【1044号】インフレ期待バブルのマーケットと盛り上がらない消費データ、差異が起こる理由とは?
※火曜日は簡易版に変更しました。
◎本日のニュース
1)見出し
The Markets Say Inflation Is Coming. The Data Show It Isn’t True
ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
2)ビジネスのヒント
アメリカの金融市場(マーケット)では、インフレ期待も盛り上がっています。その背景にあるのは、もちろんトランプ次期政権の経済政策。減税・規制緩和・インフラ投資拡大の三大メニューで、企業業績・アメリカ経済を盛り上げようというもの。
記事によると、インフレ期待の高まりを象徴するのは、米国物価連動国債(TIPS)に連動するファンドの値動き。依然としてマネーが集中しているようです。そこで、TIPSに連動するファンドのチャートを調べたところ、記事のように継続的にマネーが集中(≒上昇トレンドが継続)しているわけではありません。トランプ当選から12月16日までは下落トレンドに転換し、12月17日からはまた上昇に転じています。16日までは、債券から株式へシフトで下げていたものの、FRBの利上げ発表により、インフレ期待が本格化したというのが証券筋の解説でしょうか。冗談はさておき、TIPSの上昇転換は、利上げ発表によりインフレ期待がさらに高まったことに間違いありません。
記事によると、TIPSファンドの上昇により、マネーマネージャーがインフレ加速の多少の上振れを意識し出すと、TIPSの更なる購入に動き、インフレ期待をさらに加速させるようです。しかし、実際のTIPS連動ファンドのチャートを見てみると、2016年は高止まりしており、短期的にはFRB利上げにより戻すものの、長期的には下落トレンドへの転換にも読み取れます。ちなみに、昨年の利上げはTIPS相場に大きな影響を与えたとは言えず、ドル相場との逆相関があるようにも見えます。つまり、ドル安ならばTIPSは上昇するということです。(2016年10月頃まではドル安・TIPSファンド上昇)そう考えれば、上昇の続くドル相場の影響は今後TIPSの下落を招くかもしれません。
このような考えからか、急落した地方債を大人買いする投資家もいるようです。この投資家の考えの背景には、消費・雇用環境のデータがあります。
【消費・雇用環境のデータ】
- 個人消費支出:1%台の上昇に留まり、FRBの目標値である2%にいまだ届かず
- 民間部門の時給:前年比2%台のプラスなものの、前月比でほぼトントン。(正確にはコンマ台のマイナス)→時給上昇率は鈍化
1に関して、記事の冒頭にはドレッシングの特売売場の画像が掲載されています。これが物語るのは、消費者の節約志向の高止まり。つまり、消費者の財布の紐は、今固いのです。実際、個人消費支出指数や消費者物価指数はプラスであるものの、FRBも目標値には届いていません。
2について、2009年から続く雇用環境の改善ですが、失業率・時給上昇率も鈍化しているのが現実です。7年も景気回復が続いただけに、景気サイクルにおける景気後退に陥ってもおかしくありません。
1・2があるからこそ、FRBはなかなか利上げに踏み切れなかったのでしょう。今回の利上げまで、1年掛かりました。
このように、消費・雇用データからは、インフレ期待はさほど読み取れず、どちらかというとインフレ期待がしぼんでいるのが実情のようです。次のような要因も、物価上昇の向かい風になり兼ねません。
【インフレ期待を覚ます要因】
- エネルギー価格が政治的な要因により上昇に転じるも、シェール供給増で頭打ちしかねないから
- ドル高による輸入物価が下落することによって、物価上昇を邪魔しかねないから
一番の懸念は2のドル高でしょう。インフレ期待を高めたトランプさんですが、選挙中の政策によるとドル安信者。今は沈黙を保っていますが、いずれ今のドル高を牽制するような発言をする可能性は極めて高いと思われます。予想はさておき、このドル高が続く限り、輸入物価の下落を通じて、インフレ期待を覚ましかねません。
このようにマーケットと実情に乖離が生じているわけですが、いずれこの乖離は解消されるはずです。マーケットが調整に入るのか、インフレ期待の高まりを示すデータが発表されるのかはわかりませんが、このような乖離のある状態は投資に向かないというのが個人的な見解です。
ちなみに、記事のコメントではトランプ政策(あくまで政策)の支持者・インフレ期待支持者がほとんどを占めています。ダウがもうすぐ2万ドルに届こうかというレベルまで上昇しているだけに、海の向こうの個人投資家もユーフォリアに酔っているように思えるのは、私だけでしょうか。
※米国債の種類(英語)
長期国債 Treasury Bonds
中期国債 Treasury Notes
短期国債 Treasury Bills
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《今回のヒントのまとめ》
米金融市場ではインフレ期待が高まるも、消費・雇用データからはインフレ期待は弱まっている。
このような乖離が生まれるのは、マーケットはトランプ政策のいい面しか見ていないのに対し、消費者・企業はドル高の悪影響を懸念しているからではないか。
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インフレで私たちの収入は本当に増えるのか? | ||||
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
ビール系飲料の税率が統一されることが、ほぼ決定されたようです。
あくまで新聞報道ですが、ビールメーカーも賛同しているので、第三のビールの値上げは必至でしょう。
私にとっては悲しいニュースなのですが、店頭では様々な新商品が増えています。
今日取り上げるのは、
です。
どこかの有名ブランドで見たようなデザインですが、このデザインだけでも美味しそうなイメージ。
思わず、1缶だけですがカゴに入れてしまいました。
まだ飲んでいないので何とも言えないですが、きっと売れると思いますよ。
つくづく、ビール系はイメージで売っているのだと認識しました。
飲んだ人がいれば、感想教えてください。(メルマガで紹介しますよ。)
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。
この7年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
年末は駆け込みでインフルエンザ予防接種やふるさと納税などをしました。
寝不足など体調がすぐれない年末でしたので、年始はゆったりしたいと思います。
今回はマーケット情報を取り上げました。
最近のメルマガでは、小売業界やサービス業界など消費者向けの業界が多いだけに、少し趣向を変えたかったこともあります。
ただ、今回のメルマガからビジネスのヒントはなかなか得にくいようですね。
マーケット関連・投資関連は別のメルマガで記事を書いた方が良さそうですが、なかなか時間を取れないのも現実です。
今ビジネスで一番興味あるのは、ネット通販と自動運転サービスでしょうか。
アマゾンのコンビニ進出など、ネット通販は今後実店舗を活用して、さらに利便性の高いサービスに発展すると予想しています。そして、そこには多種多様なビジネスチャンスが生まれるかと。
自動運転サービスが一般化すると、これはもう世界が変わりますよ。
人手不足もある程度解消されるとともに、自動車産業のビジネスモデルも大転換することでしょう。
自動車を運転すること=趣味の1つ、になっても不思議ではありません。
このような変化にどう対応するか(どうチャンスを掴むか)、これが私の大きなテーマですね。
今年もできるだけわかりやすいためになる記事を書き続けますので、ご声援よろしく願いいたします。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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