【904号】アメリカでトラック用駐車場不足が深刻化する理由とは？

Miguel Angel

◎本日のニュース

1)見出し
Study Finds Shortage of Truck Parking a ‘Safety Concern’

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

（サイトへの掲載は、翌日以降です。）

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。（もちろん無料です。）

2)要約

トラック用駐車場不足が、トラック運転手が疲れても運転を続けたり、高速の路肩で一晩過ごしたりすることにより、全米で安全上の問題になっている。単に駐車スペースが不足しているのではなく、駐車したいトラック運転手のニーズと駐車スペースの空きに、ミスマッチが生じているのが、現状である。

駐車場不足は決して新しい問題ではない。最近注目されたのは、2009年と昨年に人気のない場所に駐車していたトラック運転手の殺人事件が起こったからである。また、景気回復によるトラック輸送の物量が増加していることや、法律における長距離トラック運転手の休息義務化も、駐車場不足に拍車を掛けている。

最新の解決策として、州ごとに駐車スペースの大きさを評価するという方法が提言されている。ただし、大部分が民間による運営である上、土地利用の制限や地元住民の反対などがあり、利害調整が難しいとされている。

3）キーとなる英文

Parking shortages that could cause truck drivers to continue driving while tired or to stop and spend the night on road shoulders and exit ramps “are a national safety concern,” according to a study the Federal Highway Administration is expected to release on Friday.

4）キーとなる英文の和訳

連邦高速協会が金曜に発表するとされるレポートによると、駐車場不足により、トラック運転手は疲労の中運転を続けさせたり、夜中を路肩で過ごし高速ランプを降りたりすることを余儀なくさせられるので、全国的な安全上の問題とされているという。

5）気になる単語・表現

ad hoc	形容詞	特別の；その場限りの
comprehensive	形容詞	広範囲の
abandoned	形容詞	人気のない；捨てられた
abandon	他動詞	～を見捨てる；～を諦める
awaken	他動詞	～を起こす
vacate	他動詞	（家・部屋・座席など）を空ける；～を立ち退く
premise	名詞	不動産
intractable	形容詞	手に負えない

（今回ピックアップ英単語）

【comprehensive】

「広範囲な」

A comprehensive report of the conference

「会議の包括的な報告」

The last chapter is a comprehensive review of the book’s contents.

「最後の章は本の内容を包括的に再吟味したものだ」

「（理解力が）幅広い、理解力のある」
「（保険などが）総合の」

（英英）

Including all or almost all, the items, details, facts, information, etc, that may be concerned

「すべて、ほぼすべてを含む」から「包括的に」「幅広い」「総合の」に転化。

（類義語）

「広範囲な」 extensive, widespread

「包括的な」inclusive

6)ビジネスのヒント

アメリカ物流事情に関して。トラックの駐車場不足が深刻化しているようです。その要因として、次の2点を上げることができます。

【トラックの駐車場不足が深刻化した要因】

景気回復・ネット通販の成長により、トラック輸送が増加したから
法律で長距離輸送時の休息が義務化されたから

1に関して、記事ではネット通販に関する言及はありませんでしたが、これも大きな要因。昨年の年末商戦では、ネット通販利用の急増により、クリスマスプレゼントをクリスマス当日に配達できなかったというUPSのトラブルも記憶に新しいです。

2について、2年前の制定された法律で、8時間～11時間の運転で30分の休憩、11時間超ならそれ以上の休息を、トラック輸送業者は運転手に与えることが義務化されました。

ただし、トラックの駐車場不足は新しい問題ではありません。昔から指摘されていたもので、これが注目されたきっかけは、2009年に起こった人気の無いガソリンスタンドで駐車していたトラック運転手の殺人事件であり、同様の事件が昨年にも起こっています。これらの事件により、州政府が問題視するようになったそうです。

ならば、トラック用駐車場を増やせばいいのですが、それほど簡単に解決できる問題ではないようです。

【トラック用駐車場不足の実際】

ニーズが場所・時間で集中することが多く、大部分の駐車場はガラガラ。
大部分は民間運営であり、コスト・法規制・地元住民の反対をクリアしなければならない。
高速道路の路肩に違法駐車するトラックが増加しているが、休息の義務化により安易に取り締まれない。

1 について、単に数が不足しているのではなく、必要な時に必要な場所に空きがないというのが現実のようです。一番不足している地域は、ニューヨーク・ペンシルバニア・ニュージャジーを含む中部大西洋地域であり、その次にイングランドと中西部が続きます。アメリカの中部から東部に集中していることがわかります。

2について、運営主体が民間である以上、建設・運営コストを収益で賄わなければなりません。さらに、土地利用に関する法規制があり、治安悪化を嫌う地元住民の反対もあります。これだけステークホルダーが多いと、駐車場を新たに建設するのに時間が掛かるのです。

3 について、駐車場不足から、高速道路の路肩やランプに駐車するトラック運転手が多いのですが、違法のため取り締まりの対象となります。しかし、厳しく取り締まれば、休息なしでの長距離運転が起こる恐れがあり、安全上に問題が生じます。現場では、このようなジレンマが起こっているのです。

このような中、最も包括的な最新の試みとして、州毎にトラック用駐車場の広さ・使いやすさを評価して、妥当な駐車スペースを割り出そうという動きがあります。

問題は、時間・場所で利用が集中する駐車場の駐車能力をいかに引き上げるかということ。手っ取り早いのは、駐車面積を広くすることですが、コスト・法規制・地元住民との調整により、なかなか行えません。ならば、

空き情報をリアルタイムで公開する

駐車場の周りに小売店などサービスを集積させて、収益を上げやすくする

という方法も可能ではないでしょうか。前者の場合、システム開発にコストが掛かりますが、トラック輸送業者に駐車場に停めたいというニーズがある以上、有料サービスとして提供することも可能でしょう。

後者の場合、トラックが集まるということは、人が集まることでもあるので、そこに事業機会は必ず生まれます。日本のコンビニのようなサービスステーションを設けることにより、駐車場は運営業者にとっては収益場所になるのではないでしょうか。

日本では、高速道路にサービスエリアがあるので、駐車場問題は今後も生じないものと思われます。ただし、アメリカ同様ネット通販の拡大によりトラック輸送が増えているのは事実。このマーケットの変化は、新たなビジネスが生まれる機会であるのは間違いありません。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

《今回のヒントのまとめ》

アメリカでトラック用駐車場不足が深刻化しているのは、景気回復やネット通販の増加によってトラック輸送が増えているからである。また、法律で長距離運転に休息が義務化されたことも大きな要因と言える。
一方で、現実は単に駐車場が不足しているだけではない。時間・場所で集中する傾向があり、駐車場を増やせば解決する問題ではない。また、大部分は民間運営であり、コスト・法規制・地元住民の反対をクリアしなければならない。さらに、駐車場不足から増える高速の路肩・ランプの違法駐車を厳しく取り締まれば、長距離運転を助長することになり、ジレンマとなっている。
最新の試みでは、州ごとにトラックの駐車能力を評価して、妥当な広さなどの測定方法の開発が進んでいる。
既存の駐車場の駐車能力を高めることが解決につながるので、空き状況のリアルタイム公開や、店舗が備わった日本のようなサービスエリアにする方法もあるだろう。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊