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【839号】破綻事例のあるビジネスなのに、資金調達に成功したインスタカートのビジネスモデル

banana at supermarket

 

◎本日のニュース

1)見出し
Rebuilding History’s Biggest Dot-Com Bust

 

 

 

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2)要約

ネット食料品販売のインスタカートは、2年前に創業したばかりだが、VCから2億2000万ドルを調達したと発表した。推定時価総額は、昨年6月の4億ドルから20億ドルにまで膨らんだ。食料品販売のネット販売と言えば、ウェブバンが思い出されるが、ウェブバンは上場こそしたものの、結局赤字から抜け出せずに破綻した。

 

インスタカートとウェブバンはその外部環境が大きく異なり、活用できる資源も違う。ウェブバンの最大の失敗要因とされるのは、ネット接続スピードの遅さである。一方のインスタカートは、高速ネット回線を利用できるばかりでなく、スマホの普及の恩恵を大きく受けている。また、既存のスーパーや独立請負人を活用するなどにより、コスト・リスクを社外と供給している。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

Instacart has a far different approach, taking advantage of existing grocery stores by dispatching couriers to Whole Foods or Safeway and delivering goods within an hour.

 

4)キーとなる英文の和訳

インスタカートは、全く異なるアプローチを採っている。

それは、既存のスーパーを活用し、運搬人をホールフーズやセーフウェイに派遣する。

そして、1時間以内に商品を配送する。

 

5)気になる単語・表現

far 副詞 はるかに、大いに、ずっと
take advantage of 熟語 (機会など)を利用する
dispatch 他動詞 ~を派遣する
courier 名詞 運搬人

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

今回はネットスーパーに関する記事。既存のスーパーのネット販売ではなく、ネット専業企業による食料品販売なので、食料品のネット販売という表現の方がしっくりするかもしれません。

 

食料品のネット販売と言えば、ネットバブル時代のウェブバン・グループ社が思い出されます。当時そのビジネスモデルが評価され、上場まで至るも、結局赤字が解消されずに、破綻することになります。もちろん、ウェブバンにVC(ベンチャー・キャピタル)も投資しているわけで、投資したVCは大きな損失を負うことになりました。このような事例があるにも関わらず、同様のビジネスであるインスタカート社は、操業二年目にして2億2000万ドルをVCから調達することに成功します。

 

もちろん、この要因には、インスタカートは失敗したウェブバンの教訓を活かしたビジネスモデルがあります。そこで、ビジネスモデルに関して、インスタカートとウェブバンの違いをまとめると、次のようになります。

 

【ウェブバンとインスタカートのビジネスモデルの違い】

[ウェブバン]食料品の調達・保管・配達まで自社で完結→保管用の冷蔵倉庫などの初期投資が大きい

[インスタカート]既存のスーパー・独立請負人と提携・活用→初期投資は小さい

 

初期投資額に大きな違いがあります。ウェブバンは、保管用の巨大冷蔵倉庫を自社で建設したことが、赤字の大きな要因になったようです。建設費に3000万ドル~4000万ドルも掛かる一方で、食料品販売は薄利なビジネスなので、構造的な赤字に悩まされます。一方のインスタカートは、ウェブバンのような巨額の初期投資はせずに、外部資源を活用しました。具体的には、既存のスーパーと提携し、独立請負人と契約することで、固定費を大きく圧縮することに成功しています。

 

外部環境にも大きな違いがあります。

【ウェブバンとインスタカートの外部環境の違い】

[ウェブバン]ネット接続スピードが遅い→これが最大の失敗要因

[インスタカート]ネット高速接続、どこでネットを使えるスマホの普及→高い利便性

 

ネット接続スピードに両社の大きな違いがあります。インターネット黎明期に操業したウェブバンは、接続スピードの遅さが利便性の低さにつながり、ビジネス拡大の大きなハードルになりました。一方のインスタカートは、高速ネット接続ばかりか、スマホ普及の恩恵まで受けることができます。つまり、どこでも高速ネット接続が利用できる環境が整っていることが、ネットで集客・販売を行うインスタカートにとって、大きな強みとなるのです。

 

それ以外にもVCがインスタカートに着目した理由があります。それは、

 

自宅から食料品を注文したいニーズは底堅いから

 

ということです。特に、働く母親や若いエリートにとっては、何よりも時間を有効に使いたいもの。少々料金を払っても、車でスーパーに行って買い物する時間を回避したいのです。利便性を求めるこのニーズは盤石であり、流行や景気の変動で大きく影響を受けるものではありません。この底堅いニーズを対象にするからこそ、VCはインスタカートに投資するのです。

 

以上、失敗事例のあるビジネスを運営するインスタカートがVCからの資金調達に成功した理由をまとめると、次のようになります。

 

【インスタカートがVCからの資金調達に成功した理由】

  • ウェブバンの時よりもネット接続スピードが高速であり、利便性が高いサービスだから
  • どこでもネットを使えるスマホの普及により、ウェブバンの時よりも見込み客が多いから
  • スーパーとの提携・独立請負人との契約により、コスト・リスクを外部化し、収益を上げやすいビジネスモデルだから
  • 自宅から食料品を注文したいという底堅いニーズを対象にするため

 

一方で、インスタカートのビジネスは、以下のような課題に直面しています。

 

【インスタカードの課題】

  1. 構造的な低収益性→創業以来赤字が継続
  2. 激しい競争環境
  3. 提携スーパーとの縛り

 

1は、食料品販売というビジネスに起因する問題です。食料品販売は、もともと利益率が低いビジネス。市場全体の平均でも、税引き後の利益率はたったの1.3%です。実際、インスタカートは、68ドルの売上に対し1.5ドルしか利益を獲得することができません。これでは、創業以来赤字が続くのも納得であり、黒字化は至難の業でしょう。

 

2について、食料品のネット販売は、底堅いニーズを相手にするだけあって、競争はかなり激しいようです。ネット専業のアマゾン・ドット・コム社やフレッシュ・ダイレクト社、グッド・エッグ社のみならず、既存スーパー・GMS・ディスカウントストアのネット通販とも競合します。さらには、一部地域で食料品の販売をするネットの巨人・グーグル社とも競合することになります。これだけ競争が激しいからこそ、なかなか利益率を引き上げることもできないのです。

 

3について、提携するスーパーには、ソフトを提供し、レジシステムを統合するのに独占契約を結ぶことになります。この結果、独占契約したスーパーの商品しか販売できません。例えば、他のスーパーのPBが欲しい消費者を、インスタカートは顧客にできなくなります。この縛りのせいで、将来の業容拡大に制限が生まれます。

 

これら課題に対し、インスタカートは宅配商品を食料品以外に広げることで、黒字化を目指します。インスタカートは、独立請負人の運搬人に、一回の配送に対し最低10ドル支払うので、食料品以外にも広げることで一回の売上が増加すれば、インスタカートの利益率・利益額は大きく改善することになります。

 

それにしても、インスタカートの利益率の低さには驚きます。今後黒字化を目指すならば、より粗利益率の高い雑貨などを取り扱う必要があるのではないでしょうか。そうなれば、食料品のネット販売というよりも、運搬代行と言った方が適切かもしれません。食料品販売・運送業双方とも、利益率の低さを規模の経済による利益額の拡大で補うビジネス。いずれにしても、中小企業よりも大企業の方が有利であるので、何か他の価値を提供しないと、なかなか難しいのではないでしょうか。

 

Instacart

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ウェブバンの破綻で痛い目にあった一方で、同業の食料品のネット販売を行うインスタカートにVCは投資を行った。
  2. その理由は、そのビジネスモデルに大きな違いがあるからだ。ウェブバンは、巨大冷蔵倉庫の建設など初期投資が大きかったのに対し、インスタカートは既存スーパーとの提携や独立請負人との契約などにより、コスト・リスクを外部化し、固定費を圧縮している。
  3. また、外部環境の違いもインスタカートに味方する。ウェブバン失敗の最大の要因とされたネット接続スピードでは、スマホの普及により、どこでも高速ネット接続が可能となった。見込み客の拡大につながる。
  4. さらに、食料品を自宅から注文したいという底堅いニーズに対応するので、景気や流行の影響を受けにくいビジネスと言える。
  5. 一方で、食料品販売という構造的な低収益性や激しい競争環境、提携スーパーとの縛りという課題もある。これについては、宅配商品を食品以外に広げることで、利益率・利益額を拡大し、早期の黒字化を目指す。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

先日、ふるさと納税でいただいた純米吟醸を飲みました。

さすが、純米吟醸だけあって飲みやすく、日本酒初心者にもぴったりではないでしょうか。

まだまだ素人の私のなので、味の差はよくわかりませんが、私の口には合いました。

ただ、飲みやすいので、グイグイいってしまうのがネックですね。

純米吟醸つくばの紅梅一輪1.8L

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

阪神の鳥谷選手が残留を決めてくれました。

本当にありがとうございます。

これで、80周年を迎える阪神タイガースが優勝・日本一になる可能性がゼロでは無くなりました。

あくまでゼロではなくなっただけで、他チームの補強を見ると、今年はタイガースにとって辛い一年になる確率の方が高いと思いますよ。

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

 

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