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【989号】サブスクリプションサービスの老舗・バーチボックスが、実店舗拡大路線を撤回した理由とは?

March Birchbox

◎本日のニュース

1)見出し

Birchbox, a Pioneer in Subscription Beauty Sales, Scales Back

 

 

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2)要約

サブスクリプション形式で商品の詰まった箱を毎月送るブームの火付け役、バーチボックス社が、成長計画を縮小した。その理由は、競争激化と資金調達環境の悪化である。

 

バーチボックスが属する美容品サブスクリプション業界は、300サービス以上が乱立。競合するイプシーが、SNSを駆使して会員数を伸ばす一方で、美容小売大手のセフォラも参入し、競争環境が悪化している。さらに、ベンチャーキャピタルのサブスクリプション熱が沈静化し、投資額が激減。その中で、バーチボックスは資金調達に失敗した。

 

売上の3分の1までに育った美容品小売で打開しようと、実店舗の拡大路線を採用したものの、収益重視で撤回を余儀なくされた。人員削減・オフィス縮小などのリストラも行う。

 

3)キーとなる英文

The startup that set the subscription-box craze in motion has scaled back plans for its growth as increased competition and a chill in venture capital has left it short on cash.

 

4)キーとなる英文の和訳

サブスクリプションボックスブームの火付け役のスタートアップ企業は、成長計画を縮小した。

その理由は、激化する競争とベンチャーキャピタルによる投資熱の沈静化により、キャッシュが不足しているからである。

 

5)気になる単語・表現

craze 名詞 熱狂;大流行
set A in motion 他動詞句 ~を始める;(機械など)を動かし始める
scale back 他動詞句 ~を縮小する
suspend 他動詞 ~を一時停止(中断)する;~をつるす、~をかける
suitor 名詞 支援者;(男の)求婚者
packed 形容詞 すし詰めの
eclipse 他動詞 (競争相手)をしのぐ;(他の天体)を食する
filler 名詞 混ぜ物
sensation 名詞 物議、大評判
churn 自動詞 (群衆、心などが)激しく揺れ動く

 

(今回ピックアップ英単語)

おやすみ

 

6)ビジネスのヒント

サブスクリプション形式で商品を毎月送るサービスの走りであるバーチボックス社が、苦境に陥っているようです。その理由は、資金不足。その背景には、次のような外部環境の変化があります。

 

【バーチボックスが資金不足に陥った外部環境の変化】

  1. 大手美容品小売も参入するなど美容品サブスクリプションサービスの競争激化
  2. 資金調達環境の悪化

 

外部環境の変化だけに、企業は環境を変えることが出来ず、対策を打つしかできません。1について、バーチボックスが属する美容品サブスクリプションサービスは、300以上のサービスが乱立するほどのサービス過多状態。さらに、美容品小売大手のセフォラまでが参入。(バーチボックスと同額の月10ドルのサービスなので、バーチボックスを狙い撃ちしたとも捉えられる)しかも、参入障壁が低いため、先行者利益も得られないとすれば、老舗のバーチボックスが収益悪化に陥るのも、不思議ではありません。

 

2について、さらに追い打ちを掛けるのが、資金調達が難しくなった金融環境の悪化。以前までは、非上場IT系スタートアップ企業への投資熱が過熱しており、特にサブスクリプションサービスを提供するスタートアップ企業には熱い眼差しが向けられていました。それが、今年に入って環境が急変。収益重視に転換したようです。この変化を物語るのが、次のデータです。

 

【サブスクリプション系スタートアップへの投資環境の変化】

  1. 2015年 5億ドル以上
  2. 2016年(5月まで) 8600万ドル

※全米のセレクトとした商品を送るサブスクリプションサービスのスタートアップ企業への投資額

 

この環境変化にバーチボックスは気づくのが遅かったようです。前回の資金調達は、なんと2年以上前。ブームを作った老舗サービスだけに、高をくくっていたのでしょう。前回6000万ドルの資金調達に成功し、企業としては4億5000万ドルの評価を受けていました。環境の変化に素早く気づいていたら、成長戦略を縮小するほどの資金不足に陥ってなかったかもしれません。

 

投資家が収益にうるさくなった以上、拡大よりも収益性を重視せざるを得ません。要は、売上拡大よりもまずは黒字化。そこで、次のような成長計画の変更を発表しました。

 

【バーチボックスの成長計画の変更(縮小)】

  1. アメリカでの実店舗3店以上の出店を注視
  2. 中国などの海外進出を中断
  3. 従業員50人削減(全従業員300人のうち6人に1人)
  4. ニューヨークのオフィス縮小
  5. ロイヤルティプログラムの改悪

 

1・2は拡大路線の中止、3・4はリストラです。5はサービス内容の縮小によるコスト削減。ただし、5により顧客流出が起こっているので、成長戦略の縮小が逆に収益悪化につながり、悪いスパイラルに入る恐れがあります。

 

1の実店舗ですが、通販型のサブスクリプションサービスのバーチボックスが実店舗とは不思議ですが、次のような狙いがあります。実際、ニューヨークに1店舗持っています。

 

【通販サービスのバーチボックスが実店舗を出店する理由】

  1. 全売上の3分の1が美容正規品(サンプル品ではない)の売上であり、成長が期待できるから
  2. サンプル使用から正規品へシフトする顧客を維持するため
  3. 安定収入のサブスクリプションサービスは顧客の維持が難しいから

 

1について、サブスクリプションサービスで創業したバーチボックスですが、正規の美容品の通販も行っています。これが好調のようで、会員によく売れているようです。これを強化するために、実店舗出店に到ったのです。

 

2について、サンプル品で気に入った商品があれば、効果が重要な美容品だけに、リピート使用したいもの。ならば、サンプル品のサブスクリプションサービスを解約して、正規品を買えばいい。こういう会員が多いようで、顧客数の減少に至っているようです。このような流出懸念のある顧客を維持するためにも、従業員による提案もできる実店舗を重視しているのです。

 

3について、サブスクリプションは一回契約を獲得すれば、毎月売上が見込める安定的なビジネスです。一方で、競争激化により解約も増えているようです。この解約を回避するために、実店舗を持って会員との接点を増やそうとしているのです。

 

正規の美容品を販売する実店舗に参入しても、その業界には大手が存在します。特に、寡占化された業界だけに、サブスクリプションで名を馳せたバーチボックスと言えども、売上を伸ばすことは難しいでしょう。この勝算の低さゆえに、成長戦略の転換を余儀なくされたとも考えられます。

 

外部環境の変化によって、美容品サブスクリプション業界が苦境に陥っている一方で、順調に会員・売上を拡大しているサービスもあります。それが、バーチボックスのライバル・イプシー(カリフォルニア州)です。イプシーの共同創業者は、ユーチューバーのミッシェル・ファン。ユーチューバーだけに、SNSを駆使した集客に長けています。これが、バーチボックスとの一番の差。その他競争上優位に働いたバーチボックスとの違いをまとめると、次のようになります。

 

【イプシーのバーチボックスと比較した優位性】

  1. SNSを活用した低い集客コスト
  2. 手早い資金調達
  3. 顧客や顧客同士のネットワークでつながった温かい関係のため、退会率が低い
  4. 美容ブランドとの強い関係でサンプルが大きい

 

1について、さすがユーチューバーが創業しただけあって、集客にSNSを活用しています。具体的には、美容インフルエンサーをネットワーク化して、イプシーのサービスを拡散しているようです。このコストはほぼ無料なので、コスト優位性が働いています。

 

2について、昨年9月1億ドルを調達。今年の金融環境の激変を予想していたかは不明ですが、この資金により余裕を持って成長戦略を進めることができます。

 

3について、顧客とのコミュニティ確立に成功しており、この強い絆が退会率の低下をもたらしています。顧客流出に悩むバーチボックスとは、真逆です。

 

4について、当初よりサンプルを提供する美容ブランドに、その代金を支払っていたため、その関係は強固。よって、より大きなサンプルを特別に提供してもらっているようです。一方のバーチボックスは、サンプル数は多いものの、大きさは通常のサンプルサイズのようです。

 

この記事から注目点は以下の通り。

 

【注目点】

  1. 毎月セレクトされたモノが送られるボックス型サブスクリプションサービスは、楽しみというニーズがある。
  2. 画期的なサービスでも参入障壁が低ければ、先行者利益は低い。
  3. 対顧客・顧客同士のコミュニティを確立することで、顧客流出をある程度回避できる。

 

1について、これは記事で紹介された顧客の声であったのですが、毎月中身が開けるまでわからない箱が送られてくることを楽しみに感じる人が、多そうです。株主優待やふるさと納税の人気からもわかるように、送られてくるモノがわかっていてもいつ来るか待つことも、楽しみの1つ。この手の待つ楽しみが味わえるサービスには、一定のニーズは確実にありそうです。

 

2について、アイデアが画期的でも、いずれ真似されるもの。特に、参入障壁の低ければ、そのスピードも早い。この場合、先行者利益は低いと覚悟しなければなりません。

 

3について、イプシーの事例からもわかるように、顧客との、または顧客同士のコミュニティ確立に成功すれば、顧客流出をある程度回避できます。消費者のブランドスイッチが起こりやすくなっているだけに、コストの掛かるコミュニティ確立も、費用対効果は高そうです。

 

日本のサブスクリプションサービスは、どの程度利用者が増えているのでしょうか。最近、日経新聞などでの露出も少なくなってきました。もしかしたら、淘汰が進んでいるのかもしれません。

 

 

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. 配送型サブスクリプションサービスブームの火付け役のバーチボックスが成長戦略の縮小を余儀なくされたのは、競争激化や資金調達環境悪化により、資金不足に直面したからである。
  2. 具体的には、実店舗拡大と海外進出を中止し、人員削減・オフィス縮小を実施。サービス改悪も行うが、顧客流出に直面している。
  3. 通販型のバーチボックスが実店舗拡大を目指したのは、正規の美容品売上に拡大余地があったからであり、またサンプル品から正規品へのシフトや競争激化による顧客流出を回避するためである。実店舗で顧客との接点が増えれば、ブランドロイヤルティも高まりやすい。
  4. ライバルのイプシーが順調にサービス拡大しているのは、SNSを駆使した集客コストの低さやコミュニティ確立による退会率の低さなど、コスト優位性があるからである。また、事前に資金調達に成功し、美容ブランドとの強固な関係により大きめのサンプルを提供できた点も見逃せない。
  5. セレクトされたモノが定期的に送られるサービスは、待ち遠しいという楽しみを提供できる。このニーズは確実に存在する。
  6. 画期的なアイデアでも、参入障壁が低ければ、先行者利益は低い。
  7. 対顧客・顧客同士のコミュニティ確立に成功できれば、ブランドスイッチが起きやすい中でも顧客流出をある程度回避できる。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけた気になるもの

まだ飲んでませんが、キリンビールの株主優待で各地の一番搾りセットを頂きました。

これはもう飲み比べなくてはなりません。

そして、また新たなローカル一番搾りが発売されれば、飲みたくなります。

気がつけば、一番絞りユーザーになっていたりして。

一番搾りだけではなく、NBのローカル商品投入は、食品業界のブームのようですね。

一番搾り地元うまれ

 

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。

この7年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

血液検査の結果が出ました。

特に問題はないようです。

これでひとまず安心。

後は微熱が下がるのを待つだけ。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

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