【947号】自動車熱が冷め気味のアメリカで、自動車メーカーは何で稼ぐ?
◎本日のニュース
1)見出し
Driving Is Losing Its Allure for More Americans
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2)要約
25歳未満の運転免許所得者数が、過去約20年間で大きく減少している。この背景には、高校生・大学生の自動車への関心が低下しており、その傾向が親・祖父母の世代にも広がっていることがある。
一方で、2015年の新車販売台数は、2000年以降で最大を記録。しかしながら、その多くは若者のファーストカーの需要であり、買い替え需要は大きく減退している。今後、自動車免許所得数が減少すると、ファーストカーの需要自体がジリ貧に陥る恐れがある。
3)キーとなる英文
A University of Michigan study of state driver’s licensing statistics shows a sharp decline over the past two decades among people under 25 years of age getting their driver’s licenses.
4)キーとなる英文の和訳
ミシガン大学が行った州の運転免許統計調査によると、25歳未満の運転免許取得数が、過去20年間で大きく減少しているという。
5)気になる単語・表現
allure | 名詞 | 魅惑;魅力 |
hail | 他動詞 | ~を迎える |
plateau | 自動詞 | 水平状態になる;停滞期に入る、頭打ちになる |
a handful of | 名詞句 | 少数の |
(今回ピックアップ英単語)
【car-hailing service】
(意味)
配車サービス
(類義語)
ride-sharing service
「乗り合いサービス」
(コメント)
配車サービスは、今話題のウーバー(Uber)など。
6)ビジネスのヒント
アメリカ人の自動車熱が冷めてきているようです。まずはデータから。
【免許保持率に関するデータ】
- 20~24歳:92%(1983)→80%(2011)→77%(2014)
- 16歳:46%(1983)→25%未満(2014)
- 18歳:80%(1983)→60%(2014)
- 45~69歳:1983年以来25年間上昇→2008年に頭打ち
- 50~69歳:2008年との比較で3ポイント減(2014)
※ミシガン大学調査
注目すべきは4で、2008年を境に45~69歳で免許を持つ人が減っているということ。ベビーブーマー世代がこの年代に入るので、人口自体が減っているとは考えられません。2008年に何が起こったかと言うと、リーマンショック。つまり、金融危機により、免許取得トレンドに大きな変化が起こったということがわかります。
また、記事にはミシガン大学による調査結果が、グラフで掲載されているのですが、34歳未満の若年層では、調査開始の1983年から免許保持率は右肩下がりでジリジリ下がっています。大きく下がったのは、2008年頃。もともと、若年層の免許取得率が減っており、金融危機により拍車がかかったということがわかります。
自動車への憧れが薄れ、運転免許取得率が下がった要因は、以下の通り。
【免許取得率が下がった要因】
- 都市機能のコンパクト化
- 運転=面倒と感じる若者の増加
- 新たな交通サービスの登場
1について、小売店や飲食店などが都市中心部に固まれば、わざわざ自家用車自動車で移動する必要はなくなります。電車・バス・タクシーで移動すればいいからです。免許への関心が薄れても不思議ではありません。
2について、特に若者で増えているのですが、運転を面倒と感じる消費者が増えているようです。渋滞により時間が掛かれば、面倒な運転をわざわざする意味はなくなります。
3について、そこで新たな交通サービスが登場すれば、運転を回避する消費者行動に拍車がかかります。新たなサービスとは、ウーバーなどの配車サービスや乗り合いサービス・カーシェアリングなどです。これらのサービスが登場したことにより、利用勝手の悪い電車・バスが補完され、わざわざ自家用車を持つ必要性が薄れるのです。
一方で、新車(乗用車・トラック)販売台数は、2015年に2000年以降で最大(1750万台)を記録しています。免許保持率・取得率が低下する一方で、なぜ新車が売れているのか?もちろん、自動車ローン金利の低下やガソリン安、失業率の低下・賃上げなどの外部環境の変化もありますが、その多くはファーストカー需要(人生で初めての自動車購入)が支えているようです。そう言えるのは、自動車の保有年数が上昇しており、中古車在庫は膨らんでいるからです。つまり、新車・中古車を合わせた自動車の需要は頭打ち。これが、自動車市場の真実なのです。
ファーストカー需要があればいいじゃないかと思いますが、若者の免許取得率が低下していることが、今後ボディーブローのように働きます。つまり、ファーストカー需要自体が縮小するだけではなく、その後に期待される買い替え需要も自動的に縮小してしまうのです。潜在的なファーストカー・買い換え需要が小さくなれば、自動車販売台数が今後縮小するのは当たり前。新車販売台数が大きく伸びて我が世の春を謳歌しているように見える自動車業界ですが、本当は大きな課題を抱えていることになります。
このような状況の中、一部の自動車メーカーは、新車販売への依存を下げるために、新たな収益源を模索しています。
【自動車需要の減少を見越した自動車メーカーの模索】
新たな代替サービスへの投資(乗り合いサービス・配車サービス・自動運転車)
記事で取り上げられていたのは、GM。GMは、乗り合いサービスの資金不足に陥ったサイドカー・テクノロジーズ社の一部株式を取得。また、配車サービスのリフト社との提携も発表しています。
自動車メーカーが、代替サービスへの投資を進めるのは、収益源の確保だけが目的ではありません。そうしなければ、自動車ビジネス全体が、新興IT企業に牛耳られる恐れがあるからです。
【巨大な自動車市場に進出する新興IT企業】
- シリコンバレーのIT企業は、自動車売上と交通サービスを合わせた77億ドル市場への参入・シェア拡大を目論む
- ウーバー・リフトなどのIT系配車サービス企業は、ドライバーによる数百万もの運転データを活用して、自動運転車の開発を目指す
IT企業が自動車市場を目指すのは、市場規模が巨大だからであり、ITを活用することで更なる効率化・自動化を測れるから。特に注目すべきは2であり、運転者と移動希望者を仲介する配車サービスは、そのサービス提供を通じて得たデータを有効利用することで、自動運転車ビジネスへの参入を虎視眈々と目指していること。自動車メーカーも、うかうかしていられません。
運転免許離れは、若者を中心にした消費者ニーズ・買い物習慣の変化と読み解くこともできます。
【運転免許離れからわかる消費者ニーズ・買物行動の変化】
- コスパ意識・利便性重視の高まり
- 固定費を伴う所有から変動費で済む利用への変化
- 楽しみの増加・ソーシャル重視の高まり
1について、運転免許を取得するのは、自動車を購入・保有するのが前提だから。自動車を購入するのに数百万とかかり、保有にも保険やらメンテナンスやらで必ず費用が掛かります。一方で、自動車を持てば、面倒な運転や渋滞など利便性の面で、不満も生じます。これらを考慮すれば、自動車保有はコスパの低いことになります。このコスパ意識の高まりの背景には、ネットからの情報量の拡大があることは言うまでもありません。
2について、先述したように、自動車を保有するには、購入時・利用時に固定費が掛かります。一方で、配車サービスなどの代替サービスは、必要な時だけ掛かる変動費。この固定費の変動費化の流れは、衣類など他の市場でも発生しているトレンドと言えるでしょう。
3について、運転はそもそも楽しいことでもありますが、スマホの普及などにより、ゲーム・音楽など身近なエンターテイメントが増加。一方の運転は、コストばかりではなく危険も伴うので、楽しさという点では劣ると考える人は多いでしょう。さらに、SNSの利用が広がると、人とのつながりを重視する傾向が高まり、運転よりも一緒に自動車に乗って楽しむ価値の方が高くなっても不思議ではありません。ならば、自動車を保有する価値が低くなります。
このような消費者ニーズ・買物行動の変化は、自動車市場のみならず他の消費財市場で起こっても不思議ではありません。逆に、このようなトレンドがあるからこそ、配車サービスのような代替サービスが生まれたと考えれば、他の市場でも代替サービスの開発余地は十分あるでしょう。
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《今回のヒントのまとめ》
- アメリカの若者の間で、自動車への憧れが薄れ、免許取得率が低下している。この背景には、都市のコンパクト化や運転=面倒と感じる若者の増加、新たな代替サービスの登場がある。
- 一方で、新車販売台数は、2000年以降最大を記録したが、この要因はファーストカー需要の高まりであり、買い替え需要は低迷している。今後、若者の免許所得率が低下すれば、ファーストカー需要のみならず、買い替え需要も低下しかねず、自動車販売がジリ貧になりかねない。
- そこで、自動車メーカーは、代替サービスへの投資を行い、交通サービスからの収益獲得を目指すことで、自動車販売への依存を下げようとしている。
- ただし、新興企業・IT企業も、得意のITを活用して、更なる効率化・自動化を目指すことで、巨大な自動車市場への参入を目論んでいる。自動車メーカーのサービス投資は、新規参入への防御策とも言えるだろう。
- 免許取得率の低下から、消費者ニーズ・買物行動の変化を読み取ることもできる。その変化とは、コスパ意識・利便性重視の高まり、固定費の変動費化、楽しみの増加とソーシャル重視である。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
スーパーの試食販売で思わず買ったものがこちら。
通常、試食はするものの滅多に買わないのですが、おいしくて便利、しかも特売価格だったので、気が付けばカゴの中に入れていました。
よりどり2個で割引になるのですが、あまりにも美味しかったので同じものを2個買ったほどです。
実際自宅で調理してみたところ、鶏肉を入れるだけなので、簡単。
きのことベーコンを追加しましたが、さらに美味しくなりました。
まるでカフェで食べているみたいでした。
スープというよりも、パスタを添えて食べたら美味しいですよ。
明治デイリーリッチ 粒マスタード仕立てチキンと野菜のクリーム煮
楽天市場には売っていませんが、「鶏肉 クリーム」で検索するとこんなのが出てきました。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
甘利大臣の疑惑は、野党にとって絶好のチャンス。
このチャンスを活かせば、参院選でねじれに持ち込むことができます。
さらに、株価も下落気味で、アベノミクスは正念場を迎えています。
逆に言えば、この絶好の機会を活かせなければ、当分自公政権が続くでしょうね。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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