【784号】米大手ビールメーカー、今夏のマーケティングとその評価とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Beer Makers Pray for a Fruitful Summer
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2)要約
夏場、特に独立記念日の週に売上が伸びるビール市場。今年の大手ビールメーカーの販促の特徴は、フレーバービールへの期待である。
フレーバービールを発売するのは、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社、ミラークアーズ社、ハイネケン社である。いずれも、ビール市場から顧客を奪うスピリッツ・カクテルを意識した商品である。また、夏は、カクテルよりもビールの売上が伸びやすいということも、ビールメーカーにとって追い風である。
大手ビールメーカーが直面する問題は、消費者のスピリッツ・リキュールへのシフトと地ビール市場の拡大である。これに対し、ワールドカップなどイベントの活用や輸入ビールの販促強化・イメージアップなどで、ビッグブランドの復活を狙う。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
This week is crunchtime for the U.S. beer industry, which could badly use a summer pick-me-up.
4)キーとなる英文の和訳
今週は、全米ビール業界にとっては書き入れ時である。
しかし、夏の需要拡大をうまく活用しているとは言いがたい。
5)気になる単語・表現
crunch | 他動詞 | (数)を大量に計算する |
pick-me-up | 名詞句 | 元気を回復させるもの |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
ビール市場にとっては、夏は最大の需要拡大期。特に、独立記念日(7月4日)から労働者の日(レーバーデー、9月第一月曜日)は、非常に重要な期間なのです。次の数字を見れば、一目瞭然。
【ビール需要が高まる期間】
[1] 独立記念日~労働者の日→年間の3分の1の売上を占める
[2] 独立記念日の週→週平均売上高よりも30~40%増える
[3] 夏→年平均よりも13%売上が伸びる
特に、この夏はサッカーワールドカップという世界的イベントがあるので、ビールの需要がより高まりやすいのです。
一方で大手ビールメーカーは、次のような課題に直面しています。
【大手ビールメーカーが直面する課題】
[1] 顧客のスピリッツ・リキュールへのシフト→ビールからの顧客流出
[2] 地ビール市場の拡大→ビッグブランドからの顧客流出
要は、顧客が流出することにより、大手ビールメーカーのビール売上が減少しているのです。ちなみに、地ビールを含む国内ビール出荷量は、今年1月~5月までで0.1%減少しています。
そこで、このような課題に直面した大手ビールメーカーは、ビール売上を回復させようと、次のような販促を行っています。
【今夏の大手ビールメーカー販促のまとめ】
[1] フレーバービール・高アルコールビールの投入(AB・ミラークアーズ・ハイネケン)→スピリッツ・リキュール市場への顧客流出阻止・顧客奪還
[2] 国旗付き限定商品や奨学金などイメージアップ(AB)
[3] W杯などイベント活用(AB)
[4] 輸入ビールの販売強化(ハイネケン・コンステレーションブランズ)
[5] 景気回復への期待
※ABとはアンハイザー・ブッシュ・インベブの略
1について、フレーバービールを投入することで、飲みやすいカクテル市場の移行したユーザーの奪還を狙っています。フレーバービールとして、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社は、マルガリータに似たバドライトのフレーバーバージョンを、ミラークアーズ社はクアーズライトの季節限定版を、ハイネケンはレモン風味とテキーラ風味の商品を投入しています。また、変わり種としては、ミラークアーズ社のミラーフォーチュンがあり、これは6.9%のアルコール度数のビール。ロックで飲むことを提唱し、バーボン市場を意識しています。
2について、イメージアップ戦略に力を入れるのは、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社。国旗の入った限定版バドワイザーを投入し、アメリカの定番ビールとしてアピールしています。また、死傷米兵の家族・遺族への奨学金も実施し、イメージアップを図っています。
3について、ワールドカップ公式ビールとして売り出すのは、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社。テレビCMを大量に投入するとともに、パブリックビューイングを主催しています。消費者の接触機会を増やすことで、ロイヤリティを高めようという戦略です。
4について、ハイネケンブランドの復権を狙うのがハイネケン社。8.5オンス(約250ml)のスリム缶の投入で輸入ビールトップの地位奪還を狙います。コンステレーションブランズ社は、全米の販売権を持つメキシコビール・コロナの販売を強化。この背景には、アメリカでのメキシコビール人気があります。
5について、景気回復に期待を寄せるのは、ミラークアーズ社。失業率が低下している20代男性に的を絞り、販促を実施しています。
これらの販促内容を気づいたのは、決して細かいとは言えず、かなり大雑把であるということ。もともとビールは、マス(大衆)を対象にした商品であり、市場規模が大きいので、販促内容が大雑把になっても仕方ないかもしれません。また、夏という最需要期やイベント・景気回復という他力本願という印象も拭えません。
そもそも、大手ビールメーカーの売上が低迷するのは、ライトユーザーをスピリッツ・リキュール市場に奪われ、ビール愛好家を地ビールに奪われたからに他なりません。消費者の知識・選択肢が飛躍的に増加し、「なんとなく」買われていたビールが選ばれなくなったからです。そう考えると、スピリッツ・リキュール市場を競合に設定したフレーバービールでは、ビールに似たカクテルという意味で、本物に近いという点でカクテルに負けます。一方で、ビール愛好家を奪われた地ビール対策は、輸入ビールの販売強化のみで、迫力不足と言わざるを得ません。
キーセンテンスにもあるように、記事自体が大手ビールメーカーの施策に批判的。スピリッツ・リキュール市場に対抗した商品も含めて、他力本願なイメージを拭えません。この点で言えば、プレミアムビールに力を入れる日本の大手ビールメーカーは、第三のビールで量を確保し、プレミアムビールで単価引き上げを狙っているので、より戦略的だと言えます。
[記事で紹介されたフレーバービールなど新商品]
Bud Light Mang-O-Rita and Raz-Ber-Rita
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《今回のヒントのまとめ》
(1)アメリカ大手ビールメーカーが直面するのは、スピリッツ・リキュール市場や地ビール市場への顧客流出。
(2)これを阻止するため、最需要期の夏に行う販促の特徴は、フレーバービールの投入、イメージアプ、イベント活用、輸入ビールの販促強化、景気回復への期待などである。
(3)フレーバービールをビールに似たカクテルと考えれば、いずれも他力本願なイメージを払拭できない。
(4)ビッグブランドのビールの売上が低迷するのは、消費者の知識・選択肢が増加することにより、「なんとなく」ビールが選ばれることは少なくなったからではないか。
(5)そう考えれば、ビールに求められるのはより本格的なビールであり、その点、プレミアムビールに力を入れる日本の大手ビールメーカーはより戦略的だと言える。
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ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
たまたま、インテックス大阪に行った時にランチを食べたのが、こちらのイタリアン料理店。
高級ホテルの中のお店ですが、ランチは意外にリーゾナブルでした。
量の結構多く、2100円のランチに大満足。
特に、今日のピザ(ラグーとバジリコのピザ)はかなり美味しかったです。
残念ながら、ランチのみの営業。
お昼時のデートに最適でしょうか。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
今年の夏のアルコールで一番注目しているのは、スパークリング日本酒です。
スーパーでの露出も大きくなりました。
どれぐらい売れているのでしょうか。
結構美味しいのですよ。
私が好きなのは、ありきたりですが、松竹梅の澪スパークリング。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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