【937号】ネットに接続されたスマート玩具、実は危険？

Decorating for Christmas!

Charles Rodstrom

◎本日のニュース

1)見出し

Talking Toys Are Getting Smarter: Should We Be Worried?

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2)要約

ネットにつながって会話を楽しむ玩具、ハローバービーは、メディアで酷評されている。特に、子供の創造性やセキュリティーが損なわれるのではないか、と懸念されている。

ネット接続されて子供と会話ができる玩具は、スマート玩具と呼ばれる。録音された子供の超えを、wifi経由でクラウドに送信・分析し、子供の言葉に応える。創造性の問題は、回答する技術に依存する。メモリーされた限られた内容が回答される場合は、逆に創意工夫する必要性が生じるが、AIによる回答するタイプは、会話するだけで楽しめるので、創造性が損なわれる恐れがある。

セキュリーの問題とは、クラウドに収集・蓄積された個人データの漏洩懸念である。子供のプライバシーは法律で最優先に守られているため、漏洩だけではなく売込みに利用される恐れもある。また、企業のセキュリティーに対する姿勢にも注意が必要である。

3）キーとなる英文

Internet-connected talking dolls like Hello Barbie that can actually converse are bewitching kids but unsettling parents. Are they really the menace critics have made them out to be?

4）キーとなる英文の和訳

ハローバービーのようなネットにつながった会話する人形は、実際に会話することができる。

だから、子供を魅了しているが、逆に親を不安にさせている。

それは本当に批判されていりょうに脅威なのか？

5）気になる単語・表現

bewitch	他動詞	～を魅惑する；～に魔法をかける
unsettle	他動詞	～を乱す；～を不安定にする
menace	名詞	脅威；厄介者
make A out to be B	他動詞句	AをBのように言う
ecstatic	形容詞	有頂天の、熱狂的な；恍惚の、夢中の
stifle	他動詞	～の息を止める
supplant	他動詞	～に取って代わる
assail	他動詞	～を非難する
blabbermouth	名詞	しゃべり屋
hand-wringing	名詞	手を揉み絞ること；心配、不安
trigger	他動詞	～を引く；～を発明する
draw on	自動詞句	～を当てにする
have a way to go	他動詞句	改善する必要がある
hinder	他動詞	～を妨げる
finite	形容詞	限定された［ふぁイナイト］
albeit	接続詞	にもかかわらず
setup	名詞	装備
chime	自動詞	調和する
extol	他動詞	激賞する
repertoire	名詞	レパートリー
swivel	自動詞	旋回する、回転する
jolly	形容詞	楽しい
explicitly	副詞	明白に
vulnerability	名詞	傷つきやすさ
snippet	名詞	断片
onerous	形容詞	（任務などが）わずらわしい
abuse	名詞	不当な扱い、虐待；悪用

（今回ピックアップ英単語）

【vulnerable】

(意味)

「（人・体などが）傷つきやすい、（病気などに）かかりやすい」「攻撃されやすい」「（批判・非難などを）受けやすい；（誘惑などに）負けやすい」

（英英）

weak and easily hurt phisically or emotionally

（専門用語）

脆弱（化学など）、脆弱性（生命）

（その他）

WSJ頻出単語の1つだが、個人的に覚えにくさも格別。「弱い」というニュアンスが入ることをまず頭に叩き込む。「病気にかかりやすい」とは、まさに今の私のことかもしれない。専門用語の「脆弱」を覚えるのもいいかもしれない。

6)ビジネスのヒント

今日は、テック（IT）欄のパーソナルテックから。IT関連ニュースは、すぐさま日本語化されネットに拡散されるので、メルマガでは余り取り上げないのですが、今回はおもちゃ（玩具）というニッチな商品がテーマなので、採用しました。玩具業界にも、ITの波は確実に及んでいます。

記事で取り上げられたスマート玩具（スマートトイ）とは、

ネットに接続されている
会話を楽しめる

人形のこと。子供が話しかけると、その言葉・質問に答えてくれるというものです。記事で紹介されている具体的な玩具は、ハローバービー、マイ・フレンド・カイラ、ディノ、ジボ。子供にとっては、双方向で楽しめるので魅力的なおもちゃなのですが、一方で親にとっては不安なおもちゃでもあります。

【親がスマート玩具を不安視する理由】

子供の創造性を抑制・損なう恐れがあるから
遊びを通じて蓄積された個人情報が流出する恐れがあるから（セキュリティ懸念）

1に関して、スマート玩具と遊ぶ時間が増えれば、逆に自由に遊ぶ時間が減ることになります。友人との交流も減るでしょう。その結果、遊びを作るという創造性や、人間関係を組み立てる社交性を損なう恐れが出てきます。商業の子供への影響を懸念する意見（圧力）団体の言う「創造性」「幸福」への脅威です。

2に関して、これはネットに接続されたあらゆるIT機器に共通するセキュリティの問題。スマート玩具はネットに接続され、子供の言葉をクラウドに収集・蓄積します。そのデータが漏洩すれば、子供の個人情報が流出する恐れがあります。アメリカでは、子供のプライバシーを最優先に保護する法律があるので、親は心配するわけです。

しかし、これらの心配事がすべてのスマート玩具に共通するわけではありません。実際、スマート玩具を販売する企業は、工夫を講じることによって、これらの心配の払拭に取り組んでいます。

【スマート玩具に関する親の不安は払拭できるか】

創造性の問題→使用される技術に依存する
セキュリティ問題→クラウドの管理方法・企業姿勢に依存する

1に関して、子供の発する言葉への返答にどのような技術を使うかに依ります。例えば、ハローバービーのように、限られた会話データの中から選ぶタイプの場合は、会話が単調になり、すぐに飽きられる可能性が高くなります。だから、逆に創意工夫をする必要性が生じます。一方で、ディノのようにAIを活用するタイプの場合は、よりオープンな会話を楽しめるので、話しかけるだけで創意工夫する余地は小さくなります。皮肉にも、技術的に劣っている方が、子供の創造性にはプラスに働くようです。

2に関して、セキュリティ懸念が大きく報じられたのは、ハローバービーとマイ・フレンド・カイラ。クラウドに蓄積された個人情報が流出する恐れがあるとのこと。これに対して、カイラは、個人情報の蓄積は行っておらず、スマホアプリを通じてネットから回答を探しているだけと反論しています。

また、子供が会話の中で氏名や住所などの個人を特定できる内容を発した場合も、それをクラウドに記録する場合問題になります。それは、アメリカの法律では、子供のプライバシーに関して最大限保護しているからです。13歳未満の子供の個人情報は、親の明白な了承なしに収集することはできません。これに触れる恐れがあります。これに対し、ハローバービーを販売するトイトーク社は、子供が個人情報を発した場合は、クラウドから消去すると回答しています。問題は、これがどの程度の精度で実行されるかになります。

さらに、親にとっての最重要事項は、子供の情報を扱う企業のセキュリティに対する姿勢。セキュリティ問題に真剣に取り組み、問題が生じた時に迅速に開示してくれるのか、という企業に対する信頼の問題です。これをチェックする一番有効な方法は、安全なパスワードの選択や頻繁なパスワード変更を、ユーザーに繰り返しお願いしているかどうかを見ることです。これをしていなければ、セキュリティに対して真面目に取り組んでいるとは言えません。

スマホを筆頭にネットに接続された端末・機器に、セキュリティ問題はつきものと言っていいかもしれません。端末からの流出を防ぐには、信頼できるアンチウイルスソフトを利用するしかないでしょう。ただし、アンチウイルスソフトをインストールして使っている人がどれだけいるかは、かなり疑問。個人に販売するよりも、端末メーカーや通信キャリアに販売してインストールしたスマホを売ってもらった方がいいかもしれません。安心・安全を重視する日本人ならば、少々お金が掛かっても通信端末のウィルス感染は回避したいもの。スマホに限らず、アンチウイルスソフトをインストールした端末が今後増えるかもしれません。逆に、ソフト関連企業にとっては、ビジネスチャンスでもあります。

子供の創造性も、重要な問題。幼児期の教育が、のちのちの知能に影響を及ぼすことも十分考えられるからです。知的玩具のニーズは、今後高まること必至でしょう。一方で、通信技術・ITが今後さらに発展すれば、スマート玩具の価格破壊が起こるの間違いありません。つまり、子供の創造性を優先して育みたい親は、少々お金が掛かっても知的玩具を購入し、一方で安く育児を済ませたい親は、値下がりしたスマート玩具に頼ることになるのではないでしょうか。ビジネスとしてより面白いのは、より単価の高い知的玩具。世間がデジタル化・スマート化すればするほど、子供の世界ではアナログ化・シンプル化するのかもしれません。

個人的には、おもちゃまでスマート化・IoT化するのは、どうかと思います。どうせ大きくなれば、嫌でもスマホを使わざるを得なくなるのですから。せめて子供の間だけでも、必要最小限のデジタルで済ませてあげたい。こういうニーズは、ネットが普及すればするほど、強くなるのではないでしょうか。

［記事で紹介されたスマート玩具］

Hello Barbie

（youtube）www.youtube.com/watch?v=RJMvmVCwoNM

Dino

My Friend Cayla

Jibo(玩具というよりもロボット)

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《今回のヒントのまとめ》

スマート玩具とは、ネットに接続されて会話を楽しめる人形。子供にとっては魅力的だが、親にとっては不安の種でもある。
一つ目の不安は、子供の創造性を損なう恐れである。人形とだけ会話すれば、創意工夫の余地が小さくなる。ただし、人形の回答技術が低ければ、逆に創意工夫の余地が生まれる。
二つ目は、セキュリティ懸念である。会話の内容は、ネット上のクラウドに収集・蓄積される。子供が不用意に個人情報を発すれば、プライバシー侵害の恐れが出てくる。また、クラウドに蓄積された情報漏洩の懸念もある。プライバシーに関しては、個人を特定できる情報を消去すればいい。情報漏洩に関しては、企業姿勢が最重要の問題である。
ネットに接続された端末は、セキュリティの問題を回避できない。だから、子供の玩具ぐらいは、オフラインの方がいいかもしれない。
創造性を最優先すれば、知的玩具の方がいい。一方で、通信技術・ITが発展すれば、スマート玩具もスマホ同様に価格が下落する可能性が高い。創造性を重視する親は、価格の高い知的玩具を購入し、低コストで育児を済ませたい親は、スマート玩具に頼るようになるかもしれない。

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