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【933号】ABインベブの排他的販促プログラムからわかる、アメリカビール市場の競争環境とは?

Bud Light Beer Tap

 

 

◎本日のニュース

1)見出し

Craft Brewers Take Issue With AB InBev Distribution Plan

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2)要約

アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)社の新しい排他的インセンティブプログラムが、ビール業界に波紋を広げている。特に、その悪影響を懸念するのが、クラフトビールメーカーである。

 

そのプログラムの内容は、バドワイザーやバドライトなどABインベブのビール販売に力を入れる卸に報酬を支払うもの。ただし、単にABインベブの販売比率を高めるだけではなく、扱うクラフトビールの生産量や販売地区にも制限が付く。この結果、大規模クラフトビールは、小売店での売場確保がより難しくなる。

 

ただし、過去にも同様のインセンティブプログラムを導入したが、クラフトビールのシェア大幅拡大という結果で終わった。また、縛りがきついだけに、プログラムへの参加率が低迷する可能性もある。

 

3)キーとなる英文

Anheuser-Busch InBev NV’s new plan to reverse declining volumes in the U.S.—by rewarding distributors who focus on brands like Budweiser and Bud Light—is raising alarm among craft brewers who worry it will make it harder to get shelf space for their IPAs and porters.

 

4)キーとなる英文の和訳

アンハイザー・ブッシュ・インベブ社が導入した新たな計画は、全米市場で減少する販売数量のテコ入れを目的とされているが、バドワイザーやバドライトなどのブランドに力を入れる卸に報酬を与えるというものである。

その計画によって、クラフトビールメーカーの間で懸念が生じている。

その懸念とは、インディアペールエールやポーターの売場確保がより難しくなる恐れがあるというものである。

 

5)気になる単語・表現

reimbursement 名詞 払い戻し
be eligible to V 形容詞句 ~に適当な、望ましい
the bulk of 名詞句 ~の大部分
qualify for 自動詞句 ~の資格を得る
pillar 名詞 支柱;中心的存在;要所
dissuade A from Ving 他動詞句 Aに説得して~することを思いとどまらせる
turn to 他動詞句 ~に頼る;~を参照する;(仕事など)に取り掛かる

 

(今回ピックアップ英単語)

【eligible】

(英英)

1)be able to have or do it because they have the right qualifications, are the right age, etc

(例文)

Only those over 70 are eligible for the special payment.

When are you eligible to vote in your country?

2) a eligible young man or woman is thought to be a good choice as a husband/wife , usually because they are rich or attractive.

 

(意味)

1)(法的に)適格の;(採用・選択などに)値する、適任の;望ましい

2)(職務・地などに)ふさわしい;(夫・妻として)適当な、望ましい

 

(ポイント)

よく見かけるが、覚えにくい単語の筆頭。「~に適している」という意味だが、法的など客観的な場合と主観的な場合がある。

 

6)ビジネスのヒント

ABインベブ社の新インセンティブプログラムが、ビール業界で波紋を起こしているようです。このプログラムの目的は明確で、

 

全米市場での販売数量をテコ入れするため

 

です。この背景には、ABインベブの全米市場での販売不振があります。

 

【アメリカで売れ行きが鈍るABインベブのビール】

  1. 生産量は1100万バレル減少
  2. 市場シェアは49%から45%に縮小

※2008年比較

 

2008年と言えば、インベブ社とアンハイザー・ブッシュ社が合併した年。記事には全米市場でのシェアの推移が折れ線ブラフで掲載されているのですが、2008年から明確に縮小に転じています。景気後退がそのきっかけですが、景気回復後もシェアが回復することはありません。

 

全米市場での販売増を目指した新インセンティブプログラム。その内容は、以下のとおり。

 

【アンハイザー・ブッシュ・インベブが導入する新インセンティブプログラム】

  1. 対象は独立系卸企業
  2. 販売するビールの98%がABインベブが持つブランドならば、リベートを支払う
  3. 95%がABインベブなら、販促費の半分をABインベブが負担
  4. 年間で最大150万ドル、参加卸一社あたり平均20万ドルの支払い予定

 

要は、販売するビールのうちほぼすべてを、バドワイザーやバドライトなどABインベブの持つビールブランドにすれば、リベートを支払いますよ、というもの。日本でもよくある販促キャンペーンなのですが、90%以上の比率を求めるというのが、結構過激とも言えます。他社ブランドは売るなという印象を与えるからです。

 

ただ、新プログラムは、これだけに留まりません。クラフトビール販売への制限を設けている点は、注目に値します。

 

【ABインベブの新インセンティブプログラムが設定するクラフトビール販売制限】

  1. 卸が扱うクラフトビールの生産量は、年間5万バレル以下
  2. または販売する州は1つに限定
  3. 1または2の条件は、プログラム参加に必須

 

クラフトビールの販売制限からわかるのは、クラフトビールの販売を縮小して、その代わりにABインベブのビールを売ってくれ、というABインベブの主張です。逆に、ABインベブは、それだけクラフトビールを脅威に感じてるとも言えるでしょう。

 

このあたりの事情は、アメリカビール流通を知らなければよく理解できません。アメリカでのビール流通事情を簡潔にまとめると、次のようになります。

 

【アメリカビール流通の概要】

  1. 流通経路は、メーカー→卸→小売店の三層構造
  2. 全国規模の卸の大部分は、ビール上位のABインベブまたはミラークアーズの特約店

 

全国規模の卸は、ABインベブ系かミラークアーズ系のどちらかなので、新インセンティブプログラムの対象は、ABインベブ系に限定されます。つまり、このプログラムでABインベブが目指すのは、ABインベブ・ミラークアーズ以外のビールメーカー、つまり大規模クラフトビールメーカーの販売量を減らし、その分をABインベブのビールに切り替えるというものです。この場合の競合は、二強のミラークアーズ社ではなく、大規模クラフトビールメーカーなのです。

 

それだけABインベブが脅威を抱くクラフトビール。シェアも大きく伸びています。

 

【全米ビール市場におけるクラフトビールのシェア】

  1. 出荷量は6%に増加
  2. シェアは3倍以上の1%に

※2005年比

 

ABインベブの施策は、この新プログラムだけではなく、世界ビール大手のSABミラー社・ビール卸・クラフトビールメーカーの買収にも及び、ビール市場の独占を狙っているようにも思えます。だから、新プログラムで狙い撃ちされたクラフトビールメーカーのみならず、議会からもその独占状況を懸念する声が広がっています。

 

これに対し、ABインベブは、プログラムの参加は任意であり、クラフトビールメーカーの大部分は、年間生産量1.5万バレル未満なので、販売は可能と反論しています。しかし、クラフトビールの販売を伸ばすと、1.5万バレルを超えることにもなり、卸にクラフトビールの販売動機を小さくさせる恐れがあると、クラフトビール側も反論しています。

 

重要な点は、世界最大手であり、全米市場でもシェア1位のABインベブが、2位のミラークアーズではなくクラフトビールを競合視している点。全国卸が2色に色分けされているので、恐らくABインベブとミラークアーズのシェアはそう変化しないのでしょう。また、顧客も住み分けされているのかもしれません。一方で、クラフトビールは、大手のABインベブやミラークアーズから顧客を奪うことで、シェアを大きく伸ばしているのです。ABインベブは、販売数量減の犯人をシェアで格下のクラフトビールとし、新インセンティブプログラムで、クラフトビールからの顧客奪還を目指しているのです。

 

ちなみに、1997年にも同様の小規模ブランド対策のインセンティブプログラム(100%シェア・オブ・マインド)を行いましたが、結果は失敗。逆に、クラフトビールの台頭を招くことになったようです。その後も、インセンティブプログラムを導入するも、参加率が40%弱と低迷し、失敗。今回の新プログラムでは、参加率の倍増を狙っているようです。

 

指名買いの起こるクラフトビールと言えども、近くの小売店で売っていなければ、わざわざ遠方まで買いに行く商品ではありません。だから、クラフトビールメーカーは、ABインベブの新プログラムで、売場を失うことを懸念しているのです。しかし、今ではネットでケース買いができるのも事実。さらに、1997年の小規模ビールメーカー締め出し策の失敗もあります。そう考えると、ABインベブの力づくの新インセンティブプログラムは、消費者ニーズとはかけ離れているため、失敗する可能性も高いと言えるでしょうか。

 

それにしても、シェア1位の企業が、シェア2位ではなく、成長率は高いもののシェア下位を競合視するとは驚きです。それだけ、全米のビール市場において、クラフトビールの勢いが強いのでしょう。嗜好品のビールで、味で差別化したクラフトビールが成功したということは、別の嗜好品でも”下克上”が起こる可能性は十分あり得ると言えるのではないでしょうか。

 

 

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ABインベブが導入する新インセンティブプログラムは、全米市場で販売数量が落ち込む自社ブランドの販売テコ入れが目的。
  2. ただし、プログラム対象の卸のクラフトビール販売にも制限を付け、小規模または販売州を1つに限定している。
  3. その目論見は、シェアを大きく拡大している大規模クラフトビールを競合視し、奪われた顧客を奪還することである。
  4. 全米シェア1位のABインベブが、成長率は高いもののシェア下位のクラフトビールを敵視するというのは、驚きである。
  5. 逆に言えば、ビールのような嗜好品では、差別化に成功すれば下克上が可能ということになるだろうか。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

コストコで買ったゆずポン酢が、最高によかった。

これまでは、ミツカンの業務用ゆずポン酢を使っていたのですが、今回は少し割高の寺岡の牡蠣だし入りゆずポン酢を購入。

割高とは言っても、さすがコストコだけあって、家庭用のゆずポン酢よりは割安ですよ。

瓶入りで高級感のあるデザインは、開封すると、ゆずの強烈な香りに襲われます。

どんだけゆず入れるねんと、思うほどで、その香りを嗅ぐだけで、幸せな気分になるほど。

水炊きの後の雑炊に少し垂らすと、別の料理になったかと思うほどの美味しさでした。

家庭用もあるようなので、ゆず好きの人は是非。

寺岡家の牡蠣だし柚子ぽんず

楽天市場でも売っていますよ。

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

来年の税制改正がだいぶまとまってきましたが、結局配偶者控除の廃止・縮小は先送りのようですね。

人手不足がすさまじいというのに、何だかチグハグ感が否めません。

主婦の選挙手伝いに悪影響があるからというのが政治家の本音のようですが、国全体の課題解決よりも重要ということでしょうか。

久しぶりに、ガッカリしましたよ。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

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