】ネット版コストコのジェット・ドットコムの会員制撤退からわかる、消費者・販売者のニーズとは?

jet.com invitation

 

◎本日のニュース

1)見出し

Shopping Site Jet.com Abandons $50 Membership Fee

 

 

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2)要約

ネット版コストコとして将来を有望視されていたジェット・ドットコム社が、ビジネスモデルの根幹となる優良会員制を廃止することになった。サービス開始してまだ3ヶ月しか経過しておらず、驚きの方針転換である。

 

ジェット・ドットコムは、会費を唯一の利益の源泉として、登録小売店の手数料分を値下げすることで、アマゾン・ドット・コムよりも最大15%安いことをウリにしていた。実店舗小売で収益好調なコストコと同様のモデルにより、アマゾンの有力な競合になりうるとして有望視されていた。

 

有料会員制を止めることで、競合サイトとの価格差は縮まるものの、4~5%は安く販売するとしている。ビジネスモデル転換の背景には、会員制を望まない仕入業者の存在や有料会員獲得の苦戦などがあるとされる。

 

3)キーとなる英文

Jet.com Inc. has quickly abandoned a pillar of the business model behind its new discount shopping site, a surprising turnabout for what many industry watchers considered the most promising challenger to Amazon.com Inc. in years.

 

4)キーとなる英文の和訳

ジェット・ドットコム社は、新たなディスカウント通販サイトを支えるビジネスモデルの根幹を早くも廃止することになった。

この方針転換は、多くの業界ウォッチャーが数年でアマゾン・ドットコムの最も有力な挑戦者と考えられていただけに、驚きである。

 

5)気になる単語・表現

pillar 名詞 支柱;中心的存在;要所
viability 名詞 実行可能性
be concerned about 他動詞句 ~を気にかける、~を心配する
liken 他動詞 ~を例える
merchant 名詞 小売商人
perceive 他動詞 ~を知覚する;~を理解する

 

(今回ピックアップ英単語)

おやすみ

 

6)ビジネスのヒント

ジェット・ドットコムは、日経新聞でも取り上げられたほどですから、アメリカIT業界ではかなり注目されているようです。

米ジェット、アマゾンに挑む 完全会員制×ECサイト

 

 

そのサービス内容など概要は以下の通りです。

 

【ジェット・ドットコムとは?】

  1. 有料会員制の激安通販サイト
  2. 会費のみを収益源として、販売手数料などを値下げの源泉としている
  3. モール型で参加小売店が実際に販売
  4. 2015年7月に公式オープン
  5. ゴールドマン・サックス系とグーグル系のVC(ベンチャーキャピタル)から、約2億5000万ドルを調達済み
  6. アマゾンよりも最大15%安いことが一番のウリ
  7. 輸送費削減のため、注文をまとめることで値引き
  8. 3ヶ月~1年間の間で、会費無料のトライアル期間を設定することで集客・認知拡大を計る

 

ビジネスモデルはコストコと同じで、有料の会費を収益源とし、仕入原価と販売価格との差額や販売手数料を価格に反映することで、低価格を実現しています。実店舗小売のコストコで大成功したビジネスモデルをネット上で展開するので、5のように多額の資金調達に成功するほど有望視されています。今は赤字ですが、数年後にはアマゾンの有力な競合になるとされています。

 

そのジェット・ドットコムが、ビジネスモデルの大転換を行うようです。それは、1の有料会員制を止めるということです。しかし、2のように、会費は唯一の利益源のはず。では、なぜ有料会員制を廃止することになったのでしょうか。

 

【ジェット・ドットコムが有料会員制を止めた理由】

  1. 参加小売店が会費のないサイトを要望しているから
  2. 会費を実際に支払ってくれるユーザー獲得に苦戦しているから

 

1は表向きの理由、2は本当の理由かもしれません。1について、記事によるジェット・ドットコムに参加する小売店の多くは、会費のないサイトを望んでいるようです。その背景には、各社集客が思ったほど出来ていないからでしょう。集客力が弱ければ、参加料を支払ってまでジェット・ドットコムに参加する意味はありません。また、値下げを嫌う小売店・仕入業者の存在により、品揃えが思うように増えないというのも、理由と言えます。競合よりも価格を下げられるのは、会費のお陰。だから、間接的に会費制を嫌っているのです。

 

2について、3ヶ月から1年間の間で、会費無料のトライアル期間を設けたものの、その後実際に会費を支払うのはごく少数のユーザーのみのようです。バスや地下鉄など人が集まる場所で積極的なプロモーションを行っているにもかかわらず、有料会員が増えないのですから、ユーザー獲得に相当苦戦しているのは間違いありません。

 

気になるのが、今後どのように利益を出すかについて。この点はあまり明らかにされていません。会費が無くなった分、販売手数料で利益を出す必要があるので、値引率が幾分マイルドになるようです。競合サイトよりも、少なくとも4~5%は安く販売すると、ジェット・ドットコムの創業者兼CEOは発表しています。恐らく、5%前後安ければ、ネット通販ユーザーは安いサイトにシフトすると、踏んでいるのでしょう。どうでしょうか?

 

ジェット・ドットコムがユーザー獲得に苦戦する理由は、価格以外にありそうです。

 

【ジェット・ドットコムがユーザー獲得に苦戦する理由】

価格は確かに低いが、品揃えでアマゾンに劣るから

 

要は、価格よりも品揃えの問題です。欲しいものがなければ、いくら単品比較で値段が安くても、利用するわけがありません。さらに、年会費として50ドルも支払うわけですから、買いたい物が少なければ、会費の50ドル分ペイしにくくなります。これが最大の理由でしょう。記事によると、実際にアマゾンのベストセラー商品のうち、両社で販売している商品の73%は、ジェット・ドットコムの方が安いのですが、ジェット・ドットコムは31%しか販売していないようです。これでは、50ドル価値があるとは言えません。

 

では、なぜ品揃えが広がらないのか?それは、参加小売店や大手チェーンの反発・離反があるからです。

 

【ジェット・ドットコム社に反発・離反する小売業界】

  1. 高級ブランドなどは、値下げ販売を嫌い、販売を抑制
  2. 大手チェーンは、無断のアフィリエイト販売したことに反発し、販売を拒否

 

1・2の共通点は、各社とも値下げ販売を嫌ったということです。値下げによりブランド価値の毀損を嫌気したのでしょう。ジェットで販売した結果、今後値崩れするリスクもありますから。これは、最近紹介したように、多くのメーカーが直販サイト開設に興味を示していることと関係あるのではないでしょうか。つまり、収益の最大化よりも、価格決定権を確保することで、長期的なブランド価値の向上に注力しているのです。ならば、ジェット・ドットコムのような激安サイトは、できるだけ利用したくないに違いありません。

 

つまりは、ジェット・ドットコムのビジネスモデルは、見込み客からも仕入先からも見放されたということです。だから、ビジネスモデルの転換を余儀なくされたのでしょう。ここからわかる、消費者と製造者・販売者のニーズをまとめると、次のようになります。

 

【ジェット・ドットコムのビジネスモデル転換からわかる消費者・製造者・販売者のニーズ】

(消費者)

単品の安さよりもトータルの割安さ・利便性・楽しさを重視

(製造者・販売者)

値下げによる大量販売よりもブランド価値・利益率の向上を重視

 

消費者について、単品の安さではアマゾンよりもジェット・ドットコムに分があります。しかし、品揃えで劣っているために、50ドルの年会費を支払う価値がないと判断されたのでしょう、会費を支払ってまで会員になる人は少ないのです。トータルの割安さでは、アマゾンの方が優っているからです。一方で、同じ有料会員制のアマゾンプライムは、定着したサービスになっているのは、消費者は、年会費を払ってでも利便性や楽しさを求めるからです。単なる安さだけでは、消費者は満足しないのです。

 

販売者・製造者は、先述のように、値下げによる大量販売よりも、ブランド価値や利益率の向上に興味があるようです。だから、値引き販売するジェット・ドットコムを避けるのです。

 

将来性が有望視されていた(過去形?)ジェット・ドットコムですが、やはり安さだけでは巨人のアマゾンには敵わないのでしょう。価格以外の付加価値が必要ということです。

 

 

 

 

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ジェット・ドットコムが有料会員制を廃止することでビジネスモデルを転換したのは、消費者・販売者からそっぽを向かれたからではないか。
  2. 単品は安いものの、品揃えの乏しいジェット・ドットコムは、消費者を満足させられなかったから、有料会員の獲得に苦戦した。消費者は、トータルの安さだけではなく、利便性・楽しさを求めているのだろう。
  3. 販売者は、値下げによるブランド価値の毀損を懸念したからこそ、ジェット・ドットコムから離反したのだろう。値下げによる大量販売よりも、ブランド価値・利益率の向上を重視しているからだろう。
  4. 同様の有料会員制のアマゾンプライムの会員拡大を見れば、価格だけではなく利便性や楽しさを重視する消費者ニーズを読み取ることができる。
  5. 価格以外の付加価値がないと、大手に敵わないのではないか。

 

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

ここ何年かノートは無印の100円ノートを使っていたのですが、120円に値上げされたので、違うノートを探すことにしました。

すると、100均でもなかなか書きやすいノートがあることを発見。

キャンドゥ系の100均ストアで販売されているリングノートです。

紙質は、コクヨのキャンパスノートに近いのではないでしょうか。

しかも、行間がA罫で書きやすく、目盛が付いているので線も引きやすい。

当分、このノートを使いたいと思います。

ただ、円安傾向は収まりそうにないので、このノートもいずれ薄くなるんでしょうね。

文運堂 Flower Hill

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

今日は、カフェから。

キーズカフェというセルフカフェなのですが、もうサービスがなっていません。

笑顔なし(少し言い過ぎかな)で、コーヒー一杯260円。

だからか、全く混んでいませんでした。

まぁ、200円程度のコーヒーでスマイルを求める私も私ですが…

 

高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

 

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