【777号】ユナイテッド・コンチネンタルがマイル付与基準を変える理由
Photo:United 41 – N17139 By InSapphoWeTrust
◎本日のニュース
1)見出し
United Continental’s Miles Program to Penalize Average Fliers
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2)要約
ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス社が、マイルプログラムの変更を計画している。付与基準を飛行距離からチケット価格に変える。ライバルのデルタ・エアラインズ社など他の航空会社は、既に同様の変更を行っており、追随形となる。
この変更の背景には、頻繁に利用し収益への貢献が大きな乗客の不満がある。支払った金額の割に、マイルプログラムの特典が小さい一方で、長距離チケットを安く購入して賢くマイルを貯める利用者が存在する。
マイルプログラムに関して、特典への引き換えマイル数を、空席率に応じてより細かく設定する動きもある。従来3つしか基準のなかったものを2つ追加して5つにしたのは、デルタ社。ユナイテッド・コンチネンタル社は、引き換えに必要なマイル数を引き上げている。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
United Continental Holdings Inc. plans to change its frequent-flier plan to award miles based on ticket price rather than distance flown, becoming the latest carrier to shift its loyalty program to favor bigger spenders.
4)キーとなる英文の和訳
ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス社の計画では、フリークエントフライヤープログラムを変更し、飛行した距離ではなくチケット価格を基準にマイルを付与するという。
これは、航空キャリアの中で広がる、ロイヤリティプログラムを変更して、より支払い金額の多い利用者を報いようとする最新事例である。
5)気になる単語・表現
frequent | 形容詞 | たびたびの、頻繁に起こる;常習的な |
favor | 他動詞 | ~をひいきにする、好む |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
ユナイテッド・コンチネンタル社が計画しているのは、マイル付与基準を飛行マイルからチケット価格に変更するというもの。同様の変更を、デルタ航空・サウスウェスト航空・ジェトブルーエアウェイズ・ヴァージンアメリカは既に実施済み。この基準変更は、航空業界全体のトレンドとも言えます。その背景には、次のような事情があります。
【航空業界がマイル付与基準をチケット価格に変更する理由】
[1] 利用頻度が高く高いチケットを購入する乗客の不満
[2] マイレージラン(mileage run)の普及
1について、頻繁に利用して、さらに高いチケットを購入してくれる顧客は、航空会社にとっては上得意客。売上の大部分をもたらしてくれるからです。その割に、上得意客への報いはそう大きくありません。その理由は、飛行マイルに応じてマイルを付与していたためです。近距離を正規料金で頻繁に飛行する顧客は、飛行マイルを稼ぐことはできません。
2について、逆に格安チケットで長距離を飛行してマイルを稼ぐ活動が普及しています。これが、マイレージランというもの。年度末までに、できるだけ長距離をできるだけ安く飛ぶことによって、マイルを稼ぐだけでなく、マイレージプログラムのステータスの維持・上昇を狙います。この活動が普及すればするほど、上得意客の不満は膨らみます。
さらに、ユナイテッド・コンチネンタル社は、ステータスによってマイル付与数に差を付けます。
【ユナイテッド・コンチネンタル社のステータス別マイル付与新基準】
[ノーステイタス]1ドルにつき5マイル
[シルバー会員]1ドルにつき7マイル
[トップレベルの1KS]1ドルにつき11マイル
利用頻度の高い1KS顧客は、ノーステイタス顧客よりも2倍以上マイルが付与されることになります。利用頻度が高く、高いチケットを購入する上得意客は、かなり優遇されることがわかります。
冷静に考えれば、マイル付与基準をチケット価格にするのは、当然のこと。クレジットカードなどのポイント制度では、支払金額ベースでポイントが付与されるからです。通常、飛行距離とチケット価格は比例しそうですが、季節によって空席率に大きな差が出るために、そうなりません。例えば、同じ飛行距離のフライトでも、チケット価格は繁忙期と閑散期では2倍以上差が出ます。このギャップに目を付けたのが、マイレージランに他なりません。マイル付与基準をチケット価格に変更するということは、航空会社の特異な慣習が改められたということになります。
コスト削減という意味合いもあるでしょう。燃料費の高騰に悩む航空会社には、飛行マイルを賢く稼いでいた顧客に気前よく特典チケットをばら撒く余裕が、もうありません。だからこそ、特典チケットの交換基準やステータス基準をより厳しくしているのです。
デルタ航空は、特典チケットへの引き換え必要マイル数を、より細かく設定しました。従来は、季節性による空席率に応じて基準を3つ設定していましたが、これを5つに増加。これにより、繁忙期の特典チケットを獲得するのに必要なマイル数が増えることになります。
引き換え基準の追加について、ユナイテッド・コンチネンタル社はまだ行っていません。ユナイテッド・コンチネンタル社が行ったのは、特典チケットへの引き換えに必要なマイル数の引き上げ。より明確な基準の厳格化です。また、デルタ航空は、エリートステータスの維持条件を厳格化し、最低年間支払金額を増額させています。
航空業界がマイル付与基準を変えたのは、上得意客の不満が大きくなったからに他なりません。だから、これまでの飛行距離に応じてマイルを付与する慣習が、廃止されつつあるのです。概して、上得意客よりも新規顧客を優先しがちですが、収益への貢献度がより大きいのは上得意客です。上得意客を優遇する施策を行えば、既存顧客を維持できるだけでなく、他社の上得意客を獲得できるかもしれません。特に、新規顧客を優先しがちな業界では、上得意客優遇政策は大きな差別化になります。
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《今回のヒントのまとめ》
(1)航空業界では、マイル付与基準を飛行マイルからチケット価格に変更する企業が増えている。
(2)その背景には、高いチケットを買って頻繁に利用する上得意客の不満があり、一方で賢くマイルを貯めるマイレージランの存在がある。
(3)支払金額に基準を変更することは、クレジットカードなどのポイント制では普通のことであり、航空業界が異常な慣習を葬り、正常な形に戻りつつあることを示す。
(4)また、特典チケットへの引き換え基準の追加や必要マイル数の引き上げなど、コスト削減のための変更も行われている。
(5)概して、上得意客よりも新規顧客を優遇しがちであるが、収益への貢献度がより高いのは上得意客である。上得意客の優遇は、既存顧客維持だけではなく、他社の上得意客の獲得をももたらしてくれる。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
またまた第三のビールの新製品を見つけました。
それは、サッポロビールのホワイトベルグ。
試しに一缶飲んでみましたが、これもよかった。
それどころか、この美味しさでこの価格はあかんやろ、と思ったほど。
まるでヴァイツェンです。
ホワイトベルグのせいで、地ビールや外国産高級ビールの売上落ちるかもしれませんよ。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
実は、ユナイテッドのマイレージプラスプログラムに参加しています。
もっぱらクレジットカードの利用ですが、マイルはかなり貯まるもの。
ユナイテッドのいいところは、事実上利用期限が無いところ。
そして、悪いところは、関西からのフライトが極めて少ないところ。
そして、マイル残高だけが増えていきます。
マイルに利子つかないかなぁ。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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