【941号】サイバーマンデーの派生ビジネス、その仕組みと最新事情とは？

Lumber Liquidators

Mike Mozart

◎本日のニュース

1)見出し

Where Your Unwanted Christmas Gifts Get a Second Life

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2)要約

ネット通販の弱点と言えば、大量の返品が生まれることである。年末商戦では特に返品は大量なので、返品商品を再販するビジネスが生まれている。

大量に返品が生まれるのは、ネット通販の返品率が平均で10～15％にも上るからである。実店舗の7％程度よりも高い。これは、返品無料の通販サイトの増加が原因である。しかも、年末商戦は返品可能期間が長いために、ネット通販売上の約1/4が返品されていることになる。

返品商品は、中間業者を介して倒産品専門業者などにトラック単位で破格値で売られるのが一般的である。しかし、より高く売りたい小売企業の場合は、専門のネット通販業者に直接販売を委ねるパターンなども増えている。

3）キーとなる英文

Mr. Ringelsten runs a massive operation outside Chicago in which he buys truckloads of returned merchandise, sorts through the items and rapidly resells most of them over the Internet at bargain-bin prices.

4）キーとなる英文の和訳

リンゲルスタン氏が運営するのは、シカゴ郊外の巨大な倉庫である。

そこでは、トラック単位で返品商品を買い付け、種類ごとに分別し、その大部分をすぐにネットを介して破格値で再販する。

5）気になる単語・表現

underbelly	名詞	攻撃されやすい地域；弱点
operation	名詞	事業；操業
bargain	名詞	掘り出し物；見切り品
bin	名詞	蓋のある大箱
boom	自動詞	にわかに景気づく
flawed	形容詞	傷のある
centralize	他動詞	～を中央に集める、～を中央集権化する
houseware	名詞	家庭用品
fetch	他動詞	～で売れる
pawnshop	名詞	質屋
dispose of	自動詞句	～を処理する；～を処分（始末・売却・譲渡）する
recover	他動詞	～を回復する

（今回ピックアップ英単語）

［fetch］

（意味）

「～を連れてくる、～を取ってくる」「～に行って取ってくる」「（値段）で売れる」「術策、策略」

（英英）

go to where somebody or something is and bring them or it back

to be sold for particular

（メモ）

WSJでは、「（値段）で売れる」という意味が圧倒的に多い。

6)ビジネスのヒント

サイバーマンデーは、米ネット通販における年末商戦の開始セールのこと。実店舗のブラックフライデーが金曜日に始まるのに対し、ネット通販は月曜日からセールが始まるので、サイバーマンデーと呼ばれています。その年末商戦のネット通販において、頭の痛いのが、大量の返品です。もちろん、実店舗小売でも返品は発生するのですが、気軽に返品のしやすいネット通販は、返品率が極めて高くなっています。

【米小売業界の返品率】

小売全体：約8％（2605億ドル）の見込み（2015年）
ネット通販：平均10～15％、アパレルは30％超
実店舗：7％ほど

実店舗や全体と比べると、ネット通販の返品率の高さが際立っています。サイズや色という好みが大きく関係するアパレルは、何と30％超！しかも、年末商戦では、小売価格（上代）ベースで194億ドルの商品が返品され、ネット通販の約1/4に達しています。その理由は、

返品無料の通販サイトの増加

年末商戦における返品可能期間が通常よりも長い

からです。つまり、返品しやすい環境が整っているからこそ、大量の返品が発生しているのです。逆に言えば、それほどネット通販の競争が激しいということでもあります。

返品された商品は、専門業者によって再販されます。その仕組みの詳細は、以下の通りです。

【ネット通販の返品商品再販ビジネス】

返品は、物流業者の1ヶ所の返品センターに集約される（小売企業に戻るのではない）
小売企業から購入した物流業者は、倒産品専門業者やその他中小企業にトラック単位で再販
上代の10～20％で、トラック10台～100台単位で販売
最終的には、質屋・1ドルショップ・フリーマーケットにたどり着く

上代の10～20％という破格値で、小売企業は現金化しているというのが実情なのです。だから、返品商品は自社倉庫で確認するのではなく、販売先の物流業者に直接返されます。

しかし、上代の10～20％という破格値で売る従来のやり方では、小売企業は損失を蒙り兼ねません。そこで、より高く売るために、新たな方法で再販する小売企業が増えています。

【より高く売るための最新手法】

トラック単位ではなく、より小さいパレット単位で再販。購入できる層が増えるために、より高く売れる。
返品商品は小売企業の倉庫に集め、販売だけをネットの専門業者に委託。

1は、より小さなサイズにして、ターゲット層を拡大しようという戦略です。それにより、トラック単位よりも掛け率が高まります。2は、モノは自社倉庫で保管し、販売だけを委託するパターン。記事によると、このやり方では、販売価格が上代の40～70％まで上昇するようです。恐らく、ネットから直接質屋や1ドルショップ・フリマ業者に売るのでしょう。所謂、中抜きにより収益性の向上を狙った戦略です。

記事で紹介されている物流業者・倒産品専門業者などを、まとめておきます。

【返品品の再販に関わる物流業者・倒産品業者など】

ジェンコ（物流業者）

フェデックス社内の事業。販売できれば、上代の20％を小売企業に支払う。

オプトロ（販売委託者）

ネットで返品商品を再販。

ショアウッド・リクイデターズ社（倒産品専門業者）

返品商品を自社倉庫で収集・分類し、イーベイや自社サイトで販売。

Bストック・ソリューションズ社

パレット単位で販売。購入者は、小売企業倉庫から引取り。

そもそも、返品の再販ビジネスは仲介ビジネスに他なりません。だから、小売企業が直接行っても不思議ではないのです。それでも、返品商品の再販ビジネスが成り立つのは、

早く現金化したい小売企業の存在

需要の高いカテゴリー（玩具・スポーツ用品・家庭用品・家電など）の存在

があるからです。さらに、ショアウッドによると、最大で20％が売れ残るというリスクもあります。他社が取りたくないリスクがある一方で、高いニーズが存在するからこそ、成り立つのです。

ネット通販市場の拡大する日本でも、返品の再販ビジネスが今後生まれるかもしれません。

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《今回のヒントのまとめ》

年末商戦のネット通販市場が拡大する一方で、その返品商品を再販するビジネスも活況を呈している。
それは、ネット通販の返品率が実店舗よりも高いからである。この背景には、返品無料の通販サイトの増加と、年末商戦における返品可能期間の長期化がある。
従来の返品商品の再販は、返品商品を物流業者の返品センターに集約し、物流業者が倒産品専門業者などに、上代の10～20％という破格値で、トラック単位で売るというものだった。
小売企業はそれでは損失を被りかねないということで、より小型のパレット単位にしたり、中間業者を抜いて直接ネットの専門業者に販売を委託したりして、返品再販の掛け率引き上げを目指している企業もある。
そもそも、仲介する返品再販ビジネスが成立するのは、早く現金化したいという小売企業のニーズと、需要の高いカテゴリーという消費者ニーズがあるからである。さらに、売れ残りリスクがあるからこそ、専門ビジネスとして成り立つ。

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