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【1003号】ミレニアル世代が引き起こすアメリカの地域経済格差

Philadelphia Skyline

◎本日のニュース

1)見出し

For More U.S. Cities, Downtown Is a Center of Economic Strength

 

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2)要約

アメリカの主要都市で、都市中心部の経済成長が進む一方で、その郊外は衰退するという現象が増えている。というのは、都市中心部は不動産価格が上昇する一方で、郊外は製造業の衰退の影響で、平均家計収入が減少しているからである。

 

これは、従来のドーナツ化現象とは逆であり、都市中心部には弁護士サービスや保険など頭脳型サービス業が増加。それにともない、高い教育水準の若者の移転が進む。一方で、郊外の経済は低迷・衰退。中間層・低所得者層が集まる。

 

ただし、都市中心部の経済成長が今後も続く保証はない。というのも、ミレニアル世代の半数が、この先も住み続けるとは考えていないからである。

 

3)キーとなる英文

But increasingly, many urban cores are islands of economic strength surrounded by decay that reaches out into inner-ring suburbs—beyond which fortunes rise again in more distant suburbs.

 

4)キーとなる英文の和訳

しかし、多くの都市中心部が、経済成長の島をなす現象が増加している。

その周りは衰退し、郊外は内輪を形成している。

その向こうのさらに遠くの郊外は、また繁栄している。

 

5)気になる単語・表現

paralegal 名詞 弁護士補助員
beyond 前置詞 (位置)~の向こうに;(時間)~を過ぎて
fortune 名詞 富;財産;成功;繁栄
innner-ring 名詞 内輪
enclave 名詞 飛び領土
polarization 名詞 分極;分裂
gentrification 名詞 高級住宅化
temper 他動詞 ~を和らげる
tract 名詞 広がり
cluster 自動詞 群れをなして集まる;群生する
tax base 名詞 課税基準
land 名詞 領域
unrest 名詞 (社会的な)不安、不満
disparity 名詞 不等;相違
claim 他動詞 ~を奪う
firsthand 副詞 直接に
trajectory 名詞 弾道;軌道
exurb 名詞 準郊外
bulge 名詞 ふくらみ
gleam 自動詞 光る

 

(今回ピックアップ英単語)

【temper】

(類義語)

「落ち着き」 calm, repose, countenance

「機嫌」 mood, humor, tune

「気性」 nature, temperament, spirit, humor

「腹立ち」 anger

(コメント)

記事では、「現象を和らげる」という文脈で使用されている。

 

6)ビジネスのヒント

金融危機後経済回復が進むアメリカでは、地域格差が拡大しています。ただし、この場合の地域格差とは、都市と地方ではなく、都市内部での話。具体的には、都市中心部と郊外との地域格差です。以前進んだドーナツ化現象と逆のことが起こっています。

 

【アメリカ都市内部で進む地域格差】

  1. 都市中心部の地域経済拡大
  2. 教育水準の高い若年層が都市中心部に移住
  3. その周りの郊外は中間層・低所得者層・マイノリティ中心で、経済は衰退
  4. さらにその周りは高級住宅街のまま

 

従来のドーナツ化現象とは、都市中心部に貧困層が住み着き、中間層・富裕層は郊外に向かったというもの。しかし、今では上記4つのポイントのように、都市中心部に教育水準の高い若年層が移転し、不動産のミニブームと相まって、大きな経済成長を記録しています。一方で3のように、郊外は製造業の衰退により、中間層・低所得者層・マイノリティが中心となり、経済は衰退しています。

 

この逆ドーナツ化現象とも言うべき状況が起こった原因をまとめると、次のようになります。

 

【逆ドーナツ化現象の原因】

  1. 都市周辺の工場地帯の衰退→比較的収入の良い低スキルジョブの減少、平均家計所得の減少
  2. 都市中心部で起こった不動産バブル←頭脳型サービス業・起業の増加、平均家計所得の増加
  3. ニューヨークやサンフランシスコなどで起こる世界都市競争が、主要都市にも波及→高層ビルや富裕層向け住宅などが増加

 

 

先述の通り、1の製造業の衰退により、比較的収入の良い低スキルジョブが減少しました。よって、スキルの低い労働者は、低賃金のサービス業に就くしかありません。その結果、家計所得は減少。一方で、2のように、開発が進む都市中心部では、不動産ミニバブルが発生。また、高度なスキルや資格を要する頭脳型サービス業が増加しました。もちろん、起業も増えます。その結果、家計所得は増加。

 

3は、世界的な都市同士で繰り広げられる開発競争が、アメリカ主要都市にも波及することで、高層ビルや億ションが増加。この結果、高所得の若者が都市中心部に住むようになりました。

 

記事では、フィラデルフィアなど都市内部で起こる二極化についての事例も紹介されています。

 

【都市内部で起こる二極化の事例】

(フィラデルフィア)

  1. 平均収入は3%減少(2000年と2014年との比較、物価変動調整後)
  2. 一方収入増の人は、中心部であるセンターシティ周辺に集中
  3. 雇用の割合が増えたのは、ホスピタリティと教育・医療。一方で、製造業・政府部門は減少。
  4. 中心部のセンターシティは人口17%増、白人比率は53%から62%に拡大、平均収入20%増

(ミルウォーキー)

税収の1/5は全体の3%が負担

 

フィラデルフィアは、全米で5番目に人口の多い大都市。1の平均収入の減少率14.3%は、全米平均の10.4%よりも大きいので、フィラデルフィア全体の経済はさほど好調とは言えません。しかし、中心部であるセンターシティは、収入は逆に増加。全体でマイナスにも関わらず、中心部が増加しているということは、格差の大きさを物語っています。

 

しかも、2のように職が増えているのは、飲食業・ホテルなどのホスピタリティ産業と教育・医療などであり、比較的賃金の低い職が増えていることがわかります。一方で、センターシティでは、人口増のみならず、白人比率が拡大し、平均収入も増加しています。

 

ミルウォーキーの事例は税収の偏りであり、格差の拡大を物語っています。

 

このような都市内部での格差拡大は、社会不安を引き起こす懸念があります。経済成長に取り残された郊外に住む層が、その不平等さを不満に思い、警察などの公権力に反発しかねません。黒人が白人警官に射殺されたことに対する抗議デモは、この最たる例です。

 

さらに深刻なのは、この都市中心部の発展が、今後続く保証がないという点です。というのも、都市中心部の発展を牽引してきた教育水準の高いミレニアル世代の多くが、今後都市中心部に住み続けることはないと考えているからです。これは、自分のキャリア形成や、子育て・学校・犯罪への不安などが原因。恐らく、所得の高いミレニアル世代は、子供の成長により、より遠くの郊外への移転を考えているのでしょう。実際、ミレニアル世代が、都市中心部から郊外や準郊外に移転しているデータがあるようです。

 

このようなミレニアル世代の動きを考えて、主要都市の自治体は、中心部に偏った成長を周辺に広げる努力を行っています。そのためには、比較的賃金が高く企業に必要とされているスキルを持つ人を増やさなければなりません。

 

今回の記事の注目点は、以下の通り。

 

【注目点】

  1. 都市・地方間のみならず、都市内部でも経済格差が拡大している
  2. 社会人の再教育ニーズは高い
  3. 人口の高齢化が進めば、利便性の高い都市中心部への移転が進む

 

1について、地域格差と言えば、都市と地方の格差が一般的。日本政府が地域創生に力を注ぐのも、都市・地方間格差が大きいから。一方、アメリカでは都市内部での格差拡大が進んでいます。今後、日本でも都市内部での経済格差が拡大するかもしれません。

 

2について、アメリカの都市内部での経済格差が拡大したのは、低スキル職の賃金が低下する一方で、高スキル職の賃金が上昇したから。この格差を是正するためには、低スキルの社会人のスキルを向上させるしかありません。社会人の再教育ニーズは高いのです。日本のように少子化が進む国では、子供の教育よりも社会人の再教育の方が求められているのかもしれません。

 

3について、ミレニアル世代は年齢を重ねるに従って、都市中心部よりも比較的治安の良い郊外に移転するかもしれません。しかし、シニア層は、コンパクトにまとまった都市中心部の利便性を重視して、都市中心部に住み続けるのではないでしょうか。ベビーブーマー層の引退が進むアメリカでは、今後シニア層による都市中心部への移転が増え、郊外に移動するミレニアル世代に代わって、長期間住み続けるかもしれません。

 

記事に添えられている画像からわかるのは、より洗練され世界都市に近づく都市中心部とは対照的に、その周りの郊外では、比較的所得の低い層や移民が日々の生活を営んでいるということ。その世界は全く異なり、画像は格差の大きさを物語っています。

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. 主要都市内部での経済格差が拡大している。都市中心部では、教育水準の高いミレニアル世代が移住し、平均家計収入は増加。一方で、その周辺の郊外では、中間層・低所得者層・マイノリティが増加し、平均収入は減少している。
  2. この要因は、中心部では開発が進み不動産ミニバブルが発生する一方で、郊外では、製造業の衰退により、低スキル職の賃金が低下しているからである。また、世界都市間での開発競争が、主要都市中心部にも波及していることも、関係している。
  3. このような都市内部での経済格差の拡大は、社会不安を引き起こしかねない。黒人を射殺した白人警官への抗議デモも、根っこには経済格差がある。
  4. ただし、中心部が今後も発展する保証はない。というのも、中心部に流入したミレニアル世代の多くが、今後も住み続けるとは考えていないからである。
  5. アメリカのような都市内部での経済格差は、日本でも起こるかもしれない。一方で、格差是正に寄与する社会人の再教育ニーズは高まるだろう。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけた気になるもの

HPのノートパソコン「HP EliteBook Folio G1」

まだ東芝のKIRAが現役なので、購入することはまずないですが、軽さ・価格・性能(スペック)で、毎日持ち運びに耐えるビジネス用パソコンではないでしょうか。

見た目も、アップル製品に似ており、悪くありません。

12.5型というのもいいですね。私のKIRAは13.3型で、無駄に大きいと常に感じています。(その分作業はし易いのも事実ですが)

970gというのは、持ち運びに羨ましいほどの軽さです。

駆動時間は11.5時間。実質どの程度持つかは不安ですが、まぁ8時間持てば十分でしょう。(私は長くても5時間ほどですが)

価格は少し高く感じますが、11万円ほどであり、パナソニックのレッツノートや東芝KIRAよりも割安。

次買い換える時は、候補に上がること間違いなしです。

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。

この7年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

今年のお盆は、部屋の片付けを本格的に行いたいと思います。

というのも、あまりにも使わないモノが多すぎるから。

家が狭いだけに、モノを少なくして、シンプルに生活したいものです。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

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