【951号】実店舗小売企業を負かしてきたアマゾンが実店舗の大量出店に踏み切る理由
◎本日のニュース
1)見出し
Amazon Rips Page From Rivals’ Offline Playbook
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2)要約
ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コム社が、全米に実店舗を広げることがわかった。これは、実店舗で収益を拡大してきた中小のネット専業小売企業の作戦に沿っているにすぎない。
ネット専業がコストの掛かる実店舗を設けるのは、実物に触れらないで購入する不安を解消するためである。その結果、ネットではリーチできなかった一定の消費者を集客することができる。
アマゾンの実店舗では、本だけではなく家電も陳列することで、集客の最大化を目指し、ブランド認知度の向上に努める。また、購入データを分析することで、在庫は少なくし、ネットでの購入で補う。
3)キーとなる英文
But Amazon’s apparent plan to build a physical presence in shopping malls and urban centers is following the playbook of smaller Internet retailers that are finding early success reaching shoppers via storefronts and kiosks.
4)キーとなる英文の和訳
しかし、ショッピングモールや都心部に実店舗を建設するというアマゾンの明らかになった計画は、中小のネット専業小売企業の作戦に沿っている。
その作戦の結果、店頭や売場を通じて買い物客の集客に早くも成功している。
5)気になる単語・表現
rip | 他動詞 | ~をもぎ取る |
defy | 他動詞 | ~を無視する |
blueprint | 名詞 | 青写真;詳細な計画 |
pummel | 他動詞 | ~を(こぶしで)南海もなぐる |
playbook | 名詞 | プレイブック、作戦図を載せたノート |
storefront | 名詞 | 店頭 |
kiosk | 名詞 | 売店 |
offset | 他動詞 | ~を相殺する |
prohibitively | 副詞 | (購入意欲を削ぐほど)途方も無く高く |
covet | 他動詞 | ~をむやみやたらに欲しいと思う |
unforgiving | 形容詞 | 厳しい、容赦のない;(他人を)許さない |
legitimacy | 名詞 | 合法性;正当性 |
immediacy | 名詞 | 直接(性);即時(性) |
(今回ピックアップ英単語)
【prohibitive→動詞型はprohibit】
- (団体・法などが)~を禁止する(ban、通例受身。個人が禁止する場合はforbid)
The law prohibits child labor.
「法律は子供の修行を禁止している」
Smoking is prohibited in this room.
「この部屋は禁煙です」
Our school prohibits us from posting bills on the wall.
「我々の学校では壁にビラを貼ることは禁止されている」
- (物・事が)(人)が~するのを妨げる(prevent)
Lack of funds prohibited her from taking classes.
「資金が不足していたので、彼女は授業をけることができなかった」
High costs had prohibited the building work from being completed.
「高いコストのために、ビルの建設工事は完成できなくなっていた」
(コメント)
団体が禁止する主体の場合はprohibit,個人が主体の場合はforbid。
6)ビジネスのヒント
これまで、ネット専業の強みを活かして、低価格と大量の品揃えで実店舗型小売企業を負かしてきたアマゾン・ドット・コム社。そのアマゾンが、今度は全米に店舗網を広げるようです。戦略の大きな転換と思いきや、実際にはそうではありません。というのも、実店舗の出店で、中小のネット専業小売企業は収益拡大に成功してきたからです。
【実店舗の出店で成功した中小ネット専業小売企業】
- ワービー・パーカー(眼鏡)→2013年以来全米に24店舗出店。1平方フィートあたりの売上は平均3000ドル弱で、高級バッグのコーチの約2倍。高い収益性。
- ブルー・ナイル(宝石)
- ボノボス(アパレル)
- フランク&オーク(メンズアパレル)→北米に11店舗
- バーチボックス(美容品)
- バウブル・バー(宝石)
各社の成功パターンは、ショールームのような実店舗を全米各地に開設することにより、購入前に商品を手にして、試せる機会を提供。その結果、消費者は安心してネットでの購入に踏み切ることができるようになり、収益拡大に結びついたというわけです。実店舗は単に販売するための場所ではなく、ネットでの買い物につなげる手段なのです。
同様の作戦で収益拡大を目指すアマゾンですが、ネット通販専業企業が実店舗を設ける理由は、他にもあります。
【ネット専業小売企業が実店舗を設ける理由】
- ネットでは集客できない消費者層にリーチ・集客できるから
- ネットでの購入前に実店舗で確かめる顧客は、ネットだけの顧客よりも購入金額が高いから
- 実店舗による集客の方が、ネットでの集客よりも効率的だから
- 実店舗でネット購入してもらえれば、顧客のメールアドレスを獲得でき、将来の販促に活用できるから
1について、ネット通販が普及したからと言っても、実店舗での購入が無くなるわけではありません。というのも、実店舗での買い物には、即時性というネット通販にはない強みがあるからです。つまり、気に入ればその場で商品を手に入れ、使えるということです。さらに、ネット通販での買い物と実店舗での買い物とでは、財布が違うという考え方もあります。つまり、消費者はネット通販と実店舗を使い分けているということです。ならば、実店舗を開設することで、ネットではリーチできない客層を獲得することができ、ブランド認知度の向上・収益拡大が期待できます。
2について、実店舗で商品を実際に確かめられれば、安心してネットで購入できます。その結果、購入金額がネットだけの時よりも増えるという効果があるようです。だから、ネット専業が実店舗を作ることにより、客単価の向上が期待できるのです。
3について、競争の激しいネットでの集客コストは、上昇傾向にあります。高額な広告を打っても、それが集客・売上の増加に結びつくという保証はありません。一方で、実店舗では、来店客や近くの歩行者の目にそのブランド名が入るので、ブランド認知度の向上・集客に安定した効果が期待できます。その結果、効率的な販促ができることになります。
4について、通常、実店舗での販売では、顧客の個人情報を獲得できません。無記名の来店客の購入でしかありません。しかし、実店舗とネット通販をミックスすれば、実店舗に訪問した見込み客に、ネットでのID登録をその場でしてもらって、ネット通販での購入を促すことができます。つまり、実店舗を通じた購入により、IDや購入履歴などのデータを収集することができ、個別販促メールの発送など、将来の効率的な販促に活用できるのです。
このような効果が期待でき、しかも実際に成功事例があるからこそ、アマゾンは実店舗の拡充に踏み切るのです。ちなみに、アマゾンは既にシアトルなどに実店舗を持っています。今回は全米に200店舗ほど出店することが、ニュースとなっています。
アマゾンが全米に広げる実店舗の特徴をまとめると、次のようになります。
【アマゾンの実店舗の特徴】
- 販売商品は書籍・家電など。→キンドルの販売によりブランド認知度の向上を期待
- データ分析により品揃えは限定的、ネットでの購入が主体→効率運営
1について、記事では書籍は一部で、家電も陳列するとされています。恐らく、競合書店も扱う書籍の販売に力を入れても、ブランド認知度向上につながらないでしょう。一方で、力を入れるのがキンドルシリーズ。キンドルはアマゾンのPBのため、店頭でキンドルの便利さに気づいてもらえれば、ブランド認知度の向上だけではなくリピート購入が期待できます。
2について、地域別の販売データや買い物パターンにより、限られた在庫しか持たないようです。シアトルの店舗では約5000タイトルであり、実店舗型書店であるバーンズ&ノーブルの約16万タイトルと比較すると、その小ささは歴然です。販売データにより売れる確率の高い在庫だけを持ち、その他の注文はネットで行うという仕組みです。この結果、店舗の運営コストが低下し、実店舗を開設しても、収益性をある程度確保できます。
同様の試みは、実店舗主体の小売企業でもネット通販を並行して行うことで可能ですが、結果が伴っていません。実際、ウォルマートやギャップ・シアーズなどの量販店型小売企業大手は、店舗を大量閉鎖したり、他社に売場を賃貸したりしているのが現状です。この要因は、実店舗の売場が広すぎるから。広すぎるので、売れる可能性の低い商品まで販売し、販売効率を低下させているのです。
このように考えれば、ネット通販と実店舗の組み合わせで成功するのは、
- 販売データにもとづき、限定的な品揃えしか持たない→データ分析により効率向上
- 原則ショールームとして活用し、ネットでの購入を促す→データの収集
という条件を備えている場合だけと言えるのではないでしょうか。つまり、データを収集・分析することで、運営効率を向上させることです。データ活用の重要性は、実店舗小売にも必須になっていると言えるでしょう。
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《今回のヒントのまとめ》
- ネット専業のアマゾンが実店舗の拡充に動くのは、中小のネット専業小売企業に成功事例があるから。
- ネット専業小売企業が実店舗を持つのは、ネットではリーチできない消費者を集客できるからであり、実店舗にも来店する顧客はネットだけの顧客よりも客単価が高いからである。また、実店舗での集客はネットだけの集客よりも効率的であり、実店舗でネットでの購入を促すことで、IDや購入履歴などデータを収集できるというのも、実店舗を設ける理由と言える。
- アマゾンの実店舗の特徴は、書籍だけではなく、キンドルシリーズなどPB商品を販売することで、ブランド認知度の向上が期待できる。また、データ分析により限定的な品揃えにすることで、店舗運営を効率化できる。
- 一方で、大手量販店がネット通販との融合で失敗するのは、売場が広すぎて、効率が悪いからである。
- ネット通販と実店舗小売との融合の成功条件は、販売データの収集・活用と実店舗の効率運営である。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
久しぶりに、サッポロビールの麦とホップ(新ジャンル)を飲みました。
リニューアルした様で、「史上最大の麦芽量」をウリにしています。
問題は味ですが、まぁまぁでしょうか。
最近ビールを飲む機会が多いので、やはりビールとはコク・苦味が違います。
しかし、新ジャンルの中では、随分頑張っている方だと思います。
ただ、最近新ジャンルでも種類が増えてきましたねぇ。
近々、いろいろ試したいと思います。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
今年は本当に暖冬で終わってしまうかもしれませんね。
本当に寒い日は、2016年だけでも本当に少なかったですよ。
これからは花粉の季節。
そろそろマスクです。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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