【859号】コカ・コーラ社CEOのソーダ拡大主義はうまくいくのか?
◎本日のニュース
1)見出し
What Is Coke CEO’s Solution for Lost Fizz? More Soda
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2)要約
業績低迷で苦戦するコカ・コーラ社のケントCEOは、ソーダの販売拡大で乗り切ろうと考えている。具体的には、販促費の増額、フリースタイルという新しい飲み方提案、細かい商品構成による需要獲得、製造・物流の効率化である。
しかしながら、アメリカ人の多くは、ソーダを控えており、全世界でもソーダ消費量は停滞している。その理由は、よりヘルシーで美味しく、しかも独自性の強い食品・飲料を好む傾向が強く、大量生産品を好まないからである。
金融市場は、商品群の多様化への素早い対応を求める。それを受けて、コカ・コーラ社の株価は相対的に低迷。もともと保守的な社風な上、ケントCEOの周りがイエスマンばかりで議論が好まれないことも要因との指摘もある。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Mr. Kent’s risky strategy: Sell more soda. The 62-year-old CEO says he has a number of plans—such as increased marketing spending and an overhaul of the company’s U.S. distribution network—that will help Coke return to high-single-digit earnings growth in 2016.
4)キーとなる英文の和訳
ケント氏のリスクの高い戦略は、ソーダの販売増である。
62歳のCEO曰く、コカ・コーラ社を2016年に1桁台の高い収益成長率に戻す計画は、いくつかあるという。
例えば、販促予算の増額や全米の物流網の整備などである。
5)気になる単語・表現
a number of | 形容詞句 | いくつかの;多数の |
overhaul | 名詞 | 分解点検;整備 |
single-digit | 名詞 | 1桁の数 |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
コカ・コーラ社が直面する一番の課題は、アメリカ人のソーダ離れ。もちろん、業績にも影響を及ぼしています。
【コカ・コーラ社の実績・業績】
- 過去10年で初めて、年間売上数量の伸びが目標の3~4%を下回った
- 売上金額2%減、純利益17%減(2014年)
- 昨年10月までに14年・15年とも収益目標に到達しないことが判明
- 全米ダイエットコーク売上数量、過去2年で15%減
- グローバルでのソーダ売上数量、過去2年でたったの1%増
コカ・コーラ社の総売上の約7割を占めるソーダの販売低迷が、総売上に悪影響を及ぼしています。この理由は、
63%のアメリカ人がソーダを控えているから
に他なりません。実際、全米でのソーダ消費量は10年連続で減少しています。全世界(グローバル)でのソーダ販売も停滞しているので、ソーダ離れは世界中で広がっていると見ていいでしょう。ソーダ離れの背景には、消費者のヘルシー志向の強まりがあります。よりヘルシーで、より美味しく、より個性的な食品を好むようになり、その結果、ベビーブーマーが好きだった加工食品企業の多くが、業績悪化。この傾向は、コカ・コーラ社の大得意先であるマクドナルド社にも当てはまるので、ヘルシー志向の強まりは、コカ・コーラ社に大きな逆風となっているのです。
そこでこの逆風への戦略として、ケントCEOが掲げたのが、ソーダ販売の拡充。具体的には、以下のようにまとめることができます。
【コカ・コーラ社のソーダ販売増への具体的方法】
- 販促費の増額
- フリースタイルという新型ディスペンサーなどによる新しい飲み方提案
- マイクロマーチャンダイズによる細かい需要獲得
- 製造・物流の効率化
ソーダ離れの中ソーダの販売増を目指すとは、正気かとも思えないではないですが、ケントCEOには、
「スパーク飲料はいつも楽しい飲み物である」
という確信があるようです。ソーダ離れを起きたのは、消費者がソーダが嫌いになったのではなく、既存のソーダ飲料に飽きたからという考えでしょう。実際、昨年実施したキャンペーン「シェア・ア・コーク」は、自分用だけではなくギフト用にも購入され、需要拡大に成功しました。だから、トップブランドのコークも、製品・販売手法などを刷新すれば売上を伸ばすことができると考えるのです。まぁ、売上の約7割をソーダが占めるだけに、ソーダの販売減を他で補うのはほぼ不可能と言えばそうですが。
1について、主に広告費の増額になります。消費者との接点を増やして、ソーダを飲みたい時にはコークを選んでもらおうという狙いです。
2について、フリースタイルという100種類以上のフレーバーを自由に混ぜることのできるディスペンサーを、ファストフードチェーンに設置。この設置台数を1.5倍に増やし、ソーダを飲む楽しさを提供して、ソーダ需要の拡大を狙います。
3について、マイクロマーチャンダイズとは、細かい購入機会・ニーズを取りこぼさずに獲得するということ。コカ・コーラ社では、OBPPC(Occasion, Brand, Price, Pack, Channel)と呼ばれています。消費者が飲む機会に応じて、30パターンのブランド・価格・容量・販路を採用するというものです。例えば、歩きながら飲みたい時と、家族とのパーティで飲みたい時では、同じコークでも買いたい場所・価格・ブランド・容量は変わります。コカ・コーラ社は、これに細かく対応しようとしています。
4について、過去に全米のボトリング・物流企業を買収。これにより、より効率的な製造・物流を目指しています。コスト削減効果・機会損失の回避が期待できます。
このケントCEOのソーダ拡大路線に対して、金融市場は冷めた目で見ています。実際、株価は相対的に低迷。その理由は明白ですね。消費者ニーズの変化に対応できていないからです。消費者はソーダ離れをしているのだから、ソーダ中心路線からの転換を望んでいるのです。しかも、素早い対応を臨んでいます。というのも、過去にコカ・コーラ社は、乳飲料への参入やエナジードリンクメーカーの買収をしましたが、遅きに失しました。
また、ボトリング・物流会社の買収による効率化も、想定した効果が出ていないようです。そして、業績テコ入れのために、コスト削減と人員削減を余儀なくされています。これらの実績からも、市場はソーダ拡大路線の失敗を予見しているのかもしれません。
強みであるソーダに力を入れることは、中小企業ならオーソドックスな方法です。ランチェスター戦略そのものであり、弱者の戦略であるからです。しかし、コカ・コーラ社は業界トップシェアの強者であり、マスをターゲットにしなければなりません。だからこそ、ヘルシー志向の高まりとソーダ離れという大衆ニーズの変化への対応を求めているのでしょう。
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《今回のヒントのまとめ》
- コカ・コーラ社の業績低迷は、総売上の約7割を占めるソーダの売上が低迷しているから。この背景には、ヘルシー志向・大量生産品離れが進む消費者のソーダ離れがある。
- これに対し、コカ・コーラ社はソーダ拡大路線を選択した。具体的には、販促費の増額、フリースタイルなどによる新しい飲み方提案、マイクロマーチャンダイズによる細かい需要獲得、製造・物流の効率化である。
- ただし、株価は相対的に低迷。それは、消費者ニーズの変化に対応できていないからである。市場は、ソーダ中心路線から決別して、素早い多様化を求めている。
- 中小企業なら、強みであるソーダを拡大させることはオーソドックスな方法である。しかし、大企業で業界トップシェアであるコカ・コーラ社の場合は、マスの変化に対応することで、収益の最大化が求められる。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
ダイエー創業者の中内さんとは、もちろん面識がありません。
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ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
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公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
コカ・コーラライフが発売されました。
天然素材の糖質を使っているとのことですが、あまりピンと来ないです。
販促には相当お金を使っているらしく、通常のコークが78円(それでも安い)で販売されている隣で、68円で販売されていました。
うまくいくのかなぁ。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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今回は私が恩返しします!
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