【814号】ヒルトンが再参入するブティックホテル、その戦略とリスク要因とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Hilton Readies a Boutique Reboot
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2)要約
ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス社がニ年ぶりにブティックホテルに参入することを発表した。「カノピー」というブランドで、競合よりも顧客層を広く設定し、割安な宿泊料金で提供する。
ブティックホテルは競争が激化しているカテゴリーで、グローバルに展開する大型チェーンの参入が増えている。ヒルトンは、旅行者が求める地域性を重視したサービスで差別化する。
ただし、世界での大量出店を目指すヒルトンに対し、大型チェーンが小型・高級型のブティックホテルを大量生産できるのは難しいのではないか、との声もある。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
After a false start that set back its plans at least two years, Hilton Worldwide Holdings Inc. is launching a boutique, or “lifestyle,” hotel chain that aims for a wider audience and lower room rates than some direct competitors.
4)キーとなる英文の和訳
開始に失敗し、少なくとも二年間計画を遅らせてきたが、ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス社は、ブティック、つまり「ライフスタイル」ホテルチェーンの展開を始めようとしている。
そのチェーンが目指すのは、幅広い層の獲得と直接競合する他社よりも低い宿泊料金での提供である。
5)気になる単語・表現
false | 形容詞 | 誤った |
set back | 他動詞句 | ~を遅らせる |
boutique | 形容詞 | ブティック(流行の婦人服・装身具・靴などを売る小さな店) |
aim for | 自動詞句 | ~を目指して進む |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
ヒルトンが2年ぶりに再参入するブティックホテル。ブティックホテルとは、「小型」「デザイン重視」「若いおしゃれ好きがターゲット」という特徴を持ちます。そのブティックホテル部門は、大型ホテルチェーンの参入が相次ぎ、中型チェーンとの競争が激化しています。
【ブティックホテルに参入する大型ホテルチェーン】
- ロウズ・ホテルズ社→「OEコレクション」として来年1月から参入。毀損・新規の独立系高級ホテルとマネージメント契約。高級ライフスタイルホテルとして展開予定。
- ベストウェスタン・インターナショナル社→「バイブ」ブランドを発表。中型ブティックホテルで、低価格運営・流行が特徴。
- マリオット・インターナショナル社→ホテル経営者のイアン・シュレイガーと協業し、「エディション」ブランドを展開。
- ハイアット・ホテルズ社→「アンダーズ」ブランドとして展開
これら世界的な大型ホテルチェーンが競合するのが、ブティックホテルに特化した中型チェーン。キンプトン・ホテルズやコミューン・ホテルズ&リゾーツなどが、これにあたります。大型チェーンがブティックホテル強化に動くのは、既存顧客がブティックホテルに奪われていることが看過できなくなったからでしょう。そして、ヒルトンがついに再参入するというわけです。
「再参入」と表現したのは、ヒルトンは5年前に一度参入しているから。しかし、失敗に終わりました。その要因は、「ヒップ」さを出すために薄暗くてシックなホテルにしたのに対し、より自然なライトを求める消費者が増えたからです。つまり、顧客ニーズの変化に対応できなかったことが要因。また、ブティックホテル参入に関して、スターウッド・ホテルズ&リゾーツ・ワールドワイド社から訴訟を受けます。その結果、2年間の運営が禁止されました。その禁止期間が終わって、晴れて再参入を果たせるようになったのです。
そこで、ヒルトンのブティックホテル「カノピー」の経営戦略をまとめてみます。
【ヒルトンのカノピーブランドの経営戦略】
[客層戦略]競合よりも幅広く設定
[販売戦略]割安な宿泊料金を設定
[商品戦略]地域性重視、最新ITを活用
[組織・時間戦略]競合よりも速く多店舗展開を進める
客層戦略は、若いおしゃれ好きな消費者をメインターゲットにするのに対し、カノピーは顧客層を幅広く設定。これは、流行を追い過ぎた失敗経験からでしょう。よりナチュラルなデザインを採用し、万人受けを狙っています。つまり、客層での差別化はほとんど行っていません。
販売戦略では、幅広い客層に受けるために割安な宿泊料金を設定。それを後押しするのが、商品戦略に出てくる最新のIT活用です。例えば、ルームキーやチェックインをスマホで行えるようにすることで、初期投資・運営コストを削減し、宿泊料金の引き下げの原資にしています。
商品戦略では、地元食材を積極的に活用するなど地域性を重視。例えば、カノピー内のバーでは、地元ワインや地ビールを幅広く扱うようです。この背景には、旅行者のニーズがあります。つまり、日常生活から離れて地方・異国を旅行しているので、普段体験できるモノ・コトよりもその地域でしか味わえないモノ・コトを楽しみたいというニーズです。この意味では、ターゲット層である旅行者により即したコンセプトと言えます。
組織・時間戦略では、顧客層を幅広く設定し、割安な宿泊料金で提供するからには、多店舗展開による収益拡大は避けられません。そのため、「小型」「高級」を特徴とするブティックホテルでの世界規模の多店舗展開を目指します。この点には、ヒルトンの戦略を疑問視する声もあるようで、実際に最も人気のあるブティックホテルでも50軒ほどしかなく、多店舗展開しにくい業態なのです。
これら経営戦略を総括すると、ヒルトンはハード(建物・デザインなど)よりもソフト(販売商品やサービスなど)での差別化を目指していると言えるでしょう。変更にコストの掛かるハードはより万人受けするものにし、変更しやすいソフト面で変わりやすい顧客ニーズに対応しているのです。
この点は、逆にリスク要因にもなりえます。ソフト面での差別化は、属人的な要素が強く、高いマネージメント能力が必要とされるからです。しかも、世界的に多店舗展開をするとなれば、その国の文化との協調も必要とされます。
ハードではなくソフトで差別化することは、規模の経済でコスト優位性・ブランド優位性を持ってきた大型チェーンには難しいことでしょう。ホテル業界では、ソフト面が本当の競争要素なのかもしれません。
【大型チェーンのブティックホテルブランド】
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《今回のヒントのまとめ》
- ヒルトンが「カノピー」ブランドでブティックホテルに再参入するのは、大型ホテルを好まない若者層がブティックホテルに奪われているからである。
- カノピーの特徴は、幅広い顧客層、割安な宿泊料金、地域性重視・最新IT活用、世界的な多店舗展開である。
- 差別化に力をそそいだのは地域性重視というソフト面。地域性こそ旅行者が求めていることであり、また以前にハード面の差別化が顧客ニーズの変化に対応できなかったからである。
- ソフト面での差別化は属人的な要素が強いために、高いマネージメント能力が必要とされる。これが、カノピーのリスク要因となるだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
菊正宗の超特選大吟醸を、開栓後数日経過してから飲みましたが、辛さがさらに味わえ、個人的にはとてもよかったです。
今のところ、灘の大吟醸ランキングでは、菊正宗がトップです。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
タイガース強いですね。
日本シリーズ出場が現実味を帯びてきました。
今一番ドキドキしているのは、在阪の放送局とダイエー甲子園店でしょう。
ダイエー甲子園店の売上は、甲子園で阪神戦があるかどうかで大きく違いますから。
阪神日本一で、ダイエーの業績が上がったりして。(そりゃ、ないか)
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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