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【945号】ウォルマート・ストアーズ社が全米市場で大規模リストラを行う理由とは?

Wal-Mart

◎本日のニュース

1)見出し

Wal-Mart Makes Rare Retreat on Home Turf

 

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2)要約

ウォルマート・ストアーズ社は、店舗増による売上拡大を目指していた米国市場で150店以上の店舗を閉鎖している。この背景には、米国市場での売上増の鈍化とネットの急速なシフトがある。

 

閉鎖店舗の大半は、2011年に初出店した小型業態であり、このリストラにより小型業態から撤退する。売場面積が小さいために、粗利益率の高い商材を多く販売できず、収益性が低かったからだ。また、スーパーセンター業態と同等の低価格にできなかったことが、来店客の期待に添えなかったことも大きい。

 

昨年12月の全米小売売上は、年末商戦がプラスだったにもかかわらず、前年割れであった。ただし、雇用改善が進むなか、今年も内需がアメリカ経済を牽引すると予測されている。

 

3)キーとなる英文

Wal-Mart is closing more than 150 stores in the U.S., a rare retreat for the behemoth on its home turf, capping what has been a difficult year for retailers as shoppers slowed their spending pace and accelerated their shift to the Internet.

 

4)キーとなる英文の和訳

ウォルマートは、米国で150店舗以上の閉鎖を進めている。

この巨大企業にとって、本国での縮小は珍しいことである。

このリストラにより、小売業界が苦しんだ年度を締めくくろうとしている。

その背景には、買い物客が消費を渋り、ネット通販へのシフトを加速していることがある。

 

5)気になる単語・表現

turf 名詞 縄張り;芝土;得意分野
behemoth 名詞 ベヘモット(巨獣);巨大で力があり危険なもの
cap 他動詞 ~に蓋をする
blow 名詞 打撃;精神的打撃
blanket 他動詞 ~を覆う
retrenchment 名詞 削減、切り詰め

 

(今回ピックアップ英単語)

おやすみ

 

6)ビジネスのヒント

ウォルマート・ストアーズ社が、米国市場で大量店舗閉鎖に踏み切るようです。実際には、現在進行中であり、1月末で終わる今期で予定の154店舗全部を閉鎖する。このニュースが注目に値するのは、ウォルマートの従来の方針とは異なるから。

 

【ウォルマートの従来の店舗開発方針】

  1. 米国市場→スクラップビルドは行うものの、店舗増による売上拡大を目指す
  2. グローバル市場→不採算の先進国市場からの撤退はあるものの、新興国市場を中心に店舗拡大を目指す

 

米国市場においては、店舗増による売上拡大路線から採算重視路線に転換したということになります。このような方針転換に踏み切った要因をまとめると、次のようになります。

 

【ウォルマートが米国市場において採算重視路線に転換した要因】

  1. 小型業態・スーパーセンターなど実店舗売上の伸び率が鈍化しているから
  2. 消費が実店舗からネットに急速にシフトしているから
  3. 大型店・小型店・ネットへの投資により利益が大きく圧迫されたから

 

1・2について、1ドルショップなどより利便性が高い立地で低価格で日用品・食料品を販売する小売企業に対抗するために、ウォルマート・エキスプレスという小型フォーマットを開発しましたが、これが失敗。さらに、ドル箱だったスーパーセンターの売上増加率も鈍化し、実店舗全体が渋い状態になりました。

 

2について、1の背景には、もちろん消費の実店舗からネットへのシフトがあります。

 

3について、ネットへシフトしている以上、ネットへの投資を拡大させざるをえません。一方で、1ドルショップやドラッグストアに対抗するために、ウォルマート・エキスプレスを拡大するという長期的な目標があります。これらの投資を支えるのが、ドル箱のスーパーセンター業態。これら3業態への投資を行ったところ、予想したほど収益が向上せず、利益が圧迫。だから、採算重視に転換したのです。

 

2011年に長期的な売上拡大のために初出店したエキスプレス業態。この小型業態が失敗したのは、意外にシンプルです。

 

【ウォルマート・エキスプレスが失敗した理由】

  1. 売り場面積が小さいために、粗利益の高い商材を売るスペースを確保できなかったため
  2. ドラッグストア並の価格を設定したものの、スーパーセンター並の低価格を期待した来店客が失望したから

 

1について、小型店だけに、売り場面積はスーパーセンターのような大型店よりもずっと小さくなります。一方で、ウォルマートの高収益を支えていたのが、衣類や家電などの粗利益の高い商材。エキスプレスでは、スペース上これら収益商材の売場が限られるわけです。よって、スーパーセンターほどの高収益は得られないことになります。

 

2について、利益が期待はずれでも、売上を確保できればいいのですが、ここでも誤算が生じました。来店客は、スーパーセンターと同じ低価格を期待して来店するのですが、実際の価格はドラッグストア並の価格。ドラッグストアでは、来店客はその価格に納得するものの、ウォルマートという商号が付けば、高く感じます。この失望が客離れにつながり、売上が期待されたほど伸びなくなるわけです。

 

収益が期待値に届かない以上、改善が必要ですが、もうお手上げだったのでしょう。撤退に踏み切りました。

 

WSJの記事で注目されているのは小型業態からの撤退ですが、米国市場の閉鎖店舗の内訳を見ると、新たなことがわかります。

 

【米国市場での大量店舗閉鎖内訳】

エキスプレス(小型)業態:102店舗

エキスプレス以外の業態;52店舗

 

閉鎖している店舗の大半は小型業態であるものの、3分の1は小型業態以外でもあるのです。小型以外の52店舗の多くは、スーパーセンターでしょう。そう予想するのは、スーパー(中型)業態であるネイバーフッドマーケットは、今後も継続するからです。不採算のスーパーセンターを閉鎖するということは、消費者が品揃え豊かな大型店の利用を減らしていることに他なりません。もちろん、その背景にはネット通販へのシフトがあります。

 

2015年の年末商戦の結果は、ネット通販へのシフトがいかに加速しているかを示しています。

 

【2015年年末商戦の売上】

全体:3%増

ネット通販:9%増

 

ネット通販の増加率は、全体の三倍。それほど、消費の実店舗からネットへのシフトは加速しているのです。だからこそ、実店舗の大型店であるウォルマートのスーパーセンターは、不採算店が増えて、閉鎖に追い込まれたと予想されます。

 

興味深いのは、年末商戦は前年比プラスだったのに対し、12月全体の小売売上高はマイナスに転落したということ。これ示すのは、ネット通販市場の拡大により、価格競争が激化し、客単価が下がったということではないでしょうか。つまり、消費のネットシフトが、小売全体の値下げを加速しているということ。値下げ競争が激しくなり、客単価が下がっている一方で、実店舗・ネット双方への投資を拡大。しかし、実店舗ではさほど客数がふえなければ、収益が大きく悪化しても不思議ではありません。これが、ウォルマートが直面している課題なのです。だからこそ、店舗増による売上重視路線から、不採算店閉鎖による収益重視路線に転換したと言えるでしょう。

 

思えば、日本でも、構造的な不振に陥るGMS業態の大量閉鎖が発表されています。GMSは豊富な品揃えが強みであったものの、売場スペースに制限のないネット通販には構造上敵いません。一方で、売り場面積の大きなGMSは、利便性・買い物のしやすさでは、小型業態(スーパーやコンビニ)に対抗できません。ウォルマートのスーパーセンターと同様です。

 

ネット通販へのシフトにより価格競争が激化する中、小売企業に求められるのは、規模拡大よりも採算性なのでしょう。今後も、小売業の固定費削減は続くように思えます。

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ウォルマートが、店舗増による売上拡大を目指していた米国市場で店舗の大量閉鎖を行うのは、消費が実店舗からネットにシフトしているからである。
  2. さらに、ネット通販市場の拡大により、価格競争が激化。一方で、ウォルマートは、ネット通販のみならず実店舗への投資も拡大したために、収益性が大きく低下。だから、本国の米国で大型リストラせざるを得なくなった。
  3. 2011年に進出したばかりの小型業態から撤退するのは、売り場面積の制約により、粗利益率の高い商材の売場を余り確保できなかったからである。さらに、ドラッグストア並の価格が、スーパーセンター並の価格への期待にそぐわなかったことは、客離れを引き起こした。これらにより、収益が期待値に届かず。
  4. スーパーセンターを50店舗ほど閉鎖するのは、消費者の大型店からの離反が起きているからだろう。ネット通販は売場に制限がないため、品揃えは強みにならず、逆に広い売場が買い物のしやすさで弱みとなり、支持を失ったのだろう。
  5. ネット通販の拡大は、価格競争の激化を通じて、小売業の利益率を低下させる。だからこそ、固定費を削減することで、採算重視にならざるをえない。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

スーパーの試食販売で思わず買ったものがこちら。

通常、試食はするものの滅多に買わないのですが、おいしくて便利、しかも特売価格だったので、気が付けばカゴの中に入れていました。

よりどり2個で割引になるのですが、あまりにも美味しかったので同じものを2個買ったほどです。

実際自宅で調理してみたところ、鶏肉を入れるだけなので、簡単。

きのことベーコンを追加しましたが、さらに美味しくなりました。

まるでカフェで食べているみたいでした。

スープというよりも、パスタを添えて食べたら美味しいですよ。

明治デイリーリッチ 粒マスタード仕立てチキンと野菜のクリーム煮

楽天市場には売っていませんが、「鶏肉 クリーム」で検索するとこんなのが出てきました。

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

一気に寒くなりましたね。

普段は六甲アイランドからJR住吉まで自転車で通っているのですが、強風のなか六甲大橋を走るのは結構辛いです。

恐くなり、自転車を押すことも多いですね。

1つの試練です。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

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