【694号】高級スーパー・ホールフーズの変質とその強さとは?
by courtesy of That Other Paper
◎本日のニュース
1)見出し
Whole Foods’ Battle for the Organic Shopper
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2)要約
有機食材で有名な高級スーパーのホールフーズが、特売・低価格品の販売に力を入れている。この背景には、節約志向を強めた顧客を奪い合うスーパー間の競争激化がある。一般スーパーが自然食材や有機食材の品揃えを強化する一方で、ホールフーズと直接競合する高級スーパーは出店を加速している。
具体的には、ツイッターやフェースブックで拡散する形で、特定商品の時間限定セールを全国で実施。さらに、日替わり特売品目を増やしている。また、従来は出店を大都市の高級住宅街に絞っていたが、郊外や都心の低所得エリアへの出店も行うようになり、特売・低価格品販売に力を注いでいる。
今後も特定チェーンに対抗した値下げを強化する方針であるが、特売に依存する結果、逆に売上を減らし兼ねないとの批判の声もある。また、特売品以外購入しない消費者の獲得に終わり、収益に貢献する新規顧客獲得にならないとの指摘もある。
◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
The upscale grocer, known for its pricey organic products, is increasingly emulating the discount tactics used by traditional supermarkets.
4)キーとなる英文の和訳
高級スーパーは、値段の高い有機食材で有名であるが、従来型スーパーマーケットが採用してきた値下げ戦略の真似を加速している。
5)気になる単語・表現
upscale
|
形容詞
|
上流階級向けの=up-market
|
emulate
|
他動詞
|
~を見習う、(劣らぬように)真似る
|
tactics
|
名詞
|
方策、策略、作戦、戦略
|
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
高級スーパーのホールフーズマーケット社(Whole Foods Market Inc.)に、大きな変化が起きているようです。その変化をまとめると、次のようになります。
【ホールフーズの変化】
[従来]
ターゲット→高所得者層
販売商品→有機食材など価格の高い商品中心
[今]
ターゲット→高所得者層
販売商品→特売品・低価格品ならびに高価格品
ターゲットに変化がないにもかかわらず、販売商品が変わったのは、ターゲットである高所得者層に変化が起きたからです。それは、
景気後退から始まった節約志向の定着
です。この結果、節約志向を強めたホールフーズの顧客は、より安い商品がある一般スーパーを利用するようになったのでしょう。
【節約志向の定着によるホールフーズが受けた影響】
ホールフーズ顧客の一般スーパーへのシフト→客離れ
また、節約志向の定着は高所得者層だけでなく、すべての消費者に当てはまること。節約しようとする消費者が増えれば、客単価が減少するわけで、その中で売上を伸ばすためには、客数を増やさなければなりません。
【売上・客数・客単価の関係】
売上金額=客数X客単価
客数を増やすために競合スーパーが行ったことが、ホールフーズに大きな影響があったのです。
【競合スーパーが行ったこと】
[一般スーパー]高所得者層を獲得するために、自然食材・有機食材の品揃を強化
[高級スーパー]さらなる高所得者層獲得のため、出店を加速
つまり、直接競合する高級スーパーのみならず、一般スーパーまでもが、ホールフーズの顧客を奪おうとしているのです。高所得者層でも節約志向を強めた消費者は、より安い商品を求めて、一般スーパーにも足を運んだはずです。その一般スーパーに有機食材やらホールフーズで売っている商品があれば、もうホールフーズに行く必要はなくなります。
この競合の動きに対してホールフーズが行っていることをまとめると、次のようになります。
【ホールフーズの競合対策】
[一般スーパー対策]特売・低価格販売への注力
[高級スーパー対策]郊外への出店加速
[総合対策]低所得エリアへの出店開始
一般スーパー対策として、全国規模の時間限定特売を行い、ツイッターやフェースブックで告知しているようです。例えば、アイスクリームを一つ買うともう一つもらえるという特売を、5時間限定で行ったそうです。また、日替わり特売品目を増やすということも行っています。昨年が14品目だったのに対し、今年は17品目に増やしています。
高級スーパー対策としては、従来の大都市の高級住宅街への集中出店からより小さな商圏への出店にも力を注いでいます。ちなみに、約350店のうちの大部分が、大都市の高級住宅街に立地しています。恐らく競合するフレッシュマート社(The Fresh Market Inc.)やスプラウツファーマーズマーケット社(Sprouts Farmers Market Inc.)が、ホールフーズよりも小さな商圏に出店しているので、この二社の顧客を奪おうとしているのです。
最後に総合対策ですが、デトロイトやニューオーリンズ(予定)という低所得エリアへの出店を行っていることは、決して低所得者層をターゲットに加えたからではないでしょう。いくら特売・低価格品の導入を進めたからといっても、一部の商品で一般スーパーとの価格差が埋まったにすぎないからです。では、なぜ低所得エリアに出店するのか。それは、ホールフーズのイメージを壊すためではないでしょうか。つまり、低所得エリアへの出店によって、ホールフーズ=高価格というイメージを無くすことによって、他のホールフーズ店舗への集客増を目指しているのだと思うのです。なので、「低所得車窓対策」ではなく、「総合対策」としました。
値引きに力を入れるホールフーズですが、CEOの話によると、この低価格戦略は今後も進めるようです。さらに進めるとなると、この戦略に対するリスクが指摘されるようになります。
【ホールフーズが進める低価格戦略へのリスク】
[1] 値下げという麻薬の結果、売上減少に至るリスク
[2] チェリーピッカーの獲得に終わり、新規顧客獲得に至らないというリスク
1については、特売は一時的な客数増・収益拡大には寄与するものの、客単価の下落は避けられません。よって、特売に依存し過ぎると、客数増のペースは鈍る一方で、客単価の下落は進むので、売上が減少することになります。
2は、スーパーが損をしてまで特売を行うのは、特売による集客でプロパー商品も売れるからです。つまり、特売により新規顧客獲得に成功し、収益を拡大することを目指しているのです。しかし、特売品だけしか買わないチェリーピッカーしか来店しないと、集客増に成功しても、収益は拡大しません。目指す新規顧客獲得につながらないリスクがあるのです。
このようなリスクがある中でも、ホールフーズが低価格戦略を進めるのは、ホールフーズは収益を拡大させる自信があるからでしょう。実際、懸念される利益率の低下はほとんど起こっていません。直近四半期の粗利益率は、逆に少し上昇しているほどです。(36%→36.6%)
ホールフーズCEOの言い分は、
「ホールフーズにお得な特売があることを知らない消費者は依然多い。」
であり、「ホールフーズ=高価格」というイメージを覆すことができれば客数が増え、特売以外のついで買いも期待できると践(ふ)んでいるのです。実際、利益率が低下していないことを見ると、ホールフーズにはプロパー品のついで買いを促す強みがあるのではないでしょうか。
ホールフーズの利益率を損なわない低価格戦略から、プロパー品を売るというホールフーズの強みを見出すことができます。
Whole Foods Market Inc.
Whole Deal(ホールフーズの節約パンフレット)
Value Gurus(ホールフーズの部門別お得情報)
The Fresh Market Inc.
Sprouts Farmers Market Inc.
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《今回のヒントのまとめ》
1) ホールフーズが特売・低価格販売に力を入れる背景には、消費者の節約志向の定着がある。
2) この消費者の変化に対応して、一般スーパーは有機食材などの品揃えを強化すことで、また、高級スーパーは出店を加速することで、客数増を目指している。
3) これは競合によるホールフーズ顧客の獲得に他ならない。対抗して、ホールフーズは、一般スーパー対策として特売・低価格販売に力を注ぎ、高級スーパー対策としてより小さな商圏への出店を推進している。また、高価格というイメージを無くすために、低所得エリアへの出店も開始した。
4) 低価格戦略に対し、特売依存による売上減や収益に寄与しない客数増を懸念する声もあるが、実際に収益は拡大している。
5) これは、特売品のみならずプロパー品も売れているからである。低価格戦略の推進は、プロパー品を売るというホールフーズの強みを活かしたものではないか。
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編集後記
ホールフーズは一度だけ行ったことがあるのですが、私が感じた強みはフレンドリーな店員でしょうか。
他のスーパーにはこれがありませんね。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
高尾亮太朗のTubmlr⇒ ryotarotakao.tumblr.com
高尾亮太朗のGoogle+⇒ gplus.to/ryotarotakao
高尾亮太朗のPinterest⇒ pinterest.com/ryotarotakao/
今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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