【692号】アメリカ個人消費堅調にも関わらず、ウォルマートが業績下方修正した理由とは?
by courtesy ofJames Moore
◎本日のニュース
1)見出し
Wal-Mart Deepens Gloom as Retailers Feel Left Behind
2)要約
大手小売企業の四半期業績を見ると、個人消費の力強さに疑問が浮かんでくる。新学期シーズンや年末セールに財布の紐が緩むことを、あまり期待してはいけないかもしれない。小売企業だけでなく、外食企業や消費財メーカーの売上実績を見ても、個人消費の強さを示す経済指標とは結びつかない。
一方、消費者の信頼感は確かに上昇している。自動車や住宅の販売は好調で、政府データによると雇用や小売売上も堅調に回復しているからである。
このようなギャップが起こるのは、自動車や住宅への支出に偏りが見られるからである。その結果、その他の不要不急の支出が敬遠されるようになったのではないか。また、ウォルマートのターゲット層である低所得者層には、株高や住宅価格高の恩恵が少ない一方で、依然不安定な雇用環境やガソリンの高騰・所得税負担の増加というマイナスの影響が及んでいる。
◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Big retailers are casting a pall over what had been a healthy outlook for consumer spending.
4)キーとなる英文の和訳
大手小売企業の発表によると、消費支出の堅調な見通しに暗雲が立ち込めている。
5)気になる単語・表現
cast | 他動詞 | (視線・非難など)を向ける、(疑い)をかける |
pall | 名詞 | 暗い雲状のもの |
outlook | 名詞 | 見通し;見解;見晴らし |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
先週、大手小売企業の直近四半期決算が発表されましたが、いずれも予想を下回りました。それどころか、今期業績を下方修正するほど、今後の見通しも楽観視していない様子です。また、小売企業だけでなく、外食企業や消費財メーカーも、業績は芳しくないようです。各社の業績・見通しをまとめると、次のようになります。
【アメリカ小売企業・外食企業・消費財メーカーの実績と見通し】
[ディスカウト小売業]ウォルマート・ストアーズ社→直近四半期決算にて、前年同期比ぎりぎりプラスになったものの、予想に届かず。今期業績を下方修正
[百貨店]メイシーズ社→今期業績を下方修正
[百貨店・GMS]コールズ社→直近四半期決算にて減益。今期業績を下方修正。新学期セールも期待薄。
[アパレル]アメリカンイーグルアウトフィッターズ社→今月売上は予算未達予定。
[アパレル]エアロポステール社→今月売上は予算未達予定。
[高級百貨店]ノードストローム社→今期業績を下方修正。
[美容品メーカー]エスティーローダー社→5・6月の全米高級品売上の伸びは鈍化。百貨店や大型店での売上不振による。
[外食]チーズケーキファクトリー社→少なくとも一時的に、消費者は不要不急の支出を抑制している。(CEO談)
過去の業績が予想に届かなかったばかりか、今後の苦戦も警戒していることがわかります。
一方、個人消費を示す経済指標は、好転しています。
【消費の力強さを示す経済指標】
[自動車・家電を除いた個人消費]第二四半期は2.5%上昇。しかし、物価上昇率よりも上昇率は高くない。
[商務省発表の小売売上高]衣料品・衣料雑貨は、2013年前半6ヶ月で前年同期比3.8%上昇
[自動車売上]2013年前半6ヶ月で前年同期比9.5%上昇
経済全体では個人消費は堅調なものの、小売企業の業績を見る限り、そうとは思えません。このようなギャップが生まれる要因は、
自動車・住宅支出への偏りが大きいから
です。つまり、自動車・住宅関連商品にはローンを組んでまでもお金を使う一方で、自動車や住宅関連商品を買わなかったら使ったであろう衣料品や外食への支出を、抑制しているのです。まとめると、次のようになります。
【個人消費における二極化】
[1] 自動車・住宅→支出に積極的(旺盛)
[2] その他の日用品→支出に消極的(抑制)
所得税負担の増加や給与の緩慢な増加(「低迷」とも言える)により、可処分所得が伸びていないのでしょう。だからこそ、自動車や住宅には大盤振る舞いができても、その他の支出は抑制せざるを得ないのです。その結果、小売業・外食業・消費財メーカーは、今後の見通しを悲観視しているのです。アメリカ個人消費が、自動車・住宅への支出で嵩上げされていることがわかります。
また、消費者をより細かく分析すると、個人消費の二極化をより理解できます。
【消費者層の二極化】
[1] 高所得者層:株高・住宅価格高による資産効果の恩恵が強い→自動車・住宅への支出を増やす
[2] 低所得者層:資産効果が小さいだけでなく、依然不安定な雇用環境やガソリン価格の高騰・所得税負担の増加に直面→節約志向・低価格志向の高まり
この影響をモロに受けているのが、ディスカウンターのウォルマート・ストアーズ社。低所得者層をターゲットにしているからです。節約志向や低価格志向の高まりは、収益に対してマイナスに働きます。ウォルマート・ストアーズ社は、個人消費の二極化・消費者層の二極化のダブルパンチを受けていることがわかります。だからこそ、業績を下方修正せざるを得なかったのでしょう。
最後に、記事に掲載されていた消費者の支出傾向に関するデータをここで紹介したいと思います。
【アメリカ消費者の支出傾向がわかる小売部門別売上】
[自動車・自動車部品]11.1%
[建築用部材]9.6%
[小売平均]5.4%
[衣料品]4.2%
[家具]3.3%
[総合小売(GMS)]1.0%
[百貨店]-4.8%
購入頻度のより低い自動車・住宅関連商品が、小売平均を押し上げていることがわかります。一方、来店頻度の高い総合小売や百貨店は、大きく足をひっぱっています。購入頻度の高い商品(財とサービス)の売上が伸びるようになれば、アメリカの個人消費の力強さは本物と言えるのではないでしょうか。
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《今回のヒントのまとめ》
1) アメリカの経済指標によると、個人消費は堅調のように思われるが、小売業・外食企業・消費財メーカーの業績や見通しを見れば、見通しが明るいとは言えない。
2) このようなギャップが生まれるのは、消費に二極化が起きているからである。つまり、自動車・住宅関連商品は売れる一方で、その煽りを受けて、日用品への支出は抑制傾向にある。
3) この要因は、所得税負担の増加や緩慢な給与増加により、可処分所得がさほど伸びていないからであろう。
4) また、消費者層にも二極化が起きている。つまり、資産効果の恩恵を受ける高所得者層は、自動車・住宅関連商品への支出を増やす一方で、税負担の増加やガソリン高騰に直面する低所得者層は、節約志向・低価格志向を強めている。
5) ウォルマート・ストアーズ社は、日用品を扱う上、低所得者層をターゲットにするため、ダブルパンチを受けていると言える。だから、業績下方修正を余儀なくされたのだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
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編集後記
福知山の花火での事故には、驚きました。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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