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【968号】鶏肉業界を悩ますウッディブレスト問題、日本への影響とは?

Chicken Breast Fillets

 

◎本日のニュース

1)見出し

Bigger Chickens Bring a Tough New Problem: ‘Woody Breast’

 

 

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2)要約

世界的な鶏肉需要の拡大に伴い、より大きな鶏を飼育する方法が開発されてきた。その一方で、繊維質が硬い胸肉が発生するという「ウッディブレスト」問題が生じている。

 

ウッディブレストは、世界で販売される骨なし胸肉の5~10%に発生しているとされ、特に年齢の高くて重量が大きい鶏で多いとされている。人間の健康への悪影響はないとは言え、噛みにくい肉ゆえに、格安での処分販売やソーセージなど加工用での販売を余儀なくされ、畜産企業の収益にはマイナスとなる。

 

3)キーとなる英文

A rising number of those fillets are laced with hard fibers in a condition the industry calls woody breast. It poses no threat to human health, but it degrades the texture of the meat.

 

4)キーとなる英文の和訳

業界がウッディブレストと呼ぶ状態の硬い繊維質の肉の切り身が、急増している。

人体への悪影響はないが、肉の食感を劣化させる

 

5)気になる単語・表現

fillet 名詞 骨のない切り身
lace A with B 他動詞句 BでAに変化をつける
texture 名詞 歯ごたえ、食感;手触り
consennquential 形容詞 (社会的に)重大な;当然の
quantify 他動詞 ~の量を定める(計る)
disorder 名詞 障害、不調;混乱
cut into 自動詞句 (利益など)を減ずる;(計画など)に割り込む
immaterial 形容詞 重要でない
thigh 名詞 もも
cramp 名詞 けいれん
knot 名詞 ふし、結び目
sporadic 形容詞 点在する
hemorrhages 名詞 破裂出血
poulty 名詞 家禽
trait 名詞 特色
stiff 形容詞 堅い

 

(今回ピックアップ英単語)

lace

  1. (通例複数形)(靴・コルセットなどの)(締め)ひも
  2. レース(lacework)
  3. (靴など)を紐で締める
  4. (ひもなど)を(穴に)通す
  5. (飲料など)に(強い酒・毒を)加える(with)
  6. (話・文章など)に(~で)変化をつける(with)

 

(コメント)

元々は「ひも」という意味で、「ひもで締める」に転化。

さらに、「話を紐のようなモノで締める→変化をつける」にさらに転化。

正直、さほど出てこない単語だが、「ひも」「締める」で覚えておきたい。

 

6)ビジネスのヒント

アメリカ鶏肉業界を悩ませるウッディブレスト問題。正確には、アメリカ・スペイン・英国・ブラジルなどでも発見されているので、世界的な問題になりつつあります。ネットで調べてみると、業界内では2014年から問題視されています。経済紙のWSJが取り上げたので、今後大きな問題に発展するかもしれません。

 

まずは、このウッディブレスト問題の概要から。

 

【ウッディブレスト問題とは】

  1. 骨なし胸鶏肉の一部に、噛みきれないほどの硬い繊維質を持つ肉が発生すること
  2. 研究者によると、世界で販売される骨なし胸鶏肉の約5~10%で発生している
  3. 要因は不明だが、高齢・重量の大きな鶏での発生確率が高い
  4. ウッディブレストの肉は、格安処分かソーセージなど加工用で販売→収益悪化
  5. 鶏が生きている間は発見できず、切り身になってから発見される

 

要は、胸肉の一部に繊維質が硬い不良品が発生するということです。5~10%の割合で発生するので、その可能性は高いと言えます。4のように、家禽企業や加工販売企業にとっては、収益悪化につながりますが、それ以上に問題なのが、顧客離れでしょうか。加工用として販売される分はいいとしても、格安処分される肉がどのように消費・使用されるかは不明です。記事によると、誰でも一度以上ウッディブレストの肉を口にしたことがあるという証言があるほどですから、外食・中食用として販売されていると思われます。どの程度の硬さかはわかりませんが、ウッディブレストの肉を口にした消費者が今後鶏肉を毛嫌いする可能性は否めません。

 

さらに、5の発見段階が切り身になってからというのも厄介な問題です。つまり、鶏の状態ではわからないのです。精肉業者にとっては、これが一番のネックとなるでしょう。仕入れるときはわからないので、仕入れが賭けみたいになるからです。

 

原因不明のウッディブレスト問題ですが、肉食として飼育されている鶏の状況変化を見ると、うっすらと原因は浮かび上がってきます。

 

【肉食用のブロイラーの飼育状況の変化】

  1. アメリカの鶏の平均重量:過去50年間で約2倍に
  2. アメリカの鶏の飼育・製造期間:同期間で約半分に

 

一言で言えば、より大きな鶏をより短期間で飼育するようになったということです。記事には次のような数字が紹介されています。

 

1965年 平均3.5ポンドの鶏を63日間飼育

2015年 平均6.2ポンドの鶏を48日間飼育

 

ただし、2015年の重量はあくまで平均であり、多くの企業では10ポンド以上になるまで飼育しているようです。この重量の最大化と飼育期間の最小化により、「成長スピードの速さが生物的な限界に来ているのではないか?」という意見が出ているとか。また、効率化を進めるあまり、効率化を追求した餌や飼育方法に疑問を投げかける声も出てきています。

 

では、なぜ鶏肉業界は重量の最大化と飼育期間の最小化を求めるようになったのか?次のような背景があるからです。

 

【鶏肉業界が効率化を追い求める背景】

  1. 鶏肉への需要拡大
  2. 消費者の家畜環境や抗生物質使用状況への関心の高まり

 

1について、需要拡大に対応するために、より効率的な製造を余儀なくされたのです。また、売れるからこそ競争が激化し、効率化が必要となったとも考えることができます。

 

2については、大量の鶏を一定の面積で飼育する方法が社会から批判される以上、面積当たりの鶏の数を減らす必要があります。一方で面積当たりの切り身の歩留まりを引き上げるためには、一匹あたりの重量を大きくする必要があります。過密環境での病気発生を回避するために抗生物質を利用するので、抗生物質の利用を減らすには、過密環境を緩和しなければなりません。

 

興味深いのは、飼育環境への関心が高まった結果、ウッディブレスト問題という品質悪化が生じているという点。消費者の関心が、違う形で問題を起こしているとも言えます。

 

では、このウッディブレスト問題は、今後どのような形で業界や消費者に影響を及ぼすのか。以下のように推測してみました。

 

【ウッディブレスト問題の企業・消費者への影響】

  1. (企業)付加価値を高めることで単価引き上げを目指す
  2. (企業)新たな飼育方法の開発
  3. (消費者・企業)鶏肉の値上げ

 

1について、収益を拡大する方法には、数量を拡大するか単価を引き上げるかがあります。これは後者にあたります。肉の品質向上につながる餌や飼育方法の開発が必要となります。日本の鶏肉業界はこの方法を採用することで、海外産との価格競争を避けるしかないでしょう。

 

2について、品質を維持しながら、数量を拡大する方法を開発するというものです。ウッディブレスト問題の原因が明確でない以上、今のところかなり難しいと言えるでしょう。

 

3について、拡大する需要に対して品質を担保した供給が満たないとなれば、価格上昇は不可避です。購入する消費者・企業にとっては、値上げという形で影響を受けることになります。特に、鶏肉を利用する外食・中食企業は、何かしら付加価値を付けた商品を開発することで、上昇した仕入れ価格を販売価格に転嫁するしかありません。商品開発力が試されることになります。

 

WSJで取り上げられたとは言え、ウッディブレスト問題はまだ業界での問題にとどまっています。さらに、消費者が個人で調理する分には、その差がわからないという意見もあります。しかし、鶏の重量最大化・飼育期間最小化は紛れも無い事実であり、これが今後鶏肉の品質・価格に何かしら影響を与える可能性は高いでしょう。その準備を今から行っても、早すぎることはありません。

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《今回のヒントのまとめ》

  1. 鶏肉業界が直面するウッディブレスト問題とは、骨なし胸鶏肉の一部に硬い繊維の肉が発生するということである。噛みにくく、品質が劣化した不良品である。
  2. この問題で企業が被る課題は、処分販売・加工用販売を余儀なくされることによる収益悪化、品質悪化による顧客離れ、さらに鶏の状態では発生の有無がわからないということである。原因がいまだ不明瞭である点も、厄介な課題である。
  3. 原因として考えられるのは、鶏の重量最大化と飼育期間最小化である。効率化を推し進めたために、生物的に異常が発生したとも考えられる。
  4. ウッディブレスト問題は、今後、鶏肉の高付加価値化・品質劣化を回避する飼育方法の開発・鶏肉の値上げという形で企業・消費者に影響を及ぼすのではないか。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

クリアアサヒから新商品が発売されました。

その名もクリアアサヒ・プライムリッチ。

以前から販売されていたので、リニューアルになります。

リニューアル前の商品も飲んだことがあるのですが、今回の新商品の方が、泡立ちがきめ細やか。

この点はサッポロの麦とホップも同じなのですが、コクはプライムリッチの方が上ですね。

麦とホップは少し物足りない。

次からはブランドスイッチするかもしれません。

それだけ美味しかったということ。

アサヒ クリアアサヒ・プライムリッチ

もちろん楽天市場にも売っています。

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。

この7年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

日本での国産鶏肉価格が下落していると感じませんか?

ドル円の下落(つまり円高)による飼料価格の下落が値下げの原因なのでしょうか?

消費者としてはうれしいですが、デフレの足音がまた耳に響きそうにも感じます。

それにしても、ドル円110円をあっさり割りましたね。

ハワイ行きたいなぁ。

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

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