【739号】スポーツ局ESPNが苦悩する、有料テレビ配信とネット配信の両立
by courtesy of Vernon Chan
◎本日のニュース
1)見出し
ESPN’s Internet Rollout Tests Television Cash Cow
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2)要約
スポーツ専門局のESPNの未来は、ニーズの高まるネット配信をどうするかに掛かっていると言っても過言ではないだろう。ケーブルテレビなどの有料テレビ会員の伸びが鈍化する一方で、ネット配信ニーズは高まっているからである。
ただし、全面的にネット配信を行うと、有料テレビの解約数がさらに拡大する恐れがある。有料テレビ配信事業は依然儲かるビジネスだけに、ESPNは有料テレビ配信よりもネット配信を優先できない。そこで、有料テレビ会員だけがネット配信を視聴できるアプリ、ウォッチESPNを開発した。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
But a growing part of ESPN’s future lies across the room, where a similar setup tracks transmissions to the Internet.
4)キーとなる英文の和訳
ESPNの将来の成長の種は、その部屋に潜んでいる。
そこでは、同様の装備によって、インターネットへの通信を追跡している。
5)気になる単語・表現
lie |
自動詞 |
横たわる;置かれている |
setup |
名詞 |
装備 |
track |
他動詞 |
~を追跡する;~に足跡を付ける |
transmission |
名詞 |
伝達;通信 |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
スポーツ専門局のESPNは、主にケーブルテレビなど有料テレビ配信により、プロスポーツリーグの試合などを配信しています。そのESPNがネット配信に力を入れているのは、ネットユーザーの拡大により、有料テレビ契約者の伸びが鈍化しているからに他なりません。鈍化というよりも、実際は減少しており、2011年9月から2013年9月の3年間で150万人も減少しています。また、契約を継続するにしても、低価格のプランに移行する人が増えているようです。これでは、客数・客単価とも減少するわけで、有料テレビ配信の売上もジリ貧になります。
ならば、ニーズの高まるネット配信に力を入れればいいのですが、そう簡単にも行きません。というのは、ネット配信に力を入れれば入れるほど、有料テレビ契約者の解約に拍車が掛かるからです。
実は、ESPNは、2001年からネット配信を行っているのですが、当時と今とではその配信方法や課金方法などビジネスモデルが大きく異なります。対比を行うと次のようになります。
【変化するESPNのネット配信ビジネスモデル】
[2001年頃]ユーザーの最大化を目指す(オープン)→高速インターネットプロバイダーに課金
[現在]ユーザーは有料テレビ契約者に限定(クローズド)→ケーブルテレビなど有料テレビ配信企業に課金
共通点は、両者ともエンドユーザーに課金していない点。2001年当初は、テレビ配信する一部の試合のみをネット配信するものの、基本的に誰でも見ることが出来たようです。課金先は高速インターネットプロバイダーなので、恐らくプロバイダー契約者の特典だったのでしょう。その点、完全なオープンではないものの、有料テレビ契約料よりも安いと思えば、ESPNをネットで視聴するハードルは低かったと思われます。
一方、今のネット配信を視聴できるのは、有料テレビ契約者のみ。専用アプリのウォッチESPN(WatchESPN)から視聴でき、有料テレビ契約者のみそのアプリを利用できます。ちなみに、ケーブルテレビ局のHBOも、プレミアム会員のみにネット視聴を制限しています。課金先は、ケーブルテレビなどの通信プロバイダー。アプリの利用を可能にする場合、契約者ごとに課金しています。
このようにネット配信をオープンからクローズドに転換したのには、ネット配信と有料テレビ配信のカニバリを防ぐため。ニーズが高まっているからといって、ネット配信専用の契約を作れば、有料テレビ契約者がネット配信契約にシフトする恐れがあります。ネット配信契約料は、概して有料テレビ契約料よりも低く設定されるので、シフトが起これば配信による合計売上が減少することになります。さらに、有料テレビ配信は依然儲かるビジネスなので、ネット配信による課金・広告収入の拡大が期待できるにしても、有料テレビ配信からの収入減を補うほどではありません。これでは、いくらニーズがあるとは言え、全体の収益にマイナスの影響を及しかねないネット配信に力を入れられません。
ただし、これで万事うまく行くわけではありません。ネット配信するにあたり、ESPNは次のような課題に直面しています。
【ESPNが直面するネット配信に関する課題】
[1] 有料テレビ契約者に制限するため、解約者や未契約者にリーチできない。
[2] プロスポーツのネット配信権の高騰と複雑化により、サービスの利便性が損なわれる可能性がある
[3] ネット配信権の高騰により、通信プロバイダーが料金に転嫁すれば、さらなる解約を招く恐れがある
1について、ネット配信よりも有料テレビ配信を優先した分、ネット配信による契約者拡大は大して見込めません。現契約者のみへの配信になるので、解約者や未契約者との接点がないからです。
2について、ネット視聴ニーズの高まりにより、プロスポーツリーグが設定する放送権が高騰しています。さらに、その権利も複雑化し、例えばPCやタブレットへの放送権とスマホへの放送権が異なるという事態も起こっています。このように放送に関する契約が複雑化すると、結局エンドユーザーの混乱を招き、エンドユーザーの離反を招く恐れがあります。
3について、放送権高騰の影響を受けるのは、試合を放送するESPNに他なりません。実際、コンテンツ調達コストは、50~100%も上昇しており、ESPNはその上昇分を、通信プロバイダーへの料金に転嫁するしかありません。その転嫁分は、結局エンドユーザーの契約料に転嫁され、契約料の上昇を招きます。ネット配信専用契約があれば、ネット配信ユーザー層が大きく拡大するので、高騰分のエンドユーザーへの転嫁は小さくなります。しかし、有料テレビ契約者に限定しているので、高騰分の転嫁はより大きくせざるを得ません。ただでさえ契約者数が減少しているのに、これではさらなる減少が起きかねません。もちろんこの状況は、有料テレビ配信を優先するESPNにとってマイナスです。
ESPNのネット配信の苦悩を見ると、既存ビジネスを維持しつつ、既存ビジネスと競合しかねない新ビジネスも行うことの難しさが理解できます。難しいからと言って、新ビジネスに取り掛からないと、新規参入者により市場ごと奪われる可能性もあるので、やらざるを得ません。ESPNの事例は、有料テレビ契約者という大きな強みがアキレス腱になりかねないことを教えてくれます。
ESPN http://espn.go.com/
WatchESPN http://espn.go.com/watchespn/
HBO www.hbo.com
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《今回のヒントのまとめ》
(1) ESPNのネット配信では、有料テレビ契約者しか視聴できない。その理由は、ネット配信と有料テレビ配信がカニバリしないためである。
(2) ただし、このやり方が三つの課題を生み出している。一つ目は、ネット配信により契約者拡大が見込めないことである。現有料テレビ契約者に限定するため、解約者や未契約者にリーチできない。
(3) 二つ目は、ネット配信権の高騰と複雑化により、サービスの利便性が損なわれることである。使いにくいサービスならば、ネット配信を臨む消費者の離反を招く恐れがある。
(4) 三つ目は、ネット配信権の高騰が有料テレビ契約料に転嫁されることで、さらなる解約を招く可能性があることである。ネット配信を有料テレビ契約者に限定することにより、ネット配信ユーザー層の拡大は見込めず、ネット配信権の上昇分を、有料テレビ契約者だけで負担することになる。
(5) 有料テレビ配信というドル箱事業を持っているからこそ、ESPNはこのような苦悩を抱えることになる。イノベーションが起こる時、大きな強みは弱みになりかねない。
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ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
これまではケシポンを使っていたのですが、インクがすぐに無くなるなど、面倒なので、ついにシュレッダーを購入しました。
いろいろ悩みましたが、選んだのはこちら。
大きさ・消音性・使いやすさ、そして価格で、一番バランスがいいと判断したからです。
そして、実際に使ってみると、少し音は大きいものの、そこそこのスピードで紙を吸い込んでいき、たまった個人情報付き紙を処分できました。
大丈夫とは思いますが、夜間の利用はやめておこうと思います。
ちなみに、コクヨの商品も検討しましたが、シュレッダー後の紙片が大きいので却下。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
そろそろスーパーボールの季節。
WSJでもその広告料金の高騰ぶりが話題になっています。
ネットユーザーが拡大する中で、それだけ視聴率の高いテレビ番組が未だ存在することは、とても不思議です。
アメリカ人は、日本人以上にテレビが好きなのかもしれませんね。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
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今回は私が恩返しします!
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