【930号】アルチザン系食品メーカーが直面する、成長の痛みとは?
◎本日のニュース
1)見出し
Why Artisanal Food Makers Find It Hard to Digest Growth
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2)要約
過去数年、ローカル食品や有機食品などの手作り系食品がブームとなり、大手小売チェーンはおろか、ベンチャーキャピタル(VC)までが注目するようになった。ブームの一方で、成長の痛みとも言える課題に直面している。
それは、大手チェーンが要求する需要に対して供給できずに、結局短期間で売場を失うということである。また、需要を満たす原材料の十分な確保にも苦労している。さらに、スタートアップの場合は、有利な仕入れ条件が得られないために、天候や商品価格の変動から大きな影響を受ける。
そもそも、大手チェーンの客層にその食品が合ってない場合も多い。さらに、短期間で結果を求めるVCにとって、仕入先・販売先との協業が必要な食品ビジネスは不適合とも言えるだろう。
3)キーとなる英文
Yet the sudden burst of customers and backers has brought food entrepreneurs a lot of headaches.
4)キーとなる英文の和訳
しかし、顧客や販売先の急激な爆発的増加によって、食品起業家は多くの頭痛の種を持つようになった。
5)気になる単語・表現
backer | 名詞 | 後援者、支援者 |
multiple | 形容詞 | 複合的な、多様な |
crop | 名詞 | 収穫物 |
peg A to B | 他動詞句 | AをBに連動させる |
smooth out | 他動詞句 | (物価変動など)をならす |
generational | 形容詞 | 時代の、世代の |
flop | 自動詞 | 完全に失敗する |
pasteurization | 名詞 | 殺菌 |
flat-foot | 名詞 | 偏平足 |
(今回ピックアップ英単語)
【flop】
ピックアップコーナーで以前に取り上げたかもしれません。WSJ頻出の英単語にして、覚えにくさもピカ一。私も苦労しています。
まずは、「マイナスの意味」ということを覚えておきましょう。
「flop(フロップ)」と聞いて、「モップ」を連想する私には、マイナスの意味すら連想できませんが。
意味は、
「ドスンと倒れる collapse」→「(態度などが)突然変わる」
「ドスンと倒れる」→「(計画・映画などが)完全に失敗する fail badly」
です。
主体は自動詞。他動詞もありますが、「~をドスンと落とす」ぐらいなので、あまり重要ではありません。名詞は、「ドスンと倒れる音(こと)」「完全な失敗(作)」「(株価などの)急落」など。
最低でも覚えておきたいのは、「倒れる」「完全な失敗」の2つ。
6)ビジネスのヒント
今回は、ビジネス欄のスモールビジネスから。そう言えば、昔アメリカに留学している頃は、スモールビジネス・創業にとても興味を抱き、“small business”という単語の付く記事や書籍・サイトにはよく目を通していたことを覚えています。
日本でも最近になって、ローカル食品は注目され始めましたが、アメリカではブームに近いものがあるようです。ローカル食品や有機・サステイナブル食品などアルチザン系(手作り系)食品メーカーにとっては、大変嬉しいことですが、急成長ゆえに苦悩もあるようです。記事では、この苦悩・マイナス面を取り上げています。
【急成長の手作り系食品メーカーが直面する苦悩】
- 製造キャパが小さいゆえに、大手小売チェーンが要望する需要に答えきれないこと
- 需要を満たす十分な原材料を確保できない
1は、製造キャパの問題。コストコやウォルマートに採用が決まれば、店舗の棚に並ぶだけでも、大量に受注されます。さらに、ブームゆえに店頭でも売れるので、追加注文も爆発的に増えるようです。しかし、受注に対して製造キャパが追いつかないために、欠品してしまいます。つまり、製造がネックとなって、販売機会を喪失するのです。
2は、仕入れの問題。大量受注に対応するには、原材料を大量に仕入れる必要があります。しかし、中小・零細企業のため、世界中から原材料を仕入れるわけには行かず、需要に対し原材料確保ができないという問題が生じます。さらに、これが創業間もないスタートアップの場合、多様な仕入先と有利な契約を結ぶのが困難なため、気候や商品価格の変動をモロに受けることになります。無駄に高い価格での仕入れを余儀なくされ、利益が損なわれることになります。
また、手作り系食品メーカーの販売戦略にも誤りが生じる場合があります。
【手作り系食品メーカーが陥りやすい間違った販売戦略】
客層が適していないにも関わらず、知名度の高い大手小売チェーンへの販売に力を入れること
事業家としての見栄とでも言えるでしょうか。知名度の高い小売チェーンに採用されれば、業界の中でも一目置かれる存在になれます。それを夢見て、全国チェーンの小売企業への販売を優先する食品メーカーが多いようです。しかし、概して大手チェーンの客層は、品質よりも価格を優先する消費者が多いので、品質が魅力の手作り系食品の販売には適しているとは言えません。実際、期待したほど売れずに、短期間で売場を失う例は多いようです。これでは、大手チェーンへの販売にコストを掛けた意味がありません。
そこで、記事では、次のような処方箋が示されています。
【手作り系食品メーカーが行うべき販売活動】
- 販売見込みの高い小売企業への販売に力を入れる
- 時間を掛けて、仕入先・販売先の理解を得る
- まずは販売先を限定して、製造規模の拡大に成功してから販路を拡大する
- 仕入先を分散する
1は、先述の大手チェーン重視のアンチテーゼです。価格ではなく品質で売る商品であるために、品質を重視する顧客の多い小売店に力を入れるべきなのです。コストが掛かっても売場さえ確保できれば、その後は安定した売上が期待できます。
2について、そもそも手作り系食品は、限られた産地の原材料を使用するなど、製造に制約を受けるものが多い傾向があります。よって、供給量や供給期間に制限が生まれます。その制約に理解のある販売先ではないと、長期的な販売は期待できません。逆に、仕入先には、小売チェーンの棚を埋めるのに必要な、安定的な原材料の供給が必要になることを、理解してもらう必要があります。両者の理解があって初めて、手作り系食品が長期的に小売チェーンで販売されることができるのです。
3について、そもそも供給量に限りがあるなら、販売先を限定すべきです。売り先候補は、自社で決められるのですから。増産が可能になってから、販路を拡大すればいいのです。
4について、天候や商品市況の影響を最小化するには、仕入先を分散する必要があります。仕入れに規模の経済が働かないというデメリットがありますが、売場確保の高いコストを考えれば、安定供給の方を優先すべきでしょう。
要は、ブームに踊らされずに、地道に製造・販売の拡大をするということに尽きるでしょうか。だからこそ、短期収益を重視するVCには不向きと言えるのです。
日本でも、大手小売チェーンでローカル色を出そうというトレンドが強くなっています。今後、今回取り上げたようなアメリカで起こった課題が浮かび上がるかもしれません。
また、スーパーなどの小売チェーン以外の、商品特性に理解ある販路も考えた方がいいかもしれません。例えば、道の駅とか産直市など。生鮮品主体の小売店ならば、季節によって供給品や供給量が変わることを、理解されやすいのではないでしょうか。さらに、新鮮な野菜を求める客層は、少々高くても品質の高い手作り系食品にも興味を示してくれるものと思われます。
逆に、安定供給できないからこそ、手作り系食品の価値が高まるかもしれません。
[記事で紹介された手作り系食品メーカー]
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《今回のヒントのまとめ》
- 手作り系食品ブームを受けて、大手小売チェーンばかりかVCまでが注目するようになった。その結果、問題が生じている。
- それは、大手チェーンが求める需要に対し、供給が不足するという問題である。また、需要を満たす原材料の確保が難しいという問題もある。
- さらに、手作り系食品メーカー自体が、客層の合わない大手チェーンへの販売に力を入れているという問題もある。客層が合わないがために、期待ほど売れずに、短期間で売場を失うことになる。
- これらの問題に対し、4つの解決策がある。それは、売れる見込み高い小売企業に販売を注力すること、時間を掛けて仕入先・販売先の理解を得ること、販売先を限定すること、仕入先を分散することである。
- 食品メーカーのローカル化が進む日本でも、今度同様のことが起こるかもしれない。また、道の駅など供給量に制限があることに理解を示しやすい販路を開拓してもいいだろう。さらに言えば、安定供給できないことを、付加価値として売ってもいいのではないか。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
プレモル上位版を飲む機会がありました。
その名も、「マスターズドリーム」。
コクは確かにありますが、私にとっては少し苦く感じました。
ザ・モルツと言い、最近のビールは苦味がトレンドなのでしょうか。
モルツはそれなりに売れているとも言われていますし。
このマスターズドリームは、ギフト専用商品と思っていましたが、コンビニでも売っていました。
グランドキリンに対抗なのでしょうか。
ビール好きなら、一度は飲んでみるといいかと思います。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
風邪を引いたこともあり、最近実に病院に行く機会が多くなりました。
当たり前ですが、病院にはウィルスがいっぱい。
行く度に、さらに悪くなるのではないかとヒヤヒヤしています。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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2015/12/02 | ウォールストリート・ジャーナル, 食品業界 販売戦略, 食品
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