【963号】食品メーカーやスーパーが、商品の産地公開に踏み切る理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Companies Step Up Efforts to Reveal More Details on Food You Eat
ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
2)要約
中小企業から大企業まで、製造・販売する食品の中身について公開する動きが強まっている。この背景には、自身の健康や環境・社会への影響に関する関心が、消費者の間で高まっていることがある。
また、大企業が情報公開に動くのには、商品のシンプルさでシェアを奪ってきた新興ブランド対策という意味合いもある。さらに、あるブランドは、国産イメージの醸成を狙う。
ただし、大企業にとっては、ロットによって産地が変わるなどで詳細な情報を逐次公開できない問題がある。また、サイトの掲載などコスト増も避けられない。
3)キーとなる英文
From niche players such as Fish + People to large enterprises such as Campbell Soup Co. and Wal-Mart Stores Inc., companies are rushing to meet consumers’ increasing demand to know more about what’s in their food, where it came from, and how it was produced.
4)キーとなる英文の和訳
フィッシュ+ピープルのような隙間市場を狙った企業から、キャンベル・スープ社やウォルマート・ストアーズ社のような巨大企業まで、企業は消費者の益々強まる要望に我先にと応えようとしている。
その要望とは、自分たちが食べる食品の原材料や産地・製造方法に関して、もっと知りたいというものである。
5)気になる単語・表現
hook | 他動詞 | ~を引っ掛ける;~を釣り上げる;(人)を巧みに誘う |
wheat | 名詞 | 小麦 |
produce | 名詞 | 野菜と果物 |
incursion | 名詞 | (突然の)侵入 |
fare | 名詞 | 食物 |
nimbleness | 名詞 | 素早さ |
measure | 他動詞 | ~を評価する;~を測る |
verify | 他動詞 | ~が事実であると証明する;~が正しいかどうか確かめる |
compile | 他動詞 | ~を収集する |
(今回ピックアップ英単語)
nimble
(意味)
- 素早い、軽快な(able to move quickly and easily)
- 理解が早い、鋭敏な;機転がきく(able to think and understand quickly)
(類義語)
「機転がきく」tactful, quick-witted, have a ready wit
「軽快な」light, lively, airy
「素早い」 quick, prompt, rapid, swift, ready, nifty, deft, lightning
(コメント)
記事でnimblenessが使われたのは、中小企業の強みとしての軽快さ。
Smaller companies benefit from nimbleness.
この文章はそのまま暗記してもいいでしょう。
6)ビジネスのヒント
ア メリカの食品業界で起こっている顕著なことは、消費者の大手加工ブランド離れ。原材料や加工方法などに不信感があるからに他なりません。そして、その背景 には健康志向の高まりがあります。このような外部環境の変化もあって、食品メーカーや小売業で、商品の情報公開を広げようという動きがあります。
その公開方法は、大きく2つに分けることができます。
【アメリカ食品メーカー・スーパーが行う商品の情報公開手法】
- パッケージに特殊コードを掲載(フィッシュ+ピープル、ハーシー、サムズクラブ)
- サイトに公開(フィッシュ+ピープル、ケロッグ、ゼネラルミルズ)
1 に関して、魚介類の加工食品や冷凍食品を製造するフィッシュ+ピープル社は、スペシャルコードをパッケージに印字しています。それを専用サイトに入力する と、原材料の加工方法や漁獲者がわかるようです。菓子のハーシー社は、パッケージに新しいスマートラベルを掲載し、より多くの栄養情報を公開しています。 今後、原材料の購入先まで公開するようです。ウォルマートの会員制ディスカウント部門であるサムズクラブでは、青果のパッケージにコードを掲載。スマホで スキャンすることにより、産地や栽培方法・生産者がわかります。要は、パッケージからサイトに飛んで、より細かな情報を公開するという手法です。
2 は、パッケージにはサイトに飛ぶコードを掲載せずに、直接サイトから公開する手法です。フィッシュ+ピープルには、過去三年間の、漁獲した船の船長の名前 と写真を公開するページがあるようです。シリアルのケロッグ社とゼネラル・ミルズ社は、シリアル用の小麦とオート麦を生産した農家の名前とプロフィールを サイトに公開しています。
このようなより深い情報公開に到った理由は、次の二点にまとめることができます。
【食品関連企業が商品のより深い情報公開に踏み切った理由】
- 自身の健康や環境・社会への影響への関心が消費者の中で高まったから
- 規制強化
- よりシンプルな商品を製造する新興企業対策(大企業のみ)
1 に関して、ヘルシー志向の高まりは先程述べました。それだけではなく、食品製造によって、環境にどのような負荷が掛かるのか、またどのような労働環境で製 造されているのかにも、関心が高まっています。だから、単に使用する原材料や産地を公開するだけではなく、生産者やその方法まで公開するのです。このよう なニーズが、消費者のより深く知りたい要望に進化した結果、企業が動かされたというのが実態でしょう。
2について、 従来、食品業界は信頼の上に成立していました。企業だから、安全なものを生産しているだろうという信頼です。しかし、今ではそれを企業が確証する必要があ ります。それは、2011年に食品完全に関する法律が施工されたから。メーカーだけではなく、小売企業も食品安全の責任を応用になったので、より詳しい情 報を公開せざるを得なったのです。
3について、これは大企業だけに当てはまることですが、より詳しい情報公開には、 新興企業による奪われたシェアを奪還する狙いもあります。加工食品のトップ10ブランドの合計シェアは、過去5年間で4.3ポイント失ったようです。この 大部分を奪ったのが、中小の食品企業。彼らは、加工度の低さ・シンプルさを武器に、消費者の支持を獲得してきました。もちろん、消費者のヘルシー志向の高 まりに対応したものです。大企業は、より詳しく情報公開することで、新興ブランドに対抗しようとしているのです。
しかし、従来行ってこなかったより詳しい情報公開という企業行動には、次のような課題を伴います。
【より詳しい情報公開に関する課題】
- ロットにより原材料が変わるため、より詳しい産地などの公開は事実上不可能
- 追加の企業行動のため、コストアップ要因になる
- 本当に詳しい情報の公開が売上増につながるかは不明確
1 について、特に大企業は、サプライチェーンがより複雑なため、ロットにより使用する原材料が異なる場合が多いのです。例えば、3月に作ったチョコレートは ガーナ産ですが、4月のロットはインドネシア産ということがあり得るのです。これが不定期に起こると、かなり頻繁な情報更新が必要となり、業務上かなり難 しくなります。
2について、パッケージへのコードの印字や専用ページの作成・更新などは、追加の企業行動のため、コ ストアップ要因につながります。この分は、商品価格に載せられることになり、消費者の負担が重くなります。例えば、フィッシュ+ピープルの場合は、商品情 報の収集と確認に専任者を配置しており、さらにマーケティング担当はサイトの作成・更新を行っています。その結果、シーフードパウチの価格は4.99ドル となり、世界大手のスターキストタイスタイルのツナパウチ1.69ドルの2倍以上の価格で販売されています。この価格は、ウルフギャングパックのような高 級レストランブランドのシーフードスープ缶と同等の価格で、割高感は否めません。
3について、2の続きですが、価格が跳ね上がれば、いくらニーズに対応しているとしても、消費者が本当に買ってくれるかは不明です。
ニー ズと価格の兼ね合いですが、日常消費する食料品だけに、あまりに価格が高くなると、販売量の大幅減少は避けられないでしょう。よって、いかに低コストで情 報公開するかが今後求められるのではないでしょうか。その低コストな情報公開技術・インフラへのニーズが、食品関連企業で高まると思われます。
日 本ではどうかというと、加工食品の原材料・産地・製造方法への関心は、アメリカほど高くありません。しかし、少々お金を出してでも安全・安心なものを食べ たいという高齢者が今後増えると、関心が高まることも十分考えられます。特に、産地に関しては、アンチ中国産(チャイナフリー)が相当いることを考える と、産地の情報公開は規制以上に求められているのかもしれません。産地を公開することは、誤解を招く恐れもあるため勇気がいることです。だからこそ、それ が差別化となり、消費者の心を掴むきっかけになるかもしれません。
【各企業の情報公開ページ】
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《今回のヒントのまとめ》
- 食 品メーカーやスーパーが商品の原材料・産地・製造方法などのより詳しい情報公開に動くのは、消費者の健康や環境・社会的影響への関心が高まっているからで ある。また、企業に安全・安心への確証を求める規制強化も要因だろう。さらに、加工度の低さやシンプルさで新興ブランドにシェアを奪われた大企業が、シェ ア奪還する狙いもある。
- 具体的には、パッケージに特殊コードを印字する方法と、サイトにパッケージに掲載出来ない情報を公開する方法がある。
- ただし、ロット違いで原材料が変わる大企業などは、より詳しい情報の公開が事実上不可能であるという課題がある。また、追加の企業行動だけにコストアップ要因となり、価格引き上げにつながりかねない。さらに、ニーズ対応で値段を上げれば、消費者が買ってくれる保証はない。
- ニーズは顕在化しているだけに、今後低コストの情報公開手法が企業に求められるだろう。
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ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
クリアアサヒから新商品が発売されました。
その名もクリアアサヒ・プライムリッチ。
以前から販売されていたので、リニューアルになります。
リニューアル前の商品も飲んだことがあるのですが、今回の新商品の方が、泡立ちがきめ細やか。
この点はサッポロの麦とホップも同じなのですが、コクはプライムリッチの方が上ですね。
麦とホップは少し物足りない。
次からはブランドスイッチするかもしれません。
それだけ美味しかったということ。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。
この7年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
アサヒビールから久々に新製品のビールが発売されました。
発売したばかりとあって、店舗での露出が大きくなっていますが、実際に売れ行きはどうなんでしょうね。
「糖質50%オフ」とヘルシー志向に訴えかけただけあって、結構ニッチな市場を作るだけで終わるような予感もあります。
アサヒとしては、スーパードライがあるからいいとは思いますが、ヘルシー志向が本当に強い人はビールを飲まないわけで、糖質オフ訴求のビールが大型商品に育つのは少し難しいように思えてなりませんね。
そう言えば、ビール税制の統一は先送りになったようですね。
新ジャンルユーザーだけに、増税は避けて欲しいところです。
私の場合、もし増税したら、焼酎へのシフトがさらに進みますよ。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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