【858号】アメリカン・エキスプレスが目指すのは、アメリカ版Tポイントカード?
◎本日のニュース
1)見出し
American Express to Launch Loyalty Program with Macy’s, Exxon, AT&T
ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
2)要約
アメリカン・エキスプレス社が、今春より新たなロイヤルティプログラムを開始する。「プレンティ」と呼ばれるもので、大手小売・サービス企業と提携し、提携企業の利用時にポイントを付与・利用できるというプログラムである。
この新プログラム開始の背景には、16年続いたコストコとの独占契約の休止がある。これによる売上減を補うために、ユーザー層の拡大を狙う。
アメックスと言えば、従来は富裕層のステータスシンボルであったが、JPモルガンの参入などで、富裕層向けカードの競争は激化。顧客層拡大に戦略を転じ、低所得者向けプリペイドカードの発行なども行う。ただし、プリペイドカード事業は、依然赤字のままという。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
American Express Co. unveiled plans Wednesday to team up with big-name companies such as Macy’s Inc. and Exxon Mobil Corp. to launch a loyalty program this spring, the latest move by the credit card company to appeal to a wider customer base.
4)キーとなる英文の和訳
アメリカン・エキスプレス社が水曜日に発表したのは、メーシーズ社やエクソン・モービル社などの大手ブランド企業と提携し、ロイヤルティプログラムを今春開始するということである。
この最新の施策は、アメックスの顧客層拡大を狙ったものである。
5)気になる単語・表現
なし
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
今 回の記事は、アメックスの新ロイヤルティプログラムに関するもの。日本人なら特に驚くべきことではない、Tポイントカードのようなサービスです。つまり、 百貨店やガソリンスタンドなどと提携し、そこで利用すればポイントが貯まり、支払い時に貯めたポイントを利用できるというもの。アメックスは、このような 新プログラム「プレンティ」を5月頃に開始するようです。
アメックスがこのような新たな施策を始めるきっかけに なったのは、コストコとの独占契約が終了したから。16年にも及び、コストコではアメックスしか使えなかったようです。会員制で客単価の高いコストコと提 携することで、アメックスは安定した手数料収入を得ることができました。これが無くなるのですから、どうにかしてこの売上を稼ぐしかありません。そのため のプレンティと言っても、過言ではないでしょう。
アメックスがプレンティで目指す狙いをまとめると、次のようになります。
【アメックスのプレンティで目指す狙い】
- 顧客層の拡大
- 利用機会を増やす
1 について、アメックスといえばお金持ちのカードというイメージがありますが、それはもう昔の話。富裕層向けカードビジネスは、大手金融機関のJPモルガン の参入もあり、競争が激化。しかも、先述の通り、コストコ会員向けカードビジネスも近く終わりを迎えます。つまり、これまでの顧客層を絞ったカードビジネ スが儲からなくなったので、顧客層の拡大という戦略に転換したのです。店舗ビジネスで言えば、客単価引き上げから客数拡大への転換になりますね。様々な ショップで日々ポイントが貯まるプログラムを始めることで、客数の拡大を狙っているのです。
2について、チェー ン・ブランド限定型の提携カードは、従来もありました。この典型例は、マイレージカード。例えば、アメックスはデルタ航空社と提携し、マイレージの貯まる 提携カードを発行しています。それに比べて、プレンティは、複数の小売・サービスチェーンの利用でポイントが貯まるプログラムので、ユーザーにとってはよ りお得感があります。このお得感がハロー効果を呼び、他チェーンでの利用が期待できます。つまり、客単価向上にもつながるのです。
※ハロー効果=ある人が一つの面で優れていれば、その人が他の面でも優れているとみなす傾向。光背効果。
従 来、クレジットカード会社が顧客数を拡大するには、カードの提携先を増やすことが定石でした。しかし、それでは顧客数が増えても、休眠会員ばかり増えてし まう恐れがあります。一方、プレンティでは、そのお得感により財布の中に入る確率が高くなり、提携外の店舗で利用される確率が高くなるので、休眠会員が増 えるリスクは低減されます。つまり、客単価引き上げにも効果を発揮するのです。
ユーザー・提携企業のメリットをまとめると、次のようになります。
【プレンティにおけるユーザー・提携企業のメリット】
[ユーザー]ポイントが貯まりやすく、お得感が強い
[提携企業]新たな顧客層の獲得、既存顧客の囲い込み
ユー ザーについては、説明不要でしょう。このお得感は、アメックスも狙ったものですから。提携企業については、例えばメーシーズは、既存顧客のロイヤルティ向 上以上に、新たな顧客層の獲得に期待しているようです。一方のエクソン・モービルは、お得感で競合のガソリンスタンドと差別化し、囲い込みを狙っていま す。
まさしく日本のTポイントカードに似た施策ですが、Tポイントにある会員の買物データの活用への言及は、WSJ記事にはありません。アメックスのことですから、今後会員データを使った新たなビジネスを考えていることでしょう。
こ の施策から何が読み取れるか。プレンティに大手小売チェーンやサービスチェーンが参加するということは、それだけ競争が激化していることの証左と言えるで しょう。既存顧客への販売だけでは売上増が難しく、かといって新規顧客の開拓はそれ以上に難しい。だから、アメックスへの手数料というコストを負担してま で、プレンティに参加するのです。
消費者について考えれば、ポイントという報酬・お得感でしか買物を促進できないとも言えるかもしれません。割安さ重視・コスパ重視は、金融危機後にアメリカ人に根付いたのかもしれません。
共通ポイントカードでは、日本はアメリカよりも先を行っています。しかし、アメックスがその高いブランドイメージを引っさげて、プレンティを日本で始めるとなれば、アメリカとは異なり富裕層向けの共通ポイントとなり、面白いのではないでしょうか。
***************************
《今回のヒントのまとめ》
- アメックスが、ブランド横断型ポイントプログラムを開始するのは、コストコとの長年続いた独占契約が切れて、売上減が必至だからだろう。
- 目指すのは、顧客層の拡大と客単価の引き上げ。従来は、富裕層やコストコ会員など限られた層をターゲットにしていた。それを転換して、今後は顧客層の拡大を目指す。
- さらに、お得なカードというハロー効果を狙って、提携外での利用を促し、客単価の引き上げを狙う。
- 提携先企業のメリットは、新たな顧客層の獲得と既存顧客の囲い込みである。
- プレンティ開始の背景には、小売・サービス業での競争が激しく、新規顧客獲得でしか売上増を測れないという企業の事情があるのではないか。また、ポイントなどのお得感やコスパでしか、消費者は購入に動かないという消費意欲の低下があるのかもしれない。
*************************
ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
ダイエー創業者の中内さんとは、もちろん面識がありません。
最近秘書をやっていた人の回顧録を読んだのですが、中内さんはとても面白い人のようです。
結局ダイエーは破綻したのですが、それでも憎めないその人柄。
波瀾万丈ですが、中内さんの人生こそ、一番幸せと言えるかもしれませんね。
勇気と笑いを貰った書籍です。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
ちなみに、ファミマの利用率の高い私は、Tポイントカードを常に持っています。
ただし、最近楽天ポイントがサンクスと提携したので、これもいいですね。
期間限定の楽天ポイントをサンクスで使えるのは、本当に使い勝手が良い。
ファミマとサンクスが合併すれば、どちらのポイントになるのでしょうか。
気になります。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
高尾亮太朗のTubmlr⇒ ryotarotakao.tumblr.com
高尾亮太朗のGoogle+⇒ gplus.to/ryotarotakao
高尾亮太朗のPinterest⇒ pinterest.com/ryotarotakao/
今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
ad
2015/03/25 | ロイヤリティプログラム, 金融業界 クレジットカード, 客層戦略, 販売戦略
関連記事
-
【1080号】クレジットカードを使わない人にとっての不都合な真実とは?
HAMZA BUTT ※火曜...
-
【996号】大手ホテルブランドが会員割引に走る理由とは?
Thomas Hawk ◎本...
-
【576号】コミュニケーション手段の多様化が招く不一致問題、企業が学べることとは?
By Khosrow on flickr ◎本日のニュ...
新着記事
-
【1154号】今年のマーケットで確実に起こる4つのこと
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━...
-
【1153号】グーグルの社内用自転車の盗難が無くならない理由
━━━━━━━━━━━━━━━...
-
【1152号】新春スペシャル2:ダイエットしたければ、TRFに従え!
TipsTimesAdmin ...
-
【1151号】新春スペシャル1:目標達成したければ、いつするかを真っ先に決めろ!
Kevin Simmons ...
-
【1150号】年末商戦におけるネット通販のギフトラッピング最新事情
Annette Young ※火曜日...
コメント/トラックバック
トラックバック用URL:
この投稿のコメント・トラックバックRSS