【991号】バーンズ&ノーブル社がレストランビジネスに本格参入する理由
◎本日のニュース
1)見出し
Barnes & Noble Opens a New Chapter in Food and Drink
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2)要約
書店大手のバーンズ&ノーブル社は、2017年度に出店する4つの書店に、アルコールやしっかりしたメニューを提供するフルサービスレストランを併設するという。これにより、直近四半期の業績不振の主因となって客数減少を食い止める。
このレストランは、通常の書店併設カフェの約2倍の大きさで、朝・昼・夕別の料理を提供する。そのために、総料理長を新たに雇用したほどの手の入れようです。ただし、書店の顧客ニーズに合わせるために、お手頃価格で提供する。
カフェなどの飲食施設を書店に併設するのは、独立型書店で成功事例が多い。バーンズ&ノーブルは、ネット通販にはない実店舗の強みを活かせる。
3)キーとなる英文
Barnes & Noble Inc. would like you to raise a glass, literally, if you visit one of the four new stores it is opening within the next year.
4)キーとなる英文の和訳
バーンズ&ノーブル社は、来年中に開く4つの新店の1つを訪れた顧客に、文字通りグラスを傾けて欲しいと考えている。
5)気になる単語・表現
fare | 名詞 | (食卓に出された)食物;運賃 |
entrée | 名詞 | アントレ(主料理;その直前の料理) |
fire pit | 名詞 | 囲炉裏 |
(今回ピックアップ英単語)
なし
6)ビジネスのヒント
書 店大手のバーンズ&ノーブル社が、来年出店する4つの店舗にフルサービスレストランを併設すると発表しました。カフェではなく、「フルサービスレストラ ン」です。バーンズ&ノーブルと言えば、書店に併設されているのはスタバというイメージが強いですが、今度はテナントではなく、自社での展開です。
まずは、そのレストランの特徴から。
【バーンズ&ノーブルが出店する書店併設型レストランの特徴】
- 2017年度に出店する4店舗に併設(単独立地ではない)
- ビール・アルコールなどアルコールも提供
- 面積は通常の書店併設カフェの約2倍
- 朝食・ランチ・ディナーの3時間帯別のメニューを提供
- フルサービス(セルフではない)
- 価格はリーゾナブル(ディナーのアントレで約50ドル)
1 のように、今年出店するのはなく、来年の話なので、まだ青写真しかありません。WSJ記事には、レストランの青写真が掲載されていますが、どちらかという とファミリーレストランに近いというイメージでしょうか。バーンズ&ノーブルブランドの書店に併設するタイプで、単独立地ではありません。書店に寄ったつ いで利用、書店でのついで買いを想定しています。
2について、スタバが新業態でアルコールを提供するように、バーンズ&ノーブルの書店併設レストランでもアルコールを提供します。学生ではなく、大人・シニアがメインターゲットなのでしょう。
3について、店舗面積の大きさは、バーンズ&ノーブルの意気込みを感じさせます。決して、書店のついでに作った飲食施設ではありません。4にもあるように、しっかりした料理も提供します。
4について、利用時間別のメニューを提供することは、バーンズ&ノーブルの意気込みを感じさせます。そのために、総料理長を新たに採用したほどです。
5について、フルサービスレストランですが、バーンズ&ノーブルの顧客ニーズに合わせて、お手頃な価格に設定。ただし、夜のアントレで約50ドルするので、ファミレスほど気軽に入れるお店ではありません。
こ れら5つの特徴を一言で言えば、通常の書店併設型カフェとは違うということです。通常の併設型カフェでは、コーヒー等ドリンク主体で、書店がメインの施設 なので店舗面積はさほど広くありません。スタバのようなセルフサービスが多く、期間限定メニューはあるものの、全営業時間統一のメニューを提供していま す。バーンズ&ノーブルは、差別化に力を入れていることがよくわかります。
では、なぜ書店にフルサービスレストランを併設するのでしょうか。その理由をまとめると、次のようになります。
【バーンズ&ノーブルがフルサービスレストランを書店に併設する理由】
- 書店の集客力を上げて、既存店売上を向上させたいから
- 既存のレストランカフェ事業の収益を拡大したいから
- 独立型書店の成功事例があるから
1について、バーンズ&ノーブル社の業績は芳しくありません。直近四半期では、既存店売上のみならず、全売上も減少しています。
【バーンズ&ノーブル社の直近四半期業績】
- 既存店売上8%減
- 全売上2%減(8億5000万ドル)
既 存店がマイナスになった要因は、客数減。要は、書店の集客力が弱まっているのです。その集客力のテコ入れのために、飲食施設を刷新し、セルフカフェではな くフルサービスレストランにしたのです。フルサービスレストランで、しかも価格がリーゾナブルならば、飲食という新たな来店動機が生まれ、客数増が期待で きます。
客数減の要因には、ネット通販との競争激化があります。実店舗を持たないネット通販企業には、飲食サービス などサービスを提供することはできません。よって、フルサービスレストランを作ることで、実店舗の強みを活かせることになります。ネットに奪われた顧客の 奪還が期待できます。
理由の二点目について、バーンズ&ノーブル社全売上のうち、飲食サービス収入は10%未満しかありません。
【バーンズ&ノーブル社の売上比率】
- 書籍販売:60%
- 音楽・DVD・ゲーム販売:20%
- 飲食収入:10%未満
ス タバ併設店が多いといっても、テナント出店という形を採っているので、売上への寄与度は低くなっています。低い数字は、見方によってはまだまだ成長余地が 大きいということ。テナントではなく自社で出店することで、自社に取り込める売上を増やし、飲食収入比率を増やすことができます。
理 由の三点目は、自社での併設型飲食サービス展開に関して、独立型書店での成功事例があるようです。だから、バーンズ&ノーブルは一歩踏み出すことができた のでしょう。もし、フルサービスレストランの自社展開で成功すれば、既存店にも適用でき、収益への寄与度はより高まります。
バー ンズ&ノーブル社は、電子書籍のヌークのシェアを大きく落とすなど、電子書籍事業でも苦戦を強いられています。もちろん、このライバルは、アマゾン・ドッ ト・コム社のキンドル。規模の経済が大きく働く電子書籍事業では、書店大手のバーンズ&ノーブル社と言えども、ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コム 社には敵いません。今回の書店併設型フルサービスレストランの展開からは、バーンズ&ノーブル社の実店舗重視の姿勢を読み取ることができます。アマゾンに はない実店舗の強みを活かすことで、アマゾンに対抗しようとしているのでしょう。
今回の記事の注目点は以下の通り。
【注目点】
- 飲食店で集客アップを図る実店舗型小売店やSCが増加している
- 食は依然として消費者の関心の高いコンテンツである
- モノからコトへの消費のシフトがさらに進んでいる
三 点とも、日本にも当てはまります。1について、物販だけでは、スペースの制約がなく、検索という便利機能が使えるネット通販が優位なのは自明。ならば、飲 食サービスを提供することで、ネット通販との差別化を図るともに、来店機会を増やそうとする実店舗型小売企業・SCが増加しています。単に、モノを並べれ ば売れる時代は完全に終わりつつあると言えるでしょう。
2について、日経新聞にも掲載されていましたが、日本の若者 で、新製品への関心が下がる一方で、食への関心が高まっているようです。その理由は、新製品が成熟化している一方で、食ではSNSでの拡散やコミュニケー ションが期待できるからです。食はわかりやすいという点もあるでしょう。これは若者だけではありません。グルメ番組・記事が多いことを考えると、老若男女 に当てはまること。それだけ関心の高いコンテンツだけに、ビジネスに活かさない手はないのです。
3について、消費の コトシフトは、中国でも起こっているようです。日経MJによると、中国大都市の消費者では、モノよりもコト重視が鮮明で、今後爆買いがコトにシフトすると 予想されているようです。アメリカや日本のような成熟した先進国なら、なおさら消費のコトシフトは進んでいるでしょう。実店舗型小売店で飲食サービスを提 供することで、コト消費に近づけることができます。
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《今回のヒントのまとめ》
- バー ンズ&ノーブル社が、フルサービスレストランを書店に併設するのは、書店の集客力を向上させるためであり、飲食サービス事業の収益力を向上させるためであ る。また、自社での飲食サービス展開は、独立型書店で成功事例があることも、テナントから自社に切り替える大きな要因とも言える。
- その特徴は、従来型書店併設カフェとは大きく異なる。コーヒーだけではなく、アルコールも提供し、面積は従来型併設カフェの約2倍。時間帯別のメニューで本格料理を提供する一方で、バーンズ&ノーブルの顧客ニーズに応じて、お手頃価格で提供する。
- 自社で展開するフルサービスレストランを併設することで、バーンズ&ノーブル社は、低迷する客数のテコ入れを期待する。ネット通販にはできないサービス提供は、大きな差別化になるからである。また、飲食という新たな来店動機が生まれ、客数増に寄与する。
- 実店舗小売店やSCで飲食サービスに力を入れる企業が増えているのは、来店動機が明確なため、集客力アップが期待できるからである。また、食は依然として関心の高いコンテンツである点も見逃せない。
- 物販企業が飲食サービスを本格展開することは、コト消費へのシフトを物語る。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
まだ飲んでませんが、キリンビールの株主優待で各地の一番搾りセットを頂きました。
これはもう飲み比べなくてはなりません。
そして、また新たなローカル一番搾りが発売されれば、飲みたくなります。
気がつけば、一番絞りユーザーになっていたりして。
一番搾りだけではなく、NBのローカル商品投入は、食品業界のブームのようですね。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。
この7年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
今年の阪神のイメージは、ずばり弱い。
でも、若手の出場という楽しみがあるので、今年は我慢できそうです。
1つだけ望むならば、誰かレギュラーを完全に取ってということ。
若手の活躍が輝かしい広島が羨ましい限りです。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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