【881号】ペプシコの新型ソーダファウンテン・スタボーンソーダ、狙うのはヘルシー志向だけではない。

Kurt Nordstrom

◎本日のニュース

1)見出し
PepsiCo to Launch New Line of Fountain Sodas

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2)要約

ペプシコ社は、クラフトビールブームに乗ろうと、新型ソーダファウンテンを発売する。このソーダファウンテンを使えば、レストラン利用客は、クラフトビールのタップのようなレバーで珍しいソーダ飲料を注ぐことができる。

この背景には、天然・職人的な製品に対する需要拡大がある。その代表格は、クラフトビールで、大手メーカーからシェアを奪っている。大手飲食チェーンや食品メーカーには、人工的に作られた原材料を天然素材に切り替える動きがある。

ソーダ飲料市場においては、市場全体が縮小する一方で、中小メーカーによるクラフトソーダの需要が増えている。これに対し、大手メーカーは、天然素材を使ったプレミアムソーダを発売したり、フレーバーを多種類ミックスできるソーダファウンテンを発売したりして、消費のテコ入れをしている。

3）キーとなる英文

PepsiCo Inc. is trying to ride the craft beer craze by rolling out a new soda fountain that will deliver exotic sodas like agave vanilla cream and black cherry with tarragon when restaurant-goers pull on a lever that looks like a draft beer tap.

4）キーとなる英文の和訳

ペプシコ社は、クラルとビールブームに乗ろうと、新しいソーダファウンテンを発売する。

これを使って、アガベバニラクリームやタラゴン入りのブラックチェリーなど、エキゾチックな炭酸飲料を提供する。

レストラン利用客は、クラフトビールの注ぎ口のようなレバーを引いて使う。

5）気になる単語・表現

fountain soda	名詞	（蛇口付きの）ソーダ水容器、ソーダ水売場
fountain	名詞	泉
craze	名詞	熱狂、大流行、ブーム
exotic	形容詞	珍しい；魅惑的な；異国風の
peck away at	自動詞句	～を（くちばしで）つつく、ついばむ
lift	名詞	揚力
cane	名詞	サトウキビ
infrared	形容詞句	赤外線の
radio frequency	名詞	ラジオ周波数

（今回ピックアップ英単語）

今日はお休み

6)ビジネスのヒント

ペプシコ社が発売するのは、スタボーンソーダというソーダファウンテン。ソーダファウンテンは、日本人には馴染みがないものですが、ファストフード店で店員が炭酸飲料をカップに入れるのに使う機械。アメリカのファストフード店では、たいてい注文客自身が炭酸飲料をカップに注ぐので、身近な機械なのです。

スタボーンソーダの特徴をまとめると、次のようになります。

【ペプシコの新型ソーダファウンテン・スタボーンソーダの特徴】

クラフトビールのタップにようにレバーを引いて注ぐ
天然素材を使った珍しい炭酸飲料を提供

キーセンテンスでも述べたように、スタボーンソーダの発売は、クラフトビールブームに乗ろうとしたもの。クラフトビールのようなタップで注げるので、おなじみのソーダファウンテンに新鮮味が生まれるわけです。しかも、2のように、天然素材・本物の砂糖（この言い方も何ですが）を使った珍しい炭酸飲料を提供します。ここにも、新鮮さがあります。

これらの特徴は、消費者ニーズを反映させたものであり、天然・職人的（クラフトとは「職人」という意味）な製品に対する需要が拡大しているという背景があるのです。一方で、人工甘味料など「体に悪そう」なイメージのある炭酸飲料は、売上が減少しています。ペプシコは、スタボーンソーダによりソーダファウンテンに「天然」「職人的」という要素を組み込むことで、売上のテコ入れを図ろうとしているのです。

ちなみに、職人的な製品の代表格は、クラフトビール。小規模なメーカーが作るクラフトビールが、大手メーカーが製造する世界的ブランドからシェアを奪っています。同じことが、炭酸飲料市場でも起こっているようです。つまり、市場は縮小しているものの、中小メーカーのブランドは健闘。例えば、バージナルズ・ルートビアやリーズ・オリジナル・ジンジャー・ブリューを製造・販売するリーズ社は、2014年の売上が前年比16％も増加しています。小さなクラフトビール醸造所で、炭酸飲料も製造しているところもあり、これも「職人的」として人気を博しています。これら中小メーカーの珍しい炭酸飲料を、クラフトビールを真似てクラフトソーダと呼ぶそうです。

このクラフトソーダ人気に対し、大手炭酸飲料メーカーも対応しています。

【大手炭酸飲料メーカーによるクラフトソーダ対策】

コカ・コーラ社→ガラス容器入り・砂糖使用のメキシコ産コークをプレミアム価格で販売。「クラフト飲料」のトップを任命し、販売に注力。
ペプシコ社→ガラス容器入り・サステイナブルなサトウキビとコラを使ったカレブズ・コーラを2014年発売。ガラス容器入り・砂糖使用のマウンテンデュー・デューシャインを2015年始めに発売。

キーワードは、「ガラス容器入り」と「天然素材」のようです。ガラス容器入りにすることで、通常の安いペットボトル入りソーダ飲料と見た目で差別化を図り、本物の砂糖やサステイナブルな原料を使うことで、消費者の天然素材ニーズに対応しています。これらの差別化・ニーズ対応により、プレミアム価格での販売を可能にしているのです。

一方、ソーダファウンテン市場も競争が激しくなり、自分好みのフレーバーを作る楽しさ競争から天然素材使用競争に移行しています。

【ソーダファウンテン市場の競争の変化】

［以前］作れる好みのフレーバーの種類の競争→2009年発売のコーク社のフリースタイル、2014年発売のペプシコ社のスパイヤー

［現在］天然素材使用のフレーバー競争→2015年発売予定のペプシコ社のスタボーンソーダ

コーク社のフリースタイルは、フレーバーをミックスできるのが斬新でした。これに対抗したのが、ペプシコ社のスパイヤー。タッチスクリーンを使って、数百通りの組み合わせの炭酸飲料を作ることが出来ます。

ちなみに、天然素材への切り替えは、ダイエット系炭酸飲料でも実験的に行われており、ステビアなど天然のカロリーゼロの甘味料が使われています。もちろん、これは、ダイエットコークなどダイエット系炭酸飲料の売上減少が止まらないから。アスパルテームなど人工甘味料を消費者が避けているからに他なりません。ペプシコは、8月からダイエットペプシでアスパルテームの使用を停止。スクラロースという別の人工甘味料に切り替えるようです。天然ではなく人工甘味料に切り替えるところに、同じ味・コストを維持しつつ天然素材に切り替える難しさがあるように思えます。

ともあれ、ペプシコ社のスタボーンソーダ、「天然」「職人的」というニーズに対応するようですが、その先にはもちろん「楽しさ」があることは間違いありません。クラフトビールを注ぐように自分でレバーを引きながら、自分好みのフレーバーを作れる楽しさ。提供方法の差別化で、ソーダ飲料を売ろうとしているのです。「楽しさ」というのは、コト消費でもあります。

Stubborn Sodaの他マスコミ記事

Jones Soda Co.（クラフトソーダメーカー）

Reed’s Inc（クラフトソーダメーカー）

Caleb’s Kola　(ペプシコ社のクラフトソーダ)

Spire

Freestyle

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《今回のヒントのまとめ》

ペプシコ社が新型ソーダファウンテン・スタボーンソーダを投入するのは、「天然」「職人的」な製品の需要拡大に対応して、売上縮小の続く炭酸飲料をテコ入れしたいから。
その特徴は、クラフトビールを注ぐようにレバーを引きながら注げることと、天然素材を使った飲料を飲めること。
クラフトビールがビール市場でシェアを拡大するように、「天然」「職人的な」クラフトソーダが、縮小する炭酸飲料市場で伸びている。これに対し、大手メーカーは、垂らす容器入りで天然素材を使ったプレミアム品を投入。
スタボーンソーダは、「天然」「職人的」なニーズに対応しながら、注ぐ楽しさも提供している。モノを通じたコト消費と言えるのではないか。

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