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【950号】実店舗型小売企業がコストの掛かるオムニチャネル戦略を採用する本当の理由とは?

 Finish Line Store

◎本日のニュース

1)見出し

Retailers Bet Big on Retooling Their Supply Chains for E-Commerce

 

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2)要約

ネット通販市場の拡大に直面する実店舗主体の小売企業にとって、実店舗とネットを融合するオムニチャネル戦略は強みとされている。しかし、その構築コストが多大なため、明確な成功事例はまだ存在していない。

 

オムニチャネル戦略を採るには、店舗への配送に最適化されたサプライチェーンを再設計する必要がある。そのコストが膨大なだけではなく、元々性格の異なるサプライチェーンが混在するために、在庫管理や店舗運営に混乱が生じる。その結果、販売機会を逃すことになり、利益のみならず売上にもマイナスに働き兼ねない。

 

さらに、オムニチャネル戦略が店舗のショールーム化を引き起こすことにより、ネット通販売上が増加する一方で、実店舗売上が減少する恐れがある。これでは、ネット通販に掛かる配送コスト分だけ利益率が削がれることになる。

 

3)キーとなる英文

Many traditional retailers are struggling as their customers move online, hoping that costly investments to retool their supply chains for e-commerce will eventually pay off.

 

4)キーとなる英文の和訳

多くの従来型小売企業は、顧客のネットシフトにより、苦戦している。

そのため、多大な投資を行って、ネット通販に合わせて自社のサプライチェーンを再設計しており、それが結果的にペイすることを期待している。

 

5)気になる単語・表現

under way 副詞句 起こって、始まって、進行中で(in progress)
at stake 副詞句 危険にさらされて;賭けられて
state-of- the- art 形容詞句 最新技術の
contribute to 自動詞句 ~の一因となる
hodgepodge 名詞 ごたまぜ、寄せ集め
gratification 名詞 満足感;満足させる(する)こと
settle 自動詞 落ち着く;沈む
facility 名詞 設備
assemble 他動詞 ~を集める
trade A for B 他動詞 AをBと交換する
incremental 形容詞 増加分の
profitability 名詞 収益性

 

(今回ピックアップ英単語)

【gratification→動詞型はgratify】

  1. (事)が(人)を喜ばせる、満足させる

We were gratified by the good news.

「その良い知らせを聞いて私達は喜んだ」

  1. (欲望・衝動など)を満足させる

gratify ones’s hunger with crusts.

「パンのみで飢えをいやす」

(類義語)

「楽しませる」 entertain, amuse, please, delight, feast, regale

「喜ばせる」 please, delight, oblige, tickle, satisfy, tickle O’s ear

「喜ぶ」 please, rejoice, delight, congratulate

 

6)ビジネスのヒント

ネット通販市場の拡大により、アマゾンやその他ネット専業企業が収益を拡大する一方で、従来型の実店舗主体の小売企業は苦戦を強いられています。そこで、ネット専業への反撃のために、自社の強みである実店舗を活かして、ネット通販売上の拡大を狙います。つまり、オムニチャネル戦略を採用するということです。しかし、これがなかなかうまく行かないようです。

 

【オムニチャネル戦略の失敗事例】

  1. フィニッシュライン社(スポーツ小売)

◯ネット通販の注文に対応するために、新在庫管理システムを導入→多大な投資を実施

◯注文に迅速な対応ができず、3200万ドル分を失注→全600店舗のうち四分の一を閉鎖予定

  1. ステージストアーズ社(ローカルアパレル小売)

オムニチャネル戦略採用により投資・輸送費拡大で粗利益率の低下→800店舗のうち90店舗を閉鎖

 

二社に共通するのは、多大なコストを掛けてネット通販に適したサプライチェーンに再設計するものの、在庫管理・配送手配に手こずり、収益性が大きく低下したということです。その結果、店舗閉鎖というリストラに追い込まれています。

 

そこで、オムニチャネル戦略の弊害をまとめると、次のようになります。

 

【オムニチャネル戦略の弊害】

  1. サプライチェーンの再設計に伴う膨大な投資→コスト増
  2. 新たな在庫管理・発送手配により、倉庫・店舗が混乱→売上減・コスト増

 

1について、ネット通販への対応のために最新ソフトを導入するだけではなく、倉庫の配置転換や従業員教育が必要となるので、膨大なコストアップにつながります。

 

2について、実店舗型小売企業が持つサプライチェーンは、店舗配送に適したもの。つまり、大きな荷物を限られた店舗に送るという仕組みです。一方で、従来型サプライチェーンに加わるネット通販用のサプライチェーンは、小さな受注品を収集・梱包し、広範囲に広がる多くの顧客に送るというもの。全くその仕組みが異なるので、混乱が生じます。その結果、ネット受注に迅速に対応できず、失注が増加します。この結果が売上の低下です。さらに、2つの性格を持つサプライチェーンが混在することで、従業員の労働生産性が低下し、コストアップにつながります。

 

これに加え、店舗におけるネット注文品の引き渡しや返品受付が生まれると、店舗運営が増幅するだけではなく、サプライチェーンはさらに複雑化します。この結果はコストアップに他なりません。

 

さらに、オムニチャネル戦略を採用したからといって、全体の売上が増加するとは限りません。例えば、もともと実店舗で購入していた顧客が、実店舗では商品を確認するだけにして、注文はネットから行うというパターンが起こりうるのです。このショールーミングが増えれば、コストを掛けてオムニチャネル戦略を採用しても、実店舗売上がネットにシフトしただけに過ぎません。しかも、実店舗での販売では不要な宅配コストが発生するので、売上は変わらずもコストだけ増えるという事態になり兼ねません。コストを掛けてオムニチャネル戦略を採用しても、売上がさほど増えないかもしれないのです。

 

実際に、オムニチャネル戦略による明確な成功事例はまだ存在しないようです。つまり、オムニチャネルにより、粗利益低下に歯止めを掛けた事例も、アマゾンなどのネット専業に対抗出来た事例もないのが実情なのです。

 

それでも、実店舗型小売企業がオムニチャネル戦略に期待するのには、理由があります。

 

【実店舗型小売企業がオムニチャネル戦略に期待する理由】

  1. 店舗はネット専業が持たない強みであるため、差別化になるから
  2. ネット・実店舗双方で買物をする顧客が増えることで、ブランドロイヤルティが向上し、収益向上につながるから

 

1について、店舗はネット専業にはない実店舗型小売企業の強み。この強みを活かさない手はありません。2について、ネット・実店舗双方で買い物をする顧客の売上は、片方の顧客の2~3倍あるようです。この2~3倍というのは、顧客一人あたりの年間売上のことでしょう。つまり、オムニチャネル戦略を採用することにより、ブランドロイヤルティが向上し、購入機会が増えるということです。これは、収益性の向上につながります。

 

ブランドロイヤルティ向上による収益向上を目指すのが、ファッション小売のDSW社。実店舗で、在庫のない商品をその場でネット注文できるようにして、実店舗で返品の受付も行います。これだけのサービスを提供することで、ネット・実店舗にかかわらず売上を伸ばし、市場シェアの拡大を狙っています。

 

今のところ、オムニチャネル戦略は、ネット通販・実店舗間での激しい競争の中、集客を増やすために利益を吐き出しているに過ぎません。理論的には、ブランドロイヤルティの向上による収益拡大が期待できますが、本当に実現するかどうかはまだ不明です。

[記事で紹介されたオムニチャネル戦略採用チェーン]

Finish Line

Stage Stores

Williams-Sonoma

Wal-Mart Stores

DSW

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. 実店舗型小売企業が採用するオムニチャンネル戦略には、膨大な投資とサプライチェーンの再設計による倉庫・店舗の混乱という欠点がある。
  2. 倉庫・店舗の混乱により、ネット通販での販売チャンスロスが生まれるだけではなく、生産性の低下によりコストも上昇する。つまり、収益双方とも低下する恐れがある。
  3. さらに、オムニチャネル戦略を進めると、店舗のショールーミングを招くことにより、全体の売上がさほど伸びない恐れがある。宅配コストだけ増えるので、収益性は悪化する。
  4. それでもオムニチャネル戦略を進めるのは、ブランドロイヤルティの向上により、収益拡大が期待できるからである。ネット・実店舗双方で購入する顧客の年間売上は、片方でしか購入しない顧客の2~3倍あり、売上・利益とも高いからである。

 

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

昨年のふるさと納税の御礼品が続々と到着しています。

最近食べたのが、福岡県嘉麻市の赤崎牛。

赤身テーキをいただいたのですが、大好きな赤身が多いわりに、柔らかくてとてもおいしかったです。

冷蔵なので新鮮なのも、嬉しいところ。

また今年もお願いしたいですね。

福岡県嘉麻市 Oセット赤崎牛・赤身ステーキ

楽天市場には販売されていませんが、「赤身ステーキ」ならありますよ。

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

オムニチャネル戦略で鍵を握るのは、顧客毎にどこの倉庫・店舗から送ればコストを最小化できるかを提示してくれるソフトです。

結局一番儲けるのは、ソフト開発・運営企業なのかもしれません。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

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