【914号】新興国市場でもがく米シリアルメーカーから学べることとは?
◎本日のニュース
1)見出し
Cereal Makers Look for New Dawn Abroad
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2)要約
グ ローバルのシリアルメーカーにとって、新興国ではローカルの食文化にうまく適応することが必須となっている。というのも、シリアルを食べる文化がないばか りか、食べ方自体を知らない国があるからである。それでも、新興国市場に果敢に進出するのは、潜在的な成長力が期待できるからである。
一方で、アメリカや欧州の一部では、シリアル売上は低迷している。甘いシリアルから、より新鮮で手早く食べられて、持ち運びできる食品にシフトしているからである。
ただし、現地の食文化に適応することは簡単なことではない。子供を持つ母親に豊富な栄養源であることを啓蒙したり、より買いやすい小袋タイプを発売してり、現地の食習慣に合わせた商品開発をしたり、地道な工夫を要する。
3)キーとなる英文
Fine-tuning products to meet cultural expectations is critical to efforts by Kellogg and other multinational cereal makers to ramp up sales in developing countries in Africa, Asia and elsewhere.
4)キーとなる英文の和訳
文化的な期待に沿うように製品をうまく適応させることは、ケロッグやその他多国籍シリアルメーカーにとって重要である。
目指すは、アフリカ・アジアなどの新興国で売上を増やすことである。
5)気になる単語・表現
dawn | 名詞 | 夜明け;始まり |
soggy | 形容詞 | 水浸しの |
mess | 名詞 | 乱雑;窮地;会食 |
porridge | 名詞 | ポリッジ(オートミールなどを水や牛乳で煮た物) |
expectation | 名詞 | 期待;予期 |
ramp up | 他動詞句 | (商品など)を増やす |
laden | 形容詞 | 荷を積んだ;付与された |
inclination | 名詞 | 好み;傾向 |
sluggish | 形容詞 | のろい;ゆるやかな;緩慢な;不活発な |
affinity | 名詞 | 親近感;強い好み;親類 |
relevent | 形容詞 | (密接な)関連がある;適切な、妥当な;実際的な価値を持つ |
vigilant | 形容詞 | 絶えず警戒している;油断のない |
rural | 形容詞 | 田舎の |
ground | 形容詞 | 挽いて粉にした |
maize | 名詞 | トウモロコシ |
no-brainer | 名詞 | (考える必要がないほど)明白なもの;簡単にできること;愚か者 |
(今回ピックアップ英単語)
【sluggish】
WSJには頻出の形容詞。本当によく出てくるので、何度電子辞書で調べたか忘れたほど。見た目・音の通り、いい意味ではない。キーワードは,slowly(鈍い)とlazy(怠惰な)。
(英英)
moving, reacting or working more slowly than normal and in a way that seems lazy
(例文)
I feel hot and sluggish
「熱っぽくて体がだるいんです。」
a sluggish economy
「停滞している経済[景気]」
(類語)
「緩慢な」 slow
「鈍い」 slow, tardy
「不精な」 lazy
「不振の」 dull, sick, depressed
6)ビジネスのヒント
消費財メーカーの新興国進出の事例としては、味の素やユニ・チャームが有名ですが、今回はアメリカのシリアルメーカー。米国のメーカーというよりも、グローバルで稼ぐシリアルメーカーが対象です。
まず、新興国市場を目指す理由から。一言で言えば、高い成長力が期待できるからになります。
【シリアルメーカーが新興国市場を目指す理由】
- 高い成長余力があるから
- アメリカ・欧州などの先進国は構造的に低成長に陥っているから
1 は、特にシリアル市場に限ったことではありません。今後中間層の爆発的な増加が期待でき、食へのニーズがよりバラエティに富むことが予想されます。そこに シリアルが食い込む余地は十分あるのです。シリアル業界に限って言えば、都市住民の増加により、手軽な朝食へのニーズが拡大しているようです。シリアルは このニーズ獲得にうってつけなのです。
一方、2のように先進国のシリアル市場は成熟しています。シリアルのような甘い物から、より新鮮・手軽で持ち運べる食品へ、朝食ニーズはシフトしているようです。以前にもこのメルマガで取り上げました。
【780号】シリアル=朝食はもう古い!米シリアルメーカーの挑戦とは?
アメリカでは、プロテインを朝食に摂るニーズが高まっているようです。シリアルでも十分手軽な朝食のように感じますが、欧米人はもっと手軽なバータイプを好みます。だから、シリアル売上は低迷しているのです。
先進国・新興国のシリアル関連のデータもまとめておきます。
【先進国・新興国のシリアル関連データ】
- アメリカのシリアル売上→今後5年で年平均6%の成長しか見込めない
- 中国・インドのシリアル売上→同9%・22%の成長期待
- ケロッグ社のアジア新興国での売上数量(2015年)→二桁増
- ケロッグ社の中南米の売上数量(2015年)→4~6%
ただし、成長が見込めるものの、食文化の違いという大きなハードルがあるのも事実。
【シリアルメーカーが新興国市場で直面する食文化の違い】
- シリアルの食べ方を知らない
- 牛乳を飲まない国がある
- ご飯のような昔からある温かい朝食への愛着がまだ強い
要 は、新興国の消費者にとって、シリアルをわざわざ朝食に食べる理由がないというのが、一番大きなハードルなのです。きっと、価格も地元食材よりも高いの で、なぜ食べる理由がないのに、わざわざ高い値段の商品を買う必要もないでしょう。まず、食べる理由から伝える必要があるのです。
各社の市場開拓手法をまとめると、次のようになります。
【グローバルシリアルメーカーの新興国市場開拓手法まとめ】
- 豊富な栄養源であることを啓蒙
- 買いやすい低単価・小袋タイプの販売
- 地元の食文化に適応した商品の開発
1・2は、ネスレ社とゼネラル・ミルズ社との合弁会社であるシリアル・パートナーズ・ワールドワイド社の 手法。シリアルを、食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富な食材として販促しています。そして、特に子供への利点を強調するために、非公式の女性ネットワー キンググループへの会合に従業員が参加し、栄養面での利点を啓蒙しているようです。卸・小売店だけではなく、エンドユーザーに直接会って、商品のベネ フィットを伝えているのです。
3は、ケロッグ社の手法。朝食にポリッジ(おかゆのような温かい料理)を食べる習慣のある南アフリカでは、コーンフレーク・インスタント・ポリッジを発売。牛乳よりもヨーグルトを食べる習慣のあるコロンビアでは、ヨーグルト付きのシリアルを販売しています。
ちなみに、ケロッグ社は、牛乳を飲む習慣のない新興国では、冷たいシリアルの食べ方の啓蒙に特に重視しており、広告を通じて食べ方をわかりやすく伝えています。
こ れらシリアルメーカーの新興国進出手法は、もちろん他の業界でも参考になりますが、それ以上にイノベーションを起こす可能性を秘めているのではないでしょ うか。つまり、新興国で、現地の食文化に合った商品開発や販促を行うことで、製品の新たな用途を見つけ出すことができ、それを先進国に逆輸入することで低 迷する市場を活性化できるかもしれません。
このように考えると、リスクの大きな新興国への進出は、イノベーションを引き起こす可能性を秘めた大きなチャンスとも捉えることができます。そう言えば、ホットで食べるグラノーラが、日本でも発売されていたような…
***************************
《今回のヒントのまとめ》
- グローバルのシリアルメーカーが新興国市場の進出するのは、高い成長率が見込めるからである。一方で、先進国は、消費者ニーズの変化により、成熟化している。
- 新興国では、今後中間層が拡大し、よりバラエティに富んだ食へのニーズが拡大すると予想される。また、都市住民の増加で、より手軽な朝食が好まれるとされる。これらは、シリアルにとって大きな追い風である。
- ただし、食文化の違いというハードルを乗り越えなければならない。シリアルの食べ方自体を知らなかったり、牛乳を飲む習慣がなかったり、伝統的な温かい朝食にまだ愛着があったりして、シリアルを食べる強い動機がないことが、大きなハードルである。
- これに対し、栄養に富んだ食品として啓蒙したり、低単価の小袋パックを販売したり、現地の食文化に合った商品を開発したり、各社工夫している。
- これらの工夫がイノベーションにつながり、先進国に逆輸入されれば、成熟した市場が活性化されるかもしれない。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
ここ何年かノートは無印の100円ノートを使っていたのですが、120円に値上げされたので、違うノートを探すことにしました。
すると、100均でもなかなか書きやすいノートがあることを発見。
キャンドゥ系の100均ストアで販売されているリングノートです。
紙質は、コクヨのキャンパスノートに近いのではないでしょうか。
しかも、行間がA罫で書きやすく、目盛が付いているので線も引きやすい。
当分、このノートを使いたいと思います。
ただ、円安傾向は収まりそうにないので、このノートもいずれ薄くなるんでしょうね。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
WSJの記事に添付されたグラフによると、アルジェリア・ナイジェリア・南アフリカのシリアル売上が大きく上昇しています。
一方で、世界平均・アメリカともにマイナス。
アジア新興国も重要ですが、シリアルメーカーはアフリカを最重要市場としているようにも思えます。
アフリカは日本からかなり遠いので、なかなか情報が入りづらいもの。
WSJで興味深いアフリカの記事があれば、今後取り上げたいと思います。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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