【865号】ニューヨークのスタートアップ企業がユーザーに大盤振る舞いする理由とは？

Charlie

◎本日のニュース

1)見出し
Metro Money: Startups in Search of the Right Bait to Lure Customers

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2)要約

カーシェアアプリを提供するトリップダは、ニューヨークのユーザー獲得のために、駐車場を無料で提供することにした。というのも、ニューヨークの駐車場は割高なので、会員登録へのインセンティブが高くなると判断したからである。

トリップダだけではなく、ニューヨークのスタートアップ企業でユーザー獲得に大盤振る舞いする企業が増えている。これを支えるのが、ベンチャーキャピタルの投資資金。昨年、ニューヨークのスタートアップ企業への投資は、前年比で59％も増加したという。

スタートアップ企業がニューヨークで新規ユーザー獲得に大盤振る舞いするのは、世界を目指す上で、ニューヨーク市場は重要な都市だから。世界的大都市で大きなシェアを取ることを目的としている。

◎キーセンンスとその翻訳

3）キーとなる英文

Thanks to all the new venture-backed startups in town offering deals to lure new users, I’ve been enjoying freebies and discounts on everything from taxi rides and dinner to package delivery.

4）キーとなる英文の和訳

ベンチャーキャピタル投資を受けた新しい都市型スタートアップ企業が、新規ユーザーを獲得するためにキャンペーンを行っている。

そのおかげで、タクシー乗車やディナーから小包配送まであらゆるものの無料・格安提供を享受してきた。

5）気になる単語・表現

back	他動詞	～を支持する、～を支援する
deal	名詞	お買い得；取引
lure	他動詞	～を魅惑する；～をおびき出す
freebie	名詞	無料の物、景品

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

ニューヨーカーの著者が注目したのは、ニューヨークのスタートアップ企業が提供するお得なキャンペーン。記事で紹介されているものをまとめると、以下の通り。

【ニューヨークスタートアップ企業によるお得なキャンペーン】

トリップダ（カ―シェアアプリ）→駐車場を無料提供、今では付き500ドルまで注射代を肩代わり
ハローフレッシュ（食事キットの定期購入サービス）→6日分の食事を半額で提供
ピーポッド（ネットスーパー）→新規の注文で送料無料と15～25ドルのクーポンを提供
ダッパー（デートアプリ）→デートするバーでドリンクを無料提供

これらの無料・格安提供の目的は、新規顧客の獲得。そして、このキャンペーンを財務的に支えるのが、ベンチャーキャピタル(VC)の投資です。

【ニューヨークスタートアップ企業を支えるVC投資】

2014年は約50億ドル（前年比59％増）→ニューヨーク市民一人あたり年間595ドル

これだけ多額の資金がスタートアップ企業に流れるからこそ、大盤振る舞いができるのです。各ニューヨーカーに595ドルを振る舞っても、トントンなのですから。

また、ニューヨークのスタートアップ企業が、VCの投資資金を新規ユーザー獲得のために大盤振る舞いするのは、次のような理由から。

【ニューヨークスタートアップ企業が大盤振る舞いする理由】

世界市場を目指す上で、世界的大都市のニューヨークで大きな市場シェアを取る必要があるから

スタートアップ企業のほとんどは、スマホアプリを使ったITベンチャー。目指すは、世界市場です。そのためには、世界的大都市で大きなシェアを取り、知名度を上げる必要があります。この点、ニューヨークは勝負する市場として打ってつけ。ニューヨークで大きなシェアを獲得できれば、東京やパリ・ロンドンなど他の世界的大都市へも参入しやすくなりますし、さらなるVC資金を呼び寄せられるかもしれません。さらに、グーグルやフェイスブックなど既存の巨大企業への売却まで一気に進められる可能性も否めません。

ただし、新規ユーザー獲得のために、単に無料・格安で提供すればいいというものではありません。新規ユーザー数とリピート率を最大化させる方法を取る必要があるのです。というのも、単にお得なキャンペーンなら、リピート利用につながらないタダ乗りユーザーばかり集まってしまうからです。例えば、先述のピーポッドの場合、単に送料を無料にするだけでは注目を受けず、かと言って、さらなる大盤振る舞いをすれば、タダ乗りユーザーばかり集まるので、送料無料とクーポン提供という内容に収まったようです。

また、大盤振る舞いしても、崩れたビジネスモデルを立て直すことはできません。例えば、デートアプリのダッパーの場合、ドリンクの無料提供で新規ユーザーが10倍にも増加したものの、その多くは14ドル掛かる正規サービスの利用につながらなかったようです。というのも、一般的にデートアプリは無料と考えられているからです。現在14ドルを課金していますが、今後無料提供への転換を予定しているようです。

ちなみに、無料・格安キャンペーンで新規ユーザーを獲得して、その後収益拡大につながるのは、次のような特徴を持つ商材です。

【無料・格安キャンペーンで将来収益拡大につながる商材の特徴】

有料でも利用したいほど必要性が高く、リピート利用が期待できる
一定以上の市場の大きさがある

1について、必要性が高くなければ、ダッパーのように有料サービスとして受け入れられません。また、利用頻度が一定以上なければ、コストを掛けて獲得した新規ユーザーが、収益に貢献してくれません。

2について、ある程度の市場がなければ、VCの投資を受けられず、無料・格安キャンペーンのコストに耐えられません。

ユーザーの立場から考えると、大盤振る舞いのキャンペーンを多く利用できる世界的大都市は、魅力的だと言えるでしょう。一方、キャンペーンを提供する企業は、キャンペーン合戦になって収益化が遅れる恐れがあります。企業にとって、獲得した新規ユーザーにいかに正規サービスを利用してもらうかが、焦点になるでしょうか。

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《今回のヒントのまとめ》

ニューヨークのスタートアップ企業が、大盤振る舞いして新規ユーザー獲得を目指すのは、世界市場を目指す上で、世界的大都市で大きなシェアを取る必要があるからである。
また、このコストを支えるのが、巨額のベンチャーキャピタル投資。昨年は、前年比で59％も増加し、ニューヨーカー一人あたり595ドルにも上った。
ただ、単に大盤振る舞いしただけでは、タダ乗りユーザーばかりが集まり、収益化に繋がらない。新規ユーザー数とリピート率を最大化できる方法を見つける必要がある。
今後、スタートアップ企業によるキャンペーン合戦になる恐れがあり、企業は注意が必要。獲得した新規ユーザーにいかに正規サービスを使ってもらうかが、企業にとっては重要になるだろう。

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