【931号】ウォルマートが教えてくれる、電子レシートの大きな利点とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Wal-Mart Revamps E-Commerce Technology as Amazon Applies Pressure
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2)要約
サプライチェーンの効率化でディスカウント販売を可能にしたウォルマート・ストアーズ社が、アマゾン・ドット・コムに対抗するために、ITシステムの抜本的な刷新を実施している。そのプロジェクトは、パンゲアと呼ばれ、クラウド環境・データセンター・検索エンジンを再開発している。
新システムを活用して、今年の年末商戦では、ネット・実店舗双方の利用者を優遇する。というのも、双方のユーザーは、単一ユーザーよりも年間支払額が多く、収益性が高いからである。この時に威力を発揮するのが、eレシートと呼ばれる電子レシートである。
3)キーとなる英文
Wal-Mart, determined to avoid a similar fate, has poured billions of dollars into a digital transformation singular not only for its size and scope — 15 acquisitions and 3,600 new hires – but also for the way its new Silicon Valley epicenter has upended Wal-Mart’s historic approach to technology.
4)キーとなる英文の和訳
ウォルマートは、同様の運命をどうしても回避するために、数十億ドルもの資金をデジタルへの転換につぎ込んできた。
その目的は、規模と機会のため、つまり15の買収と3600人の新規雇用のためだけではない。
新たなシリコンバレーの中心地から、ウォルマートの従来型IT投資を一からやり直すためでもある。
5)気になる単語・表現
formidable | 形容詞 | 恐ろしい;敬意を抱かせる;(敵などが)手に負えない |
be determined to V | 他動詞句 | ~することを堅く決心している |
scope | 名詞 | 機会;(能力などの)範囲;活動範囲 |
transformation | 名詞 | 変形 |
epicenter | 名詞 | 震央の真上の地;中心点 |
upend | 他動詞 | ~をひっくり返す |
underlie | 他動詞 | ~の基礎となる |
wherewithal | 名詞 | 必要な手段 |
brace | 他動詞 | ~を元気づける、~を奮起させる;身構える(oneself) |
occasionally | 副詞 | 時折 |
promise | 名詞 | 有望、見込み;約束 |
spawn | 他動詞 | (魚などが)~を産む;~を多量に産む、~を生産する |
(今回ピックアップ英単語)
【brace】
名詞で「締め金、かすがい」「中かっこ」。そこから、派生して「~を補強する」「~を元気づける」に。oneselfを目的語とした場合は、「自分を補強する、支える→身構える、気を引き締める」に。
(例文)
I braces myself for the news.
「そのニュースに備えて腹を据えた」
6)ビジネスのヒント
今回は、CIOジャーナルから。CIO(最高情報責任者)用の記事とあって、IT関連の詳しい情報が掲載されています。だから、少し内容が難しいし、その分読み込むのに時間が掛かるのも事実。今回は、わかりやすくまとめたいと思います。
サプライチェーンの最適化・効率化でEDLP(毎日安値)販売を可能にしたウォルマート・ストアーズ社。今一番のライバルは、アマゾン・ドット・コム社です。家電量販店のサーキットシティや書籍大手のボーダーズなど、実店舗型量販店を市場から追いやった犯人は、アマゾンに他なりません。記事からは、アマゾンの脅威に怯えるウォルマートがまじまじと感じられます。
そのウォルマートが、アマゾンに対抗すべく、ITシステムの抜本的な刷新を行っています。そのプロジェクト名は、パンゲア。パンゲアの内容をまとめると、次のようになります。
【ウォルマートが実施するプロジェクト・パンゲアの要約】
- 内部・外部のクラウドサービスの併用と管理
- データセンターの刷新
- 検索エンジンの再開発
1に関して、アマゾンが自社のクラウドサービスを利用・外販するのに対し、ウォルマートは内部クラウドと外部クラウドを併用しています。そして、独自開発した「ワンオプス」というツールで、内部クラウドと外部クラウド間のアプリケーションの移動を容易しています。これにより、特定のクラウドへの依存を回避し、不測の事態に備えることができます。
もちろん、サーバーをクラウド化することで、トラフィックの急増に即座に対応できるのですが、それ以上に重要なのが、活用するオープンソースのアップデートにも即座に対応できること。ウォルマートは、「ワンオプス」など開発アプリケーションを、オープンソースコミュニティに公開することで、外部の改良・開発を取り込むという手法を取っています。これは、P&Gが、外部の新技術・アイデアを積極的に活用しているのと同じ。アメリカ企業では、内部機密以外はオープン化することで、外部資源を積極的に活用しようという傾向が強まっています。
2について、実店舗・ネット通販での購入履歴やサイト内行動などのデータを統合することで、実店舗・通販サイトの併用ユーザーへのマーケティングを強化しています。その理由は、併用ユーザーの方が、年間支払額が多いから。
【実店舗・通販サイトのユーザー別年間支払額】
- 実店舗のみ:1400ドル
- 通販サイトのみ:200ドル
- 実店舗・通販サイトの併用:2500ドル
この数字が物語るのは、併用できる環境を整えるほど、顧客一人あたりの年間売上が伸びるということ。だから、実店舗・ネット通販のデータ統合を進めているのです。
その秘密兵器とも言えるのが、eレシートと呼ばれる電子レシート。実店舗での支払い後、瞬時にスマホにレシートを送るシステムです。昨年のブラックフライデーセールで、1時間限定セール時に活用したところ、品切れによる顧客の不満を回避することに成功したようです。具体的には、先に支払い、eレシートを通販サイトに登録すれば、クリスマスイブまでに支払い店舗で引き取ることができるようにしました。
顧客にメリットのあるeレシートですが、それ以上のメリットが販売者側のウォルマートにあります。それは、顧客の購入データを収集できるというメリットです。通常ならば、ロイヤルティカードを発行する必要があり、カードの提示を促すために、クーポンの提供や会員値引きの実施が必要となります。一物一価のEDLPを売りにするウォルマートにとっては、これは無理な問題。また、値引きのみならずカード発行などでコストの掛かることも、利益面ではマイナスになります。収益にマイナスにならずに購入データを収集できる点こそが、eレシートの大きなメリットなのです。
3について、検索エンジンを独自に開発することにより、単に欲しい物の表示だけではなく、ユーザー全体の購入履歴と属性からおすすめ商品を提案(レコメンデーション)できる点により、購入確率(コンバージョン)を高めることができます。もちろん、レコメンデーションのためには、2のデータセンターが重要な役割を果たすことになります。
アマゾンへの対抗のために、これら3点に力を入れているということは、逆にアマゾンは既に行っているということでもあります。つまり、ITシステムを活用して、顧客の購入・閲覧データを収集・分析することによって、顧客一人あたりの年間売上高の最大化を図っているのです。アマゾンプライムは、そのためのプログラムと言えるでしょう。有料会員に、無料急速配達だけではなく、無料楽曲・動画サービスを提供することにより、囲い込みを行っているのです。「年会費を払っているのだから、できるだけアマゾンを使おう」となれば、年間支払額は高まります。
ウォルマートのアマゾン対抗策からわかるのは、客数の最大化よりも、顧客一人あたりの年間売上高の最大化の方が、収益最大化の近道になるということではないでしょうか。
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《今回のヒントのまとめ》
- サプライチェーンの最適化により実店舗の低コスト運営を可能にしたウォルマートは、アマゾン対抗策として、ITシステムの抜本的改革を行っている。
- 具体的には、内部・外部クラウドの併用と管理、データセンターの刷新、検索エンジンの再開発である。
- サーバーをクラウド化することにより、トラフィックの急増に対応できるだけではなく、オープンソースでのアップデートに即座に対応できる。また、内部・外部を併用することで、特定クラウドへの依存を回避でき、不測の事態に対応できる。
- データセンターの刷新の目的は、実店舗・ネット通販での購入データ・行動データを統合することである。これにより、より年間支払額の多い実店舗・サイト併用ユーザーを増やすことができる。
- 検索エンジンを再開発する目的は、欲しい物の提示だけではなく、データと属性によりおすすめ商品を提案するためである。これにより、購入確率を高めることができる。
- ウォルマートの施策が示すのは、客数の最大化よりも、顧客一人あたりの年間売上最大化の方が、収益最大化につながりやすいということではないか。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
プレモル上位版を飲む機会がありました。
その名も、「マスターズドリーム」。
コクは確かにありますが、私にとっては少し苦く感じました。
ザ・モルツと言い、最近のビールは苦味がトレンドなのでしょうか。
モルツはそれなりに売れているとも言われていますし。
このマスターズドリームは、ギフト専用商品と思っていましたが、コンビニでも売っていました。
グランドキリンに対抗なのでしょうか。
ビール好きなら、一度は飲んでみるといいかと思います。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
先日、小学校の同窓会がありました。
中学校は私学に行ったので、約30年ぶりの再会。
これほど楽しめるとは思いもしなかったです。
比較的小さな小学校だったので、クラスメート以外も大抵わかります。
私の場合は、保育園から一緒の友達も多かったので、すべてをさらけ出せる仲間だから、楽しいのなんのったら。
担任の先生もみんなご健在で、何よりでした。
またやりたいなぁ。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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