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【514号】英旅行代理店トーマスクックの株価が、今年91%下落した理由とは?

トーマス・クックBy Leo Reynolds

 

◎本日のニュース

1)見出し
U.K. Travel Firms Fight Turbulence

【出典】
goo.gl/yNpjJ

2)要約
消費者の節約志向・ネット利用の拡大・

旅行先の政情不安などにより、
英国の旅行業者の先行きは暗いとされている。
英国旅行代理店最大手トーマス・クックの株価を見れば、
旅行業の不振がよくわかる。トーマス・クックの株価は、今年91%も下落した。
株価大幅下落の最大の要因は、3回もの業績下方修正と
債務支払不安であった。
一方、トーマス・クックのライバル会社TUIトラベルは、
トーマス・クックに釣られて株価は下落したものの、
業績は好転している。

トーマス・クックとTUIトラベルの差は、
そのキャッシュ・フローにある。トーマス・クックは売上を
伸ばしているものの、キャシュフローは一定せず、
債務削減が思うように進んでいない。一方、TUIトラベルは、
損益計算上の収益は悪くとも、着実にキャッシュを生み出してきた。
キャシュフローの差が、株価と業績に表れている。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
The outlook for U.K. tour operators is darkening
as consumers tighten their purse strings,
increasingly turn to the Internet to create their own holidays
and eschew traditionally popular vacation destinations
such as North Africa following the Arab spring uprisings.

4)キーとなる英文の和訳
英国旅行業界の見通しは、悪化している。
その要因は、消費者が財布の紐を締め、インターネットを使って
休日の旅行を決める傾向が強まり、またこれまで人気のあった旅行地を
避けているからである。
従来の人気旅行地とは、アラブの春暴動に見舞われた北アフリカなどである。

5)気になる単語・表現
eschew  他動詞     ~を避ける
uprising        名詞      反乱

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
英国の旅行業界は、今後停滞すると予測されている。
その要因は、
1.消費者の節約志向
2.ネット利用が増えることによる競争の激化
3.旅行ニーズの多様化
4.旅行業界の高い固定費
5.人気旅行地である北アフリカの政情不安
である。

注目したいのは、2・3・4。これらの要因は、
インターネットの影響が大きい。ネットでの販売が増えると、
競争が激化する。さらに、1の要素が加われば、価格競争が激しくなる。
さらに、ネットで自分好みのツアーが簡単に組めるようになると、
3につながる。
その結果、これまで大量販売されてきた一般的なツアーが売れなくなる。
ツアー販売に依存してきた従来の旅行代理店は大きな打撃を受けることになる。
消費者のネット利用が一般化すると、ネット専業の旅行代理店は、
実店舗型の旅行代理店よりも大きなアドバンテージを持つことになる。
それは、実店舗など固定費の低さ。従来の旅行代理店は、
4の重荷を背負うことになる。

ただし、業界内の各企業を見ると、英国旅行業界に属する
すべての企業の先行きが悪いわけではない。
最大手のトーマス・クック(Thomas Cook)とそのライバルTUIトラベル
(TUI Travel)を比較すると、面白い。両者とも年初より株価は下落し、
業績もそれほど芳しくない。トーマス・クック・TUIトラベルとも、
半期決算では営業損失を計上している。しかし、株価の下落率を見ると、
TUIトラベルはトーマス・クックの半分程度に留まっている。
その要因は、

キャッシュを生み出す力の違い

である。TUIトラベルは、損益計算上の収益はそれほど良くないが、
ここ数年着実にキャッシュを生み出している。
一方、トーマス・クックは、キャッシュを生み出す期もあれば
キャッシュを失う期もある。その不安定さが、株価に表れているのだろう。

さらに、

負債の大きさ

も両者の株価の違いに影響を与えている。TUIトラベルは、
負債返済以上のキャッシュを生み出している。
これが、先行投資につながる。一方、トーマス・クックは、
その負債の大きさゆえに、生み出したキャッシュが負債返済に消えている。
トーマス・クックの負債の大きさは深刻で、
今年は債務支払が疑問視されるに至った。その結果、
2億ポンドの新規融資枠を設定することに。債務負担が大きすぎ、
新規投資どころでないことがわかる。

このように、業界全体の先行き悪い英国旅行業界では、
1.キャッシュを生み出す力
2.負債の大きさ
によって、業績・株価に大きな差が生まれる。
消費者の節約志向や競争激化などは、日本の多くの業界が直面する問題。
この2つをいかに改善するかは、日本企業にとっても重要になるだろう。

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《今回のヒントのまとめ》

1)英国旅行業界は、消費者の節約志向・ネット販売などとの
競争激化・消費者ニーズの多様化・固定費の重い負担・旅行先の政情不安など、
先行きは暗いとされている。

2)ただし、業界内を詳しく見ると、
最大手のトーマス・クックとそのライバルTUIトラベルの
株価変動に大きな差が見られる。両社とも下落しているが、
そTUIトラベルの下落率は、トーマス・クックの半分で留まっている。

3)その要因は、キャッシュを生み出す力と負債の大きさによる。
トーマス・クックは、キャッシュ・フローが不安定であり、
さらに生み出したキャッシュが債務返済に消えている。
一方、TUIトラベルは、着実にキャッシュを生み出しており、
負債が小さい分新規投資に回せる余裕がある。

4)消費者の節約志向・競争激化など、
英国旅行業界の問題は日本の多くの業界に似通う。よって、
キャッシュを生み出す力と負債の大きさを改善すれば、
日本の企業業績を好転させることになるだろう。
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編集後記
デスクトップPCで執筆をしていると、何もキーを押さないのに、
9の文字が画面上に大量発生しました。
要因はよくわかりませんが、同じキーボードを
ノートPCにつないでも認識しなかったので、
キーボードに問題があるようです。
そういえば、今朝机の上でお茶をこぼしてしまいました。
キーボードには掛かっていないと思うのですが、
掛かっていたのかもしれません。
普段の作業スピードに大きく影響を与えるキーボード。
早速キーボード選びにかかりたいのですが、
壊れたキーボードを買ったのは今年だったような。
キーボードが壊れるなんて、これまでありませんでした。
思わぬ出費です。(そして時間も)

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!

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