【843号】ネット通販が成長するアメリカでショッピングモールが元気な理由
◎本日のニュース
1)見出し
High-End Malls Get Boost from High-Tech Stores
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2)要約
ショッピングモールでは、従来のアンカー店が低迷する一方で、販売効率の高いテナントが集客・収益に寄与している。そのテナントは、電気自動車のテスラモーターズやアップルなどのハイテクに特化した小売店である。
ハイテクテナントは、販売する商品の単価が高いので、面積あたりの売上はかなり高い。モールにとっては、売上の一部が賃料収入として入るので、賃料収入が見込めない大型アンカー店よりも収益への貢献度は高い。また、集客力の高いため、小売シェアを高めるネット通販への対抗策ともなる。
一方、大型百貨店などの従来型のアンカー店は、売上低迷が続く。売り場面積が大きいだけに販売効率も悪い。販売効率の悪いテナントをハイテクテナントに変更することで、金融危機以降、ショッピングモールは毎年売上を伸ばしている。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
The nation’s high-end malls are posting record sales, thanks in part to the growing presence of technology retailers that sell pricey goods.
4)キーとなる英文の和訳
全国の高級ショッピングモールは、売上記録を伸ばしている。
その要因の一部として、単価の高い商品を販売するハイテク小売店の存在感の高まりが挙げられる。
5)気になる単語・表現
high-end | 形容詞 | 高級な、高性能の |
post | 他動詞 | (得点など)を記録する;(ビラなど)を貼る |
in part | 副詞 | ある程度、いくぶん(partly) |
presence | 名詞 | 存在感;存在、影響力 |
pricey | 形容詞 | 高価な |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
小売市場でネット通販のシェアが伸びる中、苦戦していると思われた実店舗小売でも、モールは伸びているよという記事です。まずは、データから。
【売上を伸ばすアメリカモール市場】
[モール全体]2009年383ドル→2014年478ドル
[REIT保有モール]2010年比で36%増
[REIT保有モール]2014年第三四半期は550ドルで、2007年の最高額の450ドルを超える
※すべて平方フィートあたりの売上金額
ネットで何でも買える時代であれば、時間消費型のモールは消費者に敬遠されてもいいもの。しかし、データを見ると、単位面積あたりの売上は伸びています。その理由は、
販売効率の低いテナントから販売効率の高いテナントへの変更が進んでいるから
です。
では、販売効率の高いテナントとは何か。それは、ハイテクに特化した小売店。例えば、電気自動車のテスラモーターズやアップル・マイクロソフトの直営店です。このハイテクテナントの特徴は、
販売商品の単価は高い
集客力がある
ということ。つまり、ハイテクテナントを入れることで、客単価・客数とも伸びるので、その積である売上も増加するのです。
一方、従来モールへの集客の役割を担っていた大型アンカー店は、売上が低迷しています。その代表格は、大型の百貨店。JCペニー社は、2010年から2013年で、単位面積あたりの売上が30%減少。シアーズ・ホールディングス社は、2010年以来既存店売上高が累積で12.1%減少しています。両社とも、店舗面積の大きな大型店主体であり、販売効率の低いテナントなのです。
集客力の高いハイテクテナントを誘致することは、モール運営者にとって別のメリットもあります。それは、売上に連動する賃料収入が見込めるということです。モールに入るテナントなら、どこからでも賃料収入があるように思えますが、大型アンカー店は異なります。大型アンカー店は、従来販売スペースを直接保有していることが多いようです。だから、売上に連動する賃料収入は発生せず、モールの収入は共同スペースの利用料のみ。それでもモール運営者が大型アンカー店を設けるのは、集客に大きく寄与するから。今では、その効果も薄れているので、モール運営者は、大型アンカー店の売り場面積を狭める一方で、賃料収入が見込めるテナントを増やしています。これは、モール収益に寄与することになります。
一方のハイテク小売店にも、モールに出店する理由が存在します。それは、
新規顧客を獲得できるから
です。例えば、テスラモーターズの場合、モールに店舗を設けることで、わざわざディーラーまで足を運ぶほど電気自動車に興味がない人に、実物を体験してもらうことができます。
モールがハイテクテナントに集客を期待していることは、その立地を見れば一目瞭然です。シアトルの高級ショッピングモール・ベルビュースクエアでは、目立つ場所のテナントがハイテク小売店に変更されています。具体的には、
エディ・バウアー→マイクロソフト
タルボット、ベイリーズ・バンクス・アンド・ビドル(アクセサリー)、ヤンキー・キャンドル(キャンドル)→アップル
ザ・ボディ・ショップ→テスラモーターズ
ドミノ(靴)→ライカ(カメラ)
というように、テナントが変更されています。他のモールでも見られるようなアパレル・雑貨チェーンから、ハイテク小売店に変わっていることがわかります。ハイテク小売店を目立つ場所に設置することで、ネット通販への顧客離れを防止しているのです。
ちなみに、ハイテクテナントの販売効率の良さは、次のデータが示しています。
【ハイテクテナントの販売効率の良さ】
[テスラモーターズ]2014年1月 5500ドル→テナント平均の5倍以上、全米トップレベル
[アップル]12000平方フィートの店舗売上≒250000平方フィートの大型アンカー店の売上
[ライカ]1個あたり最高22000ドルのカメラを販売
※すべてベルビュースクエアでの実績
アメリカのモール収益が好調なのは、単に個人消費が好調だからではないのです。販売効率によりテナントをメンテナンスしつつ、さらに集客力・客単価の高いハイテクテナントを誘致しているからなのです。ハイテクテナントを目立つ場所に設置することにより、実物を体験できるというネット通販にはない強みを活かしている点も、見逃せません。
ただし、記事で取り上げられているのは、富裕層をメイン顧客とした高級ショッピングモールであり、一般的な郊外型モールは苦しいのかもしれません。都市部の百貨店は好調な一方で、地方・郊外の百貨店の低迷が続く日本と、同じ状況とも言えます。
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《今回のヒントのまとめ》
- アメリカのモール市場が好調なのは、販売効率の悪い店舗を閉める一方で、販売効率の良いテナントに設けているからである。
- 特に、単価・集客力とも高いハイテクテナントは、販売効率が高いだけではなく、その集客力によりネット通販への顧客離れの防止にも寄与している。
- 一方で、これまで集客を担っていた大型アンカー店は、販売効率が悪いだけではなく、集客力も低下。
- 賃料収入という点で、大型アンカー店への依存が減り、ハイテクテナントの売上が伸びることは、モール運営者の収益拡大に通じる。
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7)おすすめ商品・サービス
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作っています。
編集後記
今年の電気代が凄いことになっています。
使っている時間が長いのもありますが、電気代の高騰も大きな要因。
関西電力は、また上げるようです。
請求書見ると、節約意欲が高まるばかり。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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今回は私が恩返しします!
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