【925号】ネット時代でもアメリカで屋外広告が伸びる理由

Bruce Henschel

◎本日のニュース

1)見出し

Outdoor Advertising Companies Post Improved Revenue in Third Quarter

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2)要約

第三四半期の屋外広告企業の収益は回復傾向にある。消費者のデジタル機器に接する時間の増加により、従来型メディアの大部分が広告収入を減らしているのとは、対照的である。

その要因は、屋外広告は、スキップできず自然と目に入り、大衆にリーチできるからである。また、一部がデジタル化しROIが測定しやすくなったことも大きな要因だろう。

ただし、屋外広告は、企業の広告予算のごく一部であり、テレビ広告の十分の一にも満たない。

3）キーとなる英文

Financial results from outdoor advertising companies this quarter provided further evidence that marketers are continuing to invest in billboards, transit ads and digitals signs.

4）キーとなる英文の和訳

屋外広告企業の第三四半期の業績によると、広告主である企業がビルボードや交通広告・デジタル看板への投資を継続している事実が鮮明となった。

5）気になる単語・表現

further	形容詞	更に遠い；更に進んだ
billboard	名詞	（屋外の）広告板
transit	名詞	輸送；通過
only	形容詞	唯一の、たったひとつの
bus shelter	名詞句	雨除け付きのバス停
high-profile	形容詞句	注目を集める
profile	名詞	横顔；素描、紹介
deploy	他動詞	～を効果的に配置する
silver	名詞	小銭
street furniture	名詞句	（街灯・ポストなどの）公共街路設備

（今回ピックアップ英単語）

【deploy】

（英英）to use something effectively; to move soldiers or weapons into a position where they are ready for military action

（意味）（議論・資源など）を効果的に配置［活動］させる；（部隊など）を配置につかせる

（軍事）展開

deployable defense system 「配置可能防衛システム」

（その他）

もともとは軍事用語で、そこから転じて「効果的に」「配置する（させる」となった。自動詞・他動詞ともある。

6)ビジネスのヒント

今回は、”CMO TODAY”というコーナーから。和訳すれば、「今日のマーケティング担当者向け記事」ということになるでしょうか。屋外広告が取り上げられています。屋外広告と言えば、看板広告であり、大型のビルボード広告や公共交通機関での交通広告などがあります。モバイルでのネット利用がここまで普及すれば、さぞかし屋外広告は苦戦していると思いきや、市場は回復傾向にあるようです。

記事で取り上げられた屋外広告企業別の第三四半期業績をまとめると、次のようになります。

【屋外広告企業の第三四半期結果まとめ】

［アウトフロント・メディア］

全米のビルボード売上は3％増に回復。要因は、全国規模企業・ローカル企業による需要の増加。ニューヨーク・ロスアンゼルス地区での売上増。
全米のオーガニック（本体）売上は8％増。交通広告の9％増が寄与。
グローバルでのオーガニック売上は、3％減。
全米の交通・ビルボード広告は、第4四半期も増加予想。

［クリア・チャネル・アウトドア］

為替調整済み売上は1％増。タイムズスクエアの「スペクタカラー」事業の売上増が寄与。
全米のビルボード売上は減少。全国規模クライアントの売上減が要因。
グローバル売上は1％増

［ラマー・アドバタイジング］

M&A調整済み売上は8％増。デジタル看板の需要増が寄与。来年150台の新デジタル看板を設置予定。第4四半期は2～3％増を予定。
全米売上は1％増。
ローカル企業からの売上は1％増。
通信業界の売上は23％と突出。（ただしラマー全売上の3％）

細かく見れば各社まちまちですが、全米の売上は総じて昨年同期比プラスで終わったようです。さらに、第4四半期もプラスが予想されています。

アメリカで屋外広告が好調なのは、なぜなのか？その理由をまとめると、次のようになります。

【アメリカで屋外広告が好調な理由】

スキップされずに大衆に届く媒体だから
デジタル広告の需要が高いから
ニューヨーク・ロサンゼルスなど大都市・観光地の売上が伸びたから

1について、スキップされないのは、テレビにはない屋外広告の特徴。録画したテレビをCMスキップで見る人が、アメリカには相当いるのでしょう。だから、このように表現されるのだと思います。さらに、マス（大衆）に届く媒体なので、ナショナルクライアント（全国規模の広告主）向けと言えます。属性ごとに広告内容を変えるネット広告とは、対極です。

2について、屋外広告が好調だからと言っても、単に昔ながらの看板が売れているわけではありません。デジタル化したからこそ、需要が伸びているのです。ネット・モバイルを通じて得たデータを分析し、屋外のデジタル広告の表示内容を臨機応変の変更しているのでしょう。だから、広告効果（ROI）の測定がより精緻化し、効果の高い広告出稿が可能な媒体として評価されているのです。

3について、ニューヨーク・ロスアンゼルスは大都市であり、タイムズスクエアは観光地でもあります。集客力の高い立地だからこそ、屋外広告は人気なのです。より多くの人に露出できるので、大衆に強いという屋外広告の強みがより強くなります。さらに、デジタル機器に接する時間が増える中でも、大都市・観光地での屋外広告への出稿が増えているということは、観光客への広告効果を期待しているのかもしれません。マクドナルドなどのグローバル企業にとっては、絶好の広告出稿先になるでしょう。

スマホなどのモバイル機器への接触時間が増えている一方で、ボットによる広告インプレションが実は大きかったり、iPhoneの公式ブラウザーが広告ブロック機能を標準搭載したりと、ネット広告の本当の効果に疑問符が付いています。屋外広告が見直されている背景には、ネット広告への不信があるのかもしれません。

ボットによる広告インプレション疑惑に関する記事

iPhoneの広告ブロック機能標準搭載に関する記事

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《今回のヒントのまとめ》

アメリカでは屋外広告が回復基調にある。広告主が、ビルボード広告や交通広告、デジタル看板を見なおしている証左である。
その理由は、スキップされず大衆に届く媒体であり、臨機応変に変更しROIを測定できるデジタル広告への需要が増えているからである。
また、ニューヨークやロスアンゼルスなどの集客力のある大都市・観光地での広告効果が見直されていることも要因だろう。観光客にリーチできることは、グローバル企業にとって魅力的である。
ボットによる詐欺的な広告インプレションやiPhoneの広告ブロック機能標準搭載など、ネット広告への不信も影響しているのかもしれない。

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