【888号】オーストラリアが直面するクラフト系スタートアップの負の側面

Scott O’Donnell

※メルボルンのお店ではありません。

◎本日のニュース

1)見出し
Australia’s Artisan Conundrum: Are Thriving Craft Businesses an Economic Drag?

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2)要約

オーストラリアで手作りが特徴の小規模飲食メーカーが増加しているが、これが経済全体にとって大きな問題となっている。というのも、効率的ではないために、全体の生産性を低下させるからである。

そもそもオーストラリアの全要素生産性は低下傾向にある。その要因は、多くの労働力・機械を投入した資源ブームは収が上がるまで時間が掛かるからであり、また、通貨高のためである。ただ、これらの要素は改善しているが、小規模なクラフト系飲食メーカーの増加が足を引っ張っている。

小規模飲食メーカーが増加している背景には、消費者の大量生産品よりも手作り品を好むニーズの高まりがある。

3）キーとなる英文

The conundrum, government experts say, is that these boutique ventures—which require longer hours of work for fewer products compared with their high-volume factory-made competitors—are making the economy’s performance look worse than it is, even while many of these small businesses themselves are thriving.

4）キーとなる英文の和訳

政府専門家の言う難題とは、これらの小規模ベンチャーが、工場で大量生産する競合に比べて、少量の製品に長時間労働を要するので、経済の効率を実情よりも悪く見せていることである。

たとえ、これらの中小企業の多くが成功していたとしても、難題は解決するわけではない。

5）気になる単語・表現

apprentice	名詞	見習工；徒弟、奉公人；初心者、新米
hipster	名詞	新たしがりや、進んでいる人
churn out	他動詞句	～をぞくぞくと作る；粗製乱造する
backwater	名詞	沈滞；スランプ；僻地、辺地
conundrum	名詞	難題
skew	他動詞	～をゆがめる；～を斜めにする
queu	自動詞	列を作る；（順番を待つ人の）列
authenticity	名詞	真正であること；確実性
thrive	自動詞	成長する；栄える
buzz	名詞	ざわめき；喜び、興奮、わくわくすること
sport	他動詞	～を見せびらかす
moustache	名詞	口ひげ
aggravate	他動詞	～をさらに悪化させる
aberration	名詞	逸脱；欠陥；奇行

（今回ピックアップ英単語）

Aberration 「逸脱、脱線、欠陥；奇行、異常な行動」

（英英）

A fact, an action or a way of behaving that is not usual, and that may be unacceptable

（類義語）

奇行　eccentricity, whimsy

倒錯　pervertion

6)ビジネスのヒント

手作り品人気は、以前ペプシコの新型ソーダファウンテンの記事で紹介しました。オーストラリアでも、手作り品人気が広がっているようです。WSJ記事冒頭で紹介されているベーカリーは、仕込みに4日間も掛けるデニッシュパンが人気商品で、金土日の三日間だけ販売。合計375個しか作らないため、夜明け前から長い行列ができるほどのようです。成功した起業事例に他なりません。

しかし、経済全体にとっては、これがマイナスに働くようです。というのも、大量生産商品よりも手間が掛かる割に少量しかできないため、労働生産性を落とす要因になるからです。

そもそも、オーストラリアの全要素生産性（労働力と機械をいかに効率的に活用するかの指標）は低下しています。

【低下傾向のオーストラリア全要素生産性】

2007～2012年で毎年0.8％低下→先進国の中で最低の数字

※アメリカは、同期間0,2％上昇

労働生産性低下の要因は、期待外れに終わった資源ブームと通貨高にあります。資源ブームのため大量の労働力と機械を投入したものの、新たな鉱山からの資源発掘には時間が掛かります。さらに、豪ドルの上昇により競争力が低下しました。ただし、これらの要因は、改善しつつあるものの、小規模飲食メーカーの増加が新たな要因となっています。

クラフト・手作り人気は、別にオーストラリアだけの現象ではありません。アメリカや英国でも人気が沸騰していますが、如何せんオーストラリアは経済規模が小さく、産業の多様性に乏しいため、クラフト系スタートアップの影響を受けやすいのです。

もちろん、手作り飲食メーカーの増加は、雇用増という利点もあります。さらに、人気店が生まれることで、不動産価格の上昇という恩恵も産まれます。また、SNSなどの普及により、従来よりも低コストで宣伝広告ができるので、規模の小さな企業でも成功する確率は高まっています。

とは言っても、生産性が低いのは事実。これは規模の小さな手作り系企業全体に言えることかもしれません。ただし、手作りだからと言って、消費者が機械の使用を嫌っているわけではありません。要は、手作りの良さを維持しつつ、商品の競争力とは関係ない部分は、機械化・効率化すればいいのです。小規模・手作り系の企業における機械化需要は、意外に大きいかもしれません。

Lune Croissanterie （記事で紹介されていたオーストラリア・メルボルンの人気デニッシュベーカリー）

【881号】ペプシコの新型ソーダファウンテン・スタボーンソーダ、

狙うのはヘルシー志向だけではない。

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《今回のヒントのまとめ》

世界的な手作り品人気のため、オーストラリアにて手作り系飲食料品メーカーが増加している。ただし、少量・長時間労働のため効率性は低いので、経済全体の労働生産性を落とす要因になっている。
そもそも、オーストラリアの全要素生産性は低下傾向にある。その要因は、収益までに時間のかかる資源ブームと通貨高のためである。これらの要因は改善しつつあるものの、今度は小規模・手作り系飲食メーカーの増加が、生産性低下の要因として指摘されている。
アメリカや英国でもクラフト品人気が起こっているが、オーストラリアの場合、経済規模が小さく、産業の多様性に乏しいために、クラフト系スタートアップの増加を受けやすくなっている。
消費者の手作り品ニーズの高まりは、機械の使用を嫌っているわけではないだろう。手作り品の良さを維持できれば、付随作業を機械化したいニーズは意外に高いかもしれない。

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