【969号】米炭酸市場で、ローカルブランドのラクロワが急成長している理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
LaCroix Bubbles Up in Sparkling Water Brand Competition
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2)要約
ナショナル・ビバリッジ社のローカルブランドの炭酸水・ラクロワが、全米で人気を博している。カロリーゼロ・甘味料ゼロ・ナトリウムゼロ・その他人工添加物ゼロが、ヘルシー志向に合致しているからである。
そもそも、果糖ソーダが避けられる一方で、炭酸水の消費量自体伸びている。その中でもラクロワが支持を伸ばしているのは、SNSやネットを使った風変わりなマーケティング戦略が成功しているからである。
ラクロワの売上急増により、炭酸水市場の競争は激化している。全米トップシェアのネスレ社はフレーバーを追加する一方、ペプシコ社とコカ・コーラ社は飲料水ブランドやジュースブランドで炭酸水を発売している。
3)キーとなる英文
It relies instead on brightly colored packaging, and social media where 20 flavors ranging from apricot to cran-raspberry have sparked passionate online debates and store treasure hunts.
4)キーとなる英文の和訳
変わりに、明るいカラフルなパッケージを活用している。
また、アプリコットからクラン・ラズベリーまで及ぶ20種のフレーバーが、熱烈なネット投稿や店舗での商品探しを引き起こしてきた。
5)気になる単語・表現
fridge | 名詞 | 冷蔵庫 |
sodium | 名詞 | ナトリウム |
spark | 他動詞 | ~を刺激する;~を引き起こす |
sweepstake | 名詞 | 宝くじ式賭け競馬 |
have a leg up on | 他動詞句 | ~より有利である |
lapsed | 形容詞 | 廃れた;無効の |
(今回ピックアップ英単語)
lapse
- (不注意・失念などによる)ちょっとした過失
- (~から・~への)堕落、退廃;下落、転落
- (時の)経過、推移
- (権利などの)時効による消滅
- 下落(堕落)する
- (習慣などが)消滅する;(権利などが)失効する
- (時が)経過する
(類義語)
「誤り」 mistake, error, fault, blunder, fallcy
「期間」 period, term, time, length, bout
「経過」 progress, course, process, passage
「下落する」decline, sag
「失効」abeyance
「消滅」 disappearance, extinction, death
「消滅する」 disappear, perish, vanish, extinguish, consume, go out of,
「推移」 change, transition, progress, process
「退廃」 corruption, decadence, decay, degradation,
「堕落」corruption, fall, degradation, decadence, regress, rot
「堕落する」 corrupt, decline, decay, degrade, seduce, go astray, lead O astray
「転落」downfall, fall, spill, descent
(コメント)
過失でも、どちらかと言うと「忘却や不注意によるちょっとした」ミス。
行いが良かった人間が悪くなるという「退廃、堕落」という意味もある。
全般的に、マイナスのイメージとして覚えておく。
6)ビジネスのヒント
アメリカで人気の炭酸水が、ラクロワ(Lacroix)。もともと、1981年に発売されたローカルブランドの炭酸水を、1996年にナショナル・ビバリッジ社が買収しました。それでも、中西部のローカルブランドに変わりありません。そのラクロワが、全米で人気を博しているようです。
全米では、炭酸水自体の消費量が増加しています。
【全米の炭酸水市場】
2015年は26%増
ただし飲料水市場の約1割にすぎない
※この場合、炭酸水とは無糖(sparkling-water)
健康志向の高まりから、ダイエット飲料(ダイエットコークなどのダイエット◯◯)から炭酸水へのシフトが消費者の間で進んでいるようです。だから、炭酸水のラクロワも売れているのですが、伸びる炭酸水市場の中でも、ラクロワはシェアを伸ばしているようです。その理由をまとめると、以下のようになります。
【ラクロワが全米で人気の理由】
- ダイエット飲料よりもヘルシーだから
- 割安感があるから
- 明るいカラフルなパッケージが目立ち、若者にとっては新鮮味があるから
- フレーバーが20種もあり豊富だから
- SNSやネット上の懸賞・シェアキャンペーンの販促が成功したから
- 家庭や職場で口コミが起こりやすいから
- 大手小売チェーンが早期に売場を提供したから
1は先述の通り。だから、メインターゲットはダイエット飲料ユーザーだった女性になります。ただ、男性も増えているようなので、男性の中でもヘルシー志向が高まっていることがわかります。
2について、これは全米炭酸水市場シェアトップのネスレ社との比較です。ネスレのペリエやサンペリグリノよりも割安なので、両ブランドからのブランドチェンジが増えているようです。
3について、派手でカラフルなパッケージは、決してスマートな印象はありませんが、目立つのは確実。さらに、若者にとっては、コーク社やペプシコ社などのスタイリッシュなデザインが多い飲料売場で、少し古臭い(ダサい)ラクロワのパッケージは新鮮に映るようです。だから、ラクロワの商品画像をSNSに投稿する若者が多いとか。
カラフルなパッケージに変更されたのは、2010年。この狙いは、ペリエユーザーをターゲットにするためのようです。また、パッケージ刷新は、流通範囲を全米に広げる目的でもあります。
4について、20種類ものフレーバーの多さにより、飽きにくくなる効果があります。この結果、売上の伸びが継続しやすくなります。
5について、大手がテレビCMによる販促に力を入れる一方で、ラクロワは、テレビCMを一切行わず、ネット販促に力を注いでいます。先述のように、派手な古臭いパッケージが、SNS投稿を盛んにさせています。また、20種類に広がるフレーバーの多さが、販売店探しを引き起こし、これもSNS投稿を促進させます。
ネット上のキャンペーンとして、2013年の「シェド・ザ・シュガー・スウィープステイクス」プロモーションを実施し、トリーバーチ社のトートバックをプレゼントしました。また、40缶チャレンジキャンペーンでは、ダイエット飲料から果糖ソーダ飲料からの切り替えを促し、画像と逸話をシェアすることで、健康志向を高めることに成功しました。もちろん、SNS・ネット販促は、口コミ効果を狙ったものです。
6について、口コミはネット上だけではなく、リアルでも起こっているようです。WSJ記事では、家庭で親がストックしているから子供が飲むようになったという事例や、社長が職場にストックしているから試しに飲んだらハマったという事例が、紹介されています。組織を通じた口コミは、ヘルシーさや派手なパッケージがきっかけになったとも読み取れます。
7について、ラクロワが人気を広げれば、大手流通も無視するわけにはいきません。炭酸水市場が成長し始めた時に、ターゲット社・パブリックススーパーマーケット社、ホールフーズ・マーケット社などの小売チェーンが、ラクロワに棚を提供し、フロアディスプレーなどインストアプロモーションを始めました。多店舗展開する大手チェーンが採用したことで、顧客層が広がりやすくなったのは確実でしょう。
このような理由により、ユーザー層が女性のみならず男性まで広がり、売上が急増するようになったのです。ラクロワ効果もあって、ナショナル・ビバリッジ社のあk部下は、52週の高値圏まで上昇。直近の第三四半期決算では、売上9.3%増の5億2580万ドル、純利益18%増の4370万ドルを記録しています。
ただし、課題があるわけではありません。販売とは関係ありませんが、経営者や経営幹部の問題です。数人の幹部が、最近退社しました。経営方針に関する意見の相違やトラブルがあったのかもしれません。退社した幹部がこれまでの急成長にどの程度貢献してきたのかはわかりませんが、収益へのマイナス影響は避けられないでしょう。また、CEOの後継者問題も浮上しているようです。70%の株式を持つ大株主のCEOは、年齢が80歳。会社売却の噂が出ています。
ローカルブランドに過ぎなかったラクロワが、シェアトップのペリエ・サンペリグリノから顧客を奪うほど急成長してきた要因は、
- 割安さ
- 大手小売チェーンの販売
- マスではなく個にフォーカスしたプロモーションの実施
の三点でしょう。1・2により、購入ハードルが一気に下がり、興味を抱いた人が買いやすくなりました。ローカルブランドだけに、割安さは必要ですし、近くのストアで手に入ることも購入ハードルを引き下げる大きな要因です。3は、マスではなく個人に焦点を当てたSNS・ネットキャンペーンにより、より情熱的なファン獲得に成功しました。さらに、その情熱的な口コミは、顧客層・ファン層の拡大に寄与します。
天然添加物でヘルシーなくせに割安となれば、大手メーカーのブランドよりも原価率が高いのかもしれません。原価率が高いということは、ユーザーにとってはお得さ(コスパの高さ)に他なりません。その原資は、コストの高いテレビCMをせずに、より割安なネット販促に注力した販促費の低さでしょう。原価率を引き上げて、割安感を出すという事例です。
要は、従来のコスト構造を見直し、より顧客に還元した価格設定・販促方法も、人気の一因なのでしょう。
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《今回のヒントのまとめ》
- フレーバー炭酸水のラクロワが全米で売上を急増している理由は、消費者のヘルシー志向の高まりに合致したから、割安感があるから、明るい目立つパッケージが若者に新鮮だから、SNS・ネットキャンペーンに成功したから、家庭・職場などリアルで口コミが発生しやすいから、大手小売チェーンで売場獲得に成功したからである。
- ラクロワの属する無糖の炭酸水市場は、市場規模自体は飲料水よりも小さいものの、急拡大している。ヘルシー志向の高まりを物語っている。
- ラクロワは、テレビCMではなくネット中心の販促をすることで、販促費を引き下げ、その分価格を下げて原価率を高めている。原価率を引き上げて割安感を出すという手法での、成功事例と言えるだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
クリアアサヒから新商品が発売されました。
その名もクリアアサヒ・プライムリッチ。
以前から販売されていたので、リニューアルになります。
リニューアル前の商品も飲んだことがあるのですが、今回の新商品の方が、泡立ちがきめ細やか。
この点はサッポロの麦とホップも同じなのですが、コクはプライムリッチの方が上ですね。
麦とホップは少し物足りない。
次からはブランドスイッチするかもしれません。
それだけ美味しかったということ。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。
この7年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
日本では、フレーバーウォーターが人気ですね。
発売後すぐに販売休止に追い込まれたサントリーの天然水ヨーグルト味が、その筆頭でしょうか。
気になりますが、カロリーの高さで買うのに躊躇してしまいますが。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
高尾亮太朗のTubmlr⇒ ryotarotakao.tumblr.com
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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